「私が鷹矢さんの友だちを覚えているかって聞いたの、覚えているかしら?」「ああ、覚えてるよ。俺は誰だかわかんなかったけどね」急に話を振っておいて、それが
1階のエレベーターホールに居た男は確かにあの日すれ違った男だ。その男の視線の先には華恵ちゃん。「お兄ちゃん」そう呼び掛けられた華恵ちゃんの表情が変わっていた。男の顔を見てポカンとしていたのに、今は苦虫でも噛み潰したかのように眉根に皴を寄せて頬をヒクつかせていた。華恵ちゃんがこんな顔をしたの、初めて見た。不思議な事にいつの間にか誰とでも仲良くなってしまう華恵ちゃん。明るくて、ポジティブで、ムードメー...
華恵ちゃんの新しい店は《スイートハニー》のように広くはない。カウンターが15席。スタッフは3人もいれば十分だろう。あの後、俺には店の事やスタッフの事を相談される事もなく、マジックバーが退去する頃には俺は『鷹矢さんの友だち』の件も忘れかけていた。「良い感じじゃない?」マジックバーが退去し、スツールや厨房器具、食器類は全て運び出され店の中は閑散としていた。照明を点けると営業中の間接照明ではわからなか...
《スイートハニー》の隣の空き物件は、めでたく華恵ちゃんと契約する事となった。『滝山不動産』の社長である圭介くんが僅かながら抵抗したが、元はと言えばこちらから持ち掛けた話しであるのでここで社長がグズグズいうのはおかしいわけで・・・。「大体さ、俺は聞いてない」圭介くんは朝から機嫌が悪い。それを三木くんは優しく宥めようと頑張っているんだが、もう少しピシッと言っても良いと思う。「社長の圭介くんに言わなか...
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