犯人は やっぱり
確か8クール目になると思うのだけれど、採血の結果抗がん剤の投与許可が出ていつもの大部屋へ急いだ。受付で名前を云うと、既に診察室から連絡がきていて私のベッドナンバーが告げられる。リュックを下ろし、多分読まないだろうけれど本と眼鏡を枕元に置き、点滴をしやすいように服の前を恥ずかし気もなく上へあげて準備完了。注射器や点滴の薬が入った袋を持ってきた看護師さんへ名前と生年月日を告げて本人確認を終えたら胸の定位置に容赦のない針がズボッと突き刺される。「大丈夫ですか?」と訊かれるのだが、半ベソで「大丈夫です」と応えるしかない。点滴は既定の早さでポタポタと落とされ、次々と薬の袋が替えられ、じっと耐える5時間近くの人質タイムは、実はそんなに苦痛ではない。8回目ともなると、すっかり慣れてしまって点滴が始まると数分で寝入ってし...犯人はやっぱり
2025/06/17 09:56