カイ・ニールセンと小林かいちの「様式としての嘆き」
中原中也の恋人だった長谷川泰子の口述をまとめた本を文庫化することになり、その装丁を依頼されたのは、2006年1月のことである。カバーには、小林かいちの版画を使う予定だという。それまで私が見たかいちと言えば、二度の「絵はがき展」の展示作品と古書市で買った数枚の絵封筒だけであった。帝塚山学院大学の山田俊幸教授のコレクションの分厚い張り込み帖から何点かを選んだ時、そのおびただしい数と独特の色彩と様式美に圧倒されてしまったのを覚えている。 絵封筒の色数は、2〜4色、多色という訳ではないのに濃厚な印象を受けるのは、深々とした赤、黒、金、銀、ピンク、薄紫などの取り合わせのためだろう。赤とピンクと薄紫は、ま…
2015/02/23 04:11