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  • 鳥羽耕史『安部公房 消しゴムで書く』

    鳥羽耕史『安部公房消しゴムで書く』(ミネルヴァ書房、2024年)。著者の『運動体・安部公房』(一葉社、2007年)は、安部が共産党と相容れなかったこと、かれの写真にも共通する小説世界の展開は外の政治状況にコミットしないという決意表明でもあったことをあぶり出し、とてもおもしろいものだった。「運動体」ということばを拙著のサブタイトルに使ったほどだ。本書は包括的な評伝だからそのように特定の視点でのみ分析したものではない。だが、やはりあちこちに発見がある。細かいことでいえば、たとえば、歌舞伎町のナルシスに安部や勅使河原宏や開高健も訪れていたということ(夕子ママのお母さんの時代だろうな)。それから堤清二を通じて西武・セゾンから支援をずっと受けていたということ。セゾン文化と安部公房とのつながりなんて考えなかった。そし...鳥羽耕史『安部公房消しゴムで書く』

  • 川崎

    編集者のMさんと川崎港町で待ち合わせ。美空ひばりの<港町十三番地>のモデルになった場所で、かつては日本コロムビアの本社があった。いまその場所にはタワマンが建っており、その先には多摩川。都内とちがって葦が生えたままの干潟域であり、生き物の環境としてはとても良さそう。ちょっと上流に歩くと、寝っ転がって日光浴をしている人も釣りをしている人もいる。ここは2015年の中一殺害事件の現場だった(磯部涼『ルポ川崎』に詳しい)。下流のほうに戻ると六郷橋、京急の橋、JRの橋。阿部薫は六郷橋あたりでサックスを練習していたはずで、若松孝二の映画『13人連続暴行魔』にも阿部本人の映像が出てくる。以前に阿部薫のお母さんのお宅を訪ねたことがあって、壁には五海ゆうじが撮った阿部の練習風景の写真が飾ってあった。その作品が収録された写真集...川崎

  • 金成隆一『ルポ トランプ王国2』、辻浩平『トランプ再熱狂の正体』

    トランプの大統領当選(2016年)の驚きは、都市部の視線で分析していては実態を捉えられないということも意味した。金成隆一『ルポトランプ王国』(岩波新書、2017年)は錆びついた地域=ラストベルトの住民の声を拾い上げた傑作だった。大統領選が迫ってきて気になるので、その続編(岩波新書、2019年)と、辻浩平『トランプ再熱狂の正体』(新潮新書、2024年)を一読。生存に直結するオカネの問題、それからアイデンティティの問題。辻さんの本によれば、かつてオバマはこんな発言をしたという。「民主党の人間は東海岸と西海岸に住み、リベラルで、カフェラテを飲み、ポリティカル・コレクトネスを守り、普通の人間と感覚がずれていると思われている」と。保守派がリベラルを揶揄するときには、カフェラテを飲む(latte-sipping)、テ...金成隆一『ルポトランプ王国2』、辻浩平『トランプ再熱狂の正体』

  • 岡田一男『沖縄久高島のイラブー』

    シネマ・チュプキ・タバタにて、岡田一男『沖縄久高島のイラブー』(2024年)。沖縄開闢神話の地・久高島では、住民を神女として相互承認させるためにイザイホーという祭祀が12年にいちど行われていた。だが人口減少もあり、最後に行われたのは1978年のこと。その貴重な記録映画が『沖縄久高島のイザイホー』(岡田一男監督)だが、そのときイラブー(エラブウミヘビ)の燻製作りも撮影されていた。そして21世紀になり、途絶えていたイラブーの捕獲と燻製が復活してきた。映画はかつてのフィルムと最近の様子を対照させて示している。20年近く前、僕が久高島を訪れた日がちょうどイラブー獲りの復活というタイミングだった。もちろん島内でイラブーを食べられる店などなかったし、那覇の市場にぶらさがっている乾物はほかの場所から運ばれてきたものだっ...岡田一男『沖縄久高島のイラブー』

  • ヨシュア・ヴァイツェル+永井千恵+坂田明@稲毛Candy

    稲毛のCandy(2024/8/17)。JoshuaWeitzel(Shamisen)ChieNagai永井千恵(vo)AkiraSakata坂田明(as)ヨシュアさんは体調もかなり戻ったようでひと安心。三味線も永井千恵さんのガジェットも中心への引力が小さく、むしろ逸脱することを是としている。その音は、まるで別の世界がここに重なって存在するよう。ところが千恵さんの透き通る声や坂田さんのアルトが聴く者を我に返らせる。ふたつの世界の間を往還するようなライヴだった。FujiX-E2,LeicaElmarit90mmF2.8(M),7Artisans12mmF2.8●ヨシュア・ヴァイツェルマッシモ・マギー+ヨシュア・ヴァイツェル+ティム・グリーン『LiveatSalonVillaPlagwitz』(JazzTok...ヨシュア・ヴァイツェル+永井千恵+坂田明@稲毛Candy

  • 今福龍太『霧のコミューン』、川満信一

    今福龍太『霧のコミューン』(みすず書房、2024年)。「群島」的な思考、大文字の歴史への疑い、AIへの疑い、やはり読んでいて発見することが少なくない。今年亡くなった詩人の川満信一さんについての章もあった。東アジアの島嶼部において独自に構想されてきたヴィジョンとして、島尾敏雄(ヤポネシア)、谷川雁、崎山多美、エドゥアール・グリッサンらとともに川満さんの思想が挙げられている。もちろん、川満さんが沖縄独立を想って書いた憲法案「琉球共和社会憲法C私(試)案」(1981年)も思想のひとつの成果であるけれど、それは実際のところそれは体系的でもなんでもなかった。だから今福さんも共鳴したのかもしれない。僕の手元には川満さんの個人誌『カオスの貌』が4冊ほどあって、ときに思い出して開いてみてもすぐになにかが得られるようなもの...今福龍太『霧のコミューン』、川満信一

  • 『ユリイカ』のポール・オースター特集号

    『ユリイカ』のポール・オースター特集号をぱらぱら。オースターの翻訳家・柴田元幸さんの指摘がおもしろい。「人は大人になるとasifと言わずに、almostasifと『別に断定はしていないんだけど』とalmostをつけたくなる」が、オースターはalmostを使わない若者であった、と。それで思い出したのは、J・M・クッツェーとの対談集『HereandNow』を読んだとき、クッツェーはなんてつまらないことしか言えない人なんだろうと感じたこと。たしかにオースターと話す「大人」はそうみえてしまうものかもしれない。もとより自分とクッツェー作品はどうも相性が悪い。『TheChildhoodofJesus』でもじつに嫌な気分になったし、つい続編の邦訳『イエスの学校時代』も読んでしまい、どうもなんとも。いま調べてみたら第3作...『ユリイカ』のポール・オースター特集号

  • ハン・ガン『別れを告げない』

    ハン・ガン『別れを告げない』(白水社、2021/2024年)。恐ろしくて逃げられず一気に読了した。1948年、アメリカと傀儡の軍事政権は「アカ」をつぶすために済州島の住民3万人前後を無差別に殺した。その記憶を抱えていた母親、生死の間の世界で語る自分と友人。記憶はつねに一次的な感覚と直結している。冷たさ、痛さ、重さ。事件のあとに日本に小舟で逃亡してきた金時鐘さんにとって、それが、父親が歌った〈クレメンタインの歌〉の声の記憶だったように。●済州島杉原達『越境する民近代大阪の朝鮮人史』ヤンヨンヒ『スープとイデオロギー』済州島、火山島済州島四・三事件の慰霊碑と写真展済州島の平和博物館済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ『済州島四・三事件記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』オ・ミヨル『チスル』、...ハン・ガン『別れを告げない』

  • マクイーン時田深山+木村由@月花舎

    神保町の月花舎(2024/8/14)。MiyamaMcQueen-Tokitaマクイーン時田深山(17-stringkoto)YuKimura木村由(dance)弦を縦に横に、ノイズにも低音にも意味がある十七絃ならではの表現。テーブルにのぼってのダンスは箏と心を通じ合わせるものだった。FujiX-E2,7Artisans12mmF2.8●マクイーン時田深山インプロヴァイザーの立脚地vol.16マクイーン時田深山(JazzTokyo)(2024年)現代音楽レクチャーシリーズ最終回「今日の音楽作曲家山本和智自作を語る」@浦安市文化会館(2023年)『私の城』(2022年)喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2020年)マクイーン時田深山+池田陽子+池上秀夫―弦弦弦@喫茶茶会記(JazzTokyo)(20...マクイーン時田深山+木村由@月花舎

  • Yutaka Takahashi+野津昌太郎@千駄木bar isshee

    千駄木のbarisshee(2024/8/9)。YutakaTakahashi(g)ShotaroNozu野津昌太郎(g)YutakaさんfromNYと野津さんfrom阿佐ヶ谷。動の気合のYutakaさんはあれこれと強く仕掛ける。静の気合の野津さんは妙なことをずっと続けている。キャラ違いのふたりがとんでもなくおもしろいしキャラ変もあった。静かにやかましく盛り上がった。今後もなにかありそう、おそろしい予感。FujiX-E2,7Artisans12mmF2.8,LeicaElmarit90mmF2.8(M)●野津昌太郎野津昌太郎+北川秀生+定岡弘将@池袋FlatFive(2024年)遠藤ふみ+野津昌太郎+阿部真武@神保町試聴室(2023年)野津昌太郎+塙正貴+甲斐正樹@池袋FlatFive(2023年)野津昌...YutakaTakahashi+野津昌太郎@千駄木barisshee

  • 加藤崇之+神田綾子@東中野セロニアス

    東中野のセロニアス(2024/8/4、マチネ)。TakayukiKato加藤崇之(g)AyakoKanda神田綾子(voice)文字通り会話であり、ふたりとも相手の音を聴きつつ遊んでいることが伝わってくる。長い関係ならではか。FujiX-E2,7Artisans12mmF2.8●加藤崇之zekatsumaカルテット@新宿ピットイン(2023年)松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2022年)吉田達也+加藤崇之+神田綾子@公園通りクラシックス(2022年)松風鉱一@西荻窪clopclop(2021年)エレクトリック渦@阿佐ヶ谷YellowVision(2021年)神田綾子+加藤崇之@下北沢NoRoomforSquares(2021年)松風鉱一@本八幡cooljojo(2021年)神田綾子+加藤崇之...加藤崇之+神田綾子@東中野セロニアス

  • ザイ・クーニン 2024年の東京(JazzTokyo)

    #1317ザイ・クーニン2024年の東京–JazzTokyo2024年6月21日(金)アトリエ第Q藝術(成城学園前)ZaiKuning(changgoh,dance)MakotoKawashima川島誠(altosaxophone)TakashiSeo瀬尾高志(contrabass)2024年7月10日(水)公園通りクラシックス(渋谷)ZaiKuning(changgoh,dance)OtomoYoshihide大友良英(guitar)KoIshikawa石川高(笙)2024年7月14日(日)公園通りクラシックス(渋谷)ZaiKuning(changgoh,dance)ShunichiroHisada久田舜一郎(小鼓,声)TakashiSeo瀬尾高志(contrabass)●ザイ・クーニンザイ・クーニン+...ザイ・クーニン2024年の東京(JazzTokyo)

  • インプロヴァイザーの立脚地 vol.22 徳永将豪(JazzTokyo)

    インプロヴァイザーの立脚地vol.22徳永将豪–JazzTokyo●徳永将豪北京と上海の即興音楽@水道橋Ftarri(2024年)遠藤ふみ『LiveatFtarri,March8,April11andJune27,2021』(JazzTokyo)(2021年)徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(その3)(2021年)徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(その2)(2021年)徳永将豪+遠藤ふみ@Ftarri(2021年)田上碧+徳永将豪+松本一哉@Ftarri(2019年)HubbleDeepFields@Ftarri(2019年)高島正志+竹下勇馬+河野円+徳永将豪「HubbleDeepFields」@Ftarri(2018年)森重靖宗+徳永将豪@Ftarri(2018年)ZhuWenbo、ZhaoCong、...インプロヴァイザーの立脚地vol.22徳永将豪(JazzTokyo)

  • ジム・クラウズ・カルテット『Taking Shape』(JazzTokyo)

    #2336『ジム・クラウズ・カルテット/TakingShape』–JazzTokyoJimClouse(saxophone)IvoPerelman(saxophone)WilliamParker(doublebass)PatrickGolden(drums)ジム・クラウズ・カルテット『TakingShape』(JazzTokyo)

  • 閔小芬『METTA』(JazzTokyo)

    #2337『閔小芬/METTA』–JazzTokyo●閔小芬田中悠美子+閔小芬(ミン・シャオフェン)+カール・ストーン@水道橋Ftarri(2024年)閔小芬『METTA』(JazzTokyo)

  • 「水のかたち Praise of Shapelessness」@アトリエ第Q藝術

    成城学園前のアトリエ第Q藝術(2024/7/28)。YuKimura木村由(dance)YokoIkeda池田陽子(viola)AyakoKanda神田綾子(voice)このライヴパフォーマンスのキーコンセプトは自発性と適応性をもつ「水」だと書かれていた。それは物理的、生物化学的な挙動のメタファーでもあって、たしかにこの日のステージにも重なるところがあった。ただコンセプトとは出発点であって、当然ながら、三者の即興表現は水にはとどまらない。音についていえば、アトリエ第Q藝術の地下セラールームの反響はライヴで大きく、また、音が発せられる場所と聴く場所によって印象がかなり異なる。神田さんは声を放つ向きを変え、たんなる反響だけではなく、それが天井や壁を伝って複層的な効果を出すよう演じた。池田さんの弦は特定の方向に...「水のかたちPraiseofShapelessness」@アトリエ第Q藝術

  • 「Camera・Made in Tokyo」展@日本カメラ博物館

    日本カメラ博物館で「Camera・MadeinTokyo」展。戦時中から1960年代あたりまで、東京には非常に多くのカメラメーカー・レンズメーカーがあった。図録はそれを23区別にまとめてあり資料価値が半端ない。興奮。むかしから気になっていたのは旭光学(ペンタックス)や東京光学(トプコン)があった板橋区。それから品川区、日本工学(ニコン)の聖地たる大井町工場にはヘンな屁理屈を付けて仕事で訪問したことがある。かつては光学ガラスのるつぼから出る煙の色で調子を判断したのだとか。特にグッズなどはもらえなかった。台東区も渋くて、三共光機がコムラーレンズを作っていた。広角レンズを使ったら歪曲がものすごくて笑った記憶がある。それも含めて人間くさいプロダクツの数々。コムラーにいた阿部さんという人が独立してアベノン光機を立ち...「Camera・MadeinTokyo」展@日本カメラ博物館

  • ファビアン・アルマザン+リンダ・オー@武蔵野公会堂

    吉祥寺の武蔵野公会堂(2024/8/3)。むかし武蔵野市の仕事で市民ヒアリングをやったことがあるが音楽を聴くのははじめて。FabianAlmazan(p)LindaMayHanOh(b)ファビアンは9年前に、リンダは10年前にニューヨークで観て以来。ふたりともそのときの演奏よりも華やかになっていた。ピアノは場を支配できる力をもった楽器だが、その権力にもたれかかることなくいい距離感。ファビアンの<Jaula>は、かれがテレンス・ブランチャードのバンドメンバーとして訪れた南アにおいてネルソン・マンデラが収監されていた場所を見たときの記憶から書いたものだという。アパルトヘイトの暗い歴史とは対照的に夢見るようなフレーズもあり、とても印象的だった。●ファビアン・アルマザンファビアン・アルマザン『ThisLandAb...ファビアン・アルマザン+リンダ・オー@武蔵野公会堂

  • ジョエル・レアンドル@バーバー富士、+大友良英@神田POLARIS

    上尾のbarberFuji(2024/7/29)、神田のPOLARIS(7/30)。JoëlleLéandre(contrabass)OtomoYoshihide大友良英(g)(6/30)それにしてもジョエルさんのコントラバスは繊細だった。バーバー富士では左手が猫のように柔らかく歩き、馬のように疾走もした。弓が入る瞬間はこれしかないと言わんばかり、新鮮な刺身の切り付けのよう。倍音もまた繊細。最後の演奏は齋藤徹さんに捧げられたものだった。僕もまたジョエルさんとWhatsAppで話したのが3年以上前、徹さんの話を聴くためだった。ポラリスでは大友良英さんの強度に呼応してジョエルさんの弓弾きもまた強い。アタックは緊張の糸を保つというよりはびりびりとした音の擾乱で緊張を与えるもの。ふたりであそぶ音空間が愉しさに満ち...ジョエル・レアンドル@バーバー富士、+大友良英@神田POLARIS

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