蝉谷 めぐみの『おんなの女房』
◇『おんなの女房』著者:蝉谷めぐみ2022.1KADOKAWA刊一昨年『化け物心中』で作家デビューし、三つの文学賞をとった新進の歴史時代小説女流作家の書下ろし作品である。武家の娘からいきなり歌舞伎という異世界に飛び込み、しかも女形役者の女房となった志乃という女性の奮闘ぶりを描いた異色の時代小説である。作者独特の文体が歌舞伎役者の世界での志乃の苦労を浮かび上がらせる。何しろ夫の喜多村燕也はまだ中堅とはいえ人気の高い評判の女形。姿形はもとより、声も仕草も女に徹する。「平生を女子にて暮らさねば、上手の女形とは言われがたし」というお師匠さんの教えに従って、振袖を着、化粧をし、髪を結いあげ、女子の言葉を舌にのせる。決して男の部分を見せない。揚句、新しい芝居に入るたびに演じる役に成り代わってしまうという念の入れ方。女の自分...蝉谷めぐみの『おんなの女房』
2022/02/22 15:31