紫陽花によせて
今年も紫陽花の季節がきたこの学校に赴任した6月校舎は紫陽花に彩られていた紫陽花色の教室でわたしは蝶のように飛び回っていたやわらかい花びらに柔らかな雨雨があがれば花びらたちはきらきらと輝いて太陽を吸い込んではオーケストラのように呼吸したわたしも息を弾ませて人生を語った七月の花園のように花粉にむせ返る未来があるとそこに向かって力強く歩んでくれると信じていたから高層ビルの窓からひとひらの花びらが落下したあの新聞記事を読むまでは私には信念があった梅雨の中でさえ紫陽花を美しく咲かせ得ると季節は今年も巡ってきたがもはや私は蝶でない三階の窓から眺める紫陽花はまだみずみずしくて降り注ぐ幸せを海綿のように吸い込んでいるのに心を閉ざしたまま散っていったあのひとひらの花弁を思ってわたしは今日も茫然と窓辺に佇んでいる写真はシャク...紫陽花によせて
2023/05/23 09:30