大山巌元帥の逸話——西村文則著『大山元帥』
西村文則氏の『大山元帥』に載せられている逸話から、現代表記に書き換え、一部要約しながら紹介したい。 元帥の散歩振り 元帥は非常に散歩が好きであった。まず午前中は、自邸の木立深き間を約一時(いっとき)もあるいて、午後は茶縞背広服を着て、裏門から千駄ヶ谷、原宿の貧民長屋の辺へ散歩する。それを警護の意味で、新宿署から特派の私服巡査がみえつかくれつ後をつけるのだが、元帥の足があまりに早いので、いつも元帥の姿を見失っては、大狼狽したそうである。 元帥麻酔中の熱弁 「喜怒哀楽を顔色に出さないといえば、まず故大山元帥位の人は珍しい」とは、生前元帥に親しんでいた周囲の人々が、誰しも口にした言葉であった。しかし…
2015/10/31 08:00