せん妄

せん妄

「せん妄」とは環境や体調の急変を機に突発的に現れる意識の混乱のことで、 特に高齢の入院患者によく観られる症状だという。 自宅で介護する家族の負担軽減のため健康保険を用い、期限を決め療養病院に 入院するレスパイト入院。先ずは母を 11月末から約二週間レスパイトで預け、 その期間中に父の白内障手術を片付けてしまおうという運び。母のレスパイト、 リハビリ科を備えた療養病院で、頓挫していたそのリハビリも日程に組まれる。 家族の負担軽減としてのレスパイトとはいえ、着替えやタオルの洗濯物管理は 家族の役割とされ、取り換えのため一日置きには病院に通わなければならない。 入院の事前説明を聞かされている時は正確に予定を理解していた母であったが、 面会の度に私は「何時までここに居るの?」と母から問い直されることになる。 母が聞く「何時」とは母自身が家に帰るための時間ことで、私が迎えに来たと 錯覚を起こしてしまっているのだ。何の問題もなく理解していたはずの入院が、 その入院を機に意識からすっかり抜け落ち、何度説明し直しても日が変わると、 また同じ問答が繰り返される。 一方、父は入院直後も状況把握に問題が出ている様子もなく、治療経過も理解し、 聞き分け良く順調な入院生活を送れているようだった。そして私が顔を見せると、 ベッドに寝ていてもむくり躰を起こし、大声で話せるはずもない病室で補聴器も 付けず、母や家の様子を尋ねてみたり、あれこれと話し掛けてくる。