兎神伝(24)
兎神伝紅兎〜追想編(10)只今「亜美姉ちゃん!」朱理の声に、愛は現実に引き戻された。亜美は、相変わらず表情のない顔をして、そこに立っていた。「まあ!来てくれたのね!」愛が続けて声を上げた。やはり表情はない。それでも、此処に来てくれた事、会いに来てくれた事、何より、誰かと関わろうとしてくれた事が嬉しかった。この二年…亜美は誰とも言葉を交わさず、会おうとも関わろうともせず、日がな一日、早苗のお気に入りだった楓の木の下で過ごしていた。そして…兎神子(とみこ)達の身体を目当てに男達が現れれば、取り憑かれたように自分から側に寄って行った。男嫌いで知られ、誰に対しても喧嘩腰な物言いをする亜美は、それはそれで人気があった。どんなに嫌っていても、拒否反応を示しても、所詮は兎神子(とみこ)…訪れる男を拒むことは許されない。...兎神伝(24)
2022/03/18 08:09