須賀敦子さんの作品は、10年以上前に「ヴェネツィアの宿」を読んだことがあるのですが、それ以来になります。ずっと気になっていた作家さんですが、今般「精選女性随筆集」の中に見つけたので手に取ってみました。どの作品も上品で繊細な感性が漂いながらも、しっかりと須賀さんの思索の流路が綴られていますね。ということで、載録された作品の中から、特に、私の印象に残ったくだりを(かなりの長文になりますが)覚えとして書き留めておきます。父との思い出をモチーフにした「オリエント・エクスプレス」と題した小文。須賀さんは、重篤な病状にあるお父様に贈るコーヒーカップを手に入れるためにミラノ中央駅のホームに向かい、入線していたオリエント・エクスプレスの車掌長に話しかけました。(p97より引用)ヨーロッパの急行列車でも稀になりつつある、威...精選女性随筆集第九巻須賀敦子(川上弘美編)