東京名誉大学教授が唱えた学説の「天皇機関説」という言葉を聞いたことがあるだろうか。二・二六事件前、この言葉が大問題になっていた。その手の本を読むたびに繰り返し出て来るこの単語を未だによく理解できない。つまり「天皇は国家統治の主権者ではなく、国家という大きな肉体の一つの機関である」とする考え方で、美濃部自身はこの考えを、「君主が国家の機関であると申せば、ちょっと聞くと何だか我々の尊王心を傷つけられるような感じがいたすようでありますが、これは国家が一つの団体であることから生ずる当然の結果であります」と説明している。当初はこの学説に対し大きな問題は起きなかったが、しかし、世論の圧力に負けた当時の岡田…