鳥羽耕史『安部公房 消しゴムで書く』
鳥羽耕史『安部公房消しゴムで書く』(ミネルヴァ書房、2024年)。著者の『運動体・安部公房』(一葉社、2007年)は、安部が共産党と相容れなかったこと、かれの写真にも共通する小説世界の展開は外の政治状況にコミットしないという決意表明でもあったことをあぶり出し、とてもおもしろいものだった。「運動体」ということばを拙著のサブタイトルに使ったほどだ。本書は包括的な評伝だからそのように特定の視点でのみ分析したものではない。だが、やはりあちこちに発見がある。細かいことでいえば、たとえば、歌舞伎町のナルシスに安部や勅使河原宏や開高健も訪れていたということ(夕子ママのお母さんの時代だろうな)。それから堤清二を通じて西武・セゾンから支援をずっと受けていたということ。セゾン文化と安部公房とのつながりなんて考えなかった。そし...鳥羽耕史『安部公房消しゴムで書く』
2024/08/29 23:44