奪取(上下)
真保裕一/講談社文庫1995年5月15日初版、1999年6月11日第2刷。実に凝ったエンタメ作品だったように思う。1つの物事に究極まで拘るという(日本人特有の)性質に着目したような作品だった。凝りもせず、何の足しにもならないことに全財産と時間をつぎ込むという奇妙な性質をうまくすくい上げ「偽札作り」に例えて、ユーモラスに展開する話。古書、骨董、絵画とその真贋は金額が張れば張るほど冗談では済まなくなる。その最上位にあるのが偽札ではないだろうか。そこで「偽札作り」というのは実にスリリングで、難題なのだと思う。これだけの努力を傾ける意欲と情熱があるなら、他の仕事でもいろいろと成功可能なはずだが、そこが何故か「偽札作り」に憑りつかれた四人だった。困難であればあるほど、全力を傾けて臨んでしまうという匠というか実にロマンチッ...奪取(上下)
2020/01/26 11:58