ジャレド・ダイアモンドに逆らって~双魚書房通信(24) ローラン・ビネ『文明交錯』
以前ビネの作風を冗談まじりに「伝奇小説」と形容したことがある(当ブログ「鳥獣の王」2020.12.14)。新作を読んで、もう少しこれに注が必要と思った。 前言撤回というのではない。どころか、今回も話の結構は奔放を極め、というか荒唐無稽の域に達している。なにせ、あのインカ、ピサロなるごろつきによってあえなく征服されたまぼろしの帝国の皇帝アタワルパが、いいですか、こともあろうに(と言いたくなる)スペイン、当時の区分でいうところの神聖ローマ帝国をのっとってしまう(!)という筋書なのだから。そう、これはつまり十六世紀版ローラン・ビネ版の『高い城の男』なのである。 だから荒唐無稽。我が江戸の読本・合巻(…
2023/08/29 20:21