「明日をひらく言葉」やなせたかし著 ”まさに言葉は生きるための力”
・ぼくは五歳のときに父と死別した。生まれたときは未熟児であった。この未熟児コンプレックスはぼくの生涯にわたってつきまとうことになる。体力においても、才能についても、容姿についても劣等感があった。ぼくのまわりの人々はみんな温和で善良であったから、ぼくはなんとか逆風の中で生きのびることができた。それでも小学生のころに自殺したくなって、線路をさまよったこともある。原因は忘れてしまった。小さな蟻にとっては小石も越えがたい巨岩に見え、水たまりも大海のようで絶望してしまう。兵隊にとられて中国の山野で銃をかついでいたときは、もう二度と故国の土を踏むことはないとあきらめていた。焦土となった敗戦の祖国へ引き上げてきたときも、希望は何ひとつなかった。それでもシドロモドロにぼくは生きのびてきた。「今日いちにち生きられたから、明...「明日をひらく言葉」やなせたかし著”まさに言葉は生きるための力”
2024/04/30 20:14