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夢見月夜曲 http://yumemizukiyakyoku.blog.fc2.com/

日高千湖のオリジナルBL小説ブログです♪『薄き袂に宿る月影』はこちらへ移動しております。

日高千湖
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2014/02/17

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  • 合縁奇縁・8

    午後8時少し前に《花宴》を訪れた僕を、黒川店長は優しく笑顔で迎えてくれた。黒川店長がこういう顔を見せるのは珍しい。彼はニヒルに微笑んでいるか、厳しい表情をしているか、僕のイメージはそんな感じ。社員の中には彼には馴染めなくて敬遠する者もいる。とにかく掴み所のない人だ。正直に言って、苦手なタイプだったりする。 《花宴》はまだ営業中。黒川店長は早番だ。「食いたい物はあるか?」僕を見て、ふっと笑う。その...

  • 合縁奇縁・7

    清家先生は帰り際に、山下常務、佐井寺店長、西谷くんに新刊のサイン本を配った。そして「サイン本は価値がない」と笑う。純心な西谷くんが「売ったりしません!僕は宝物にしますから!」と言うのに、先生は笑いながら「感想を聞かせてくださいね」と続けた。うぶな西谷くんの様子を見て、佐井寺店長と山下常務は目を細めた。なかなか微笑ましい場面ではあるが、僕はこの先の流れを知っている。「感想はメールで送ってくださいね...

  • 合縁奇縁・6

    急いで裏庭に戻ると、清家先生は庭の隅にある陶器製のテーブルに座っておられた。清家先生は山下常務を相手に、あははっと楽しそうな笑い声を上げていた。山下常務の電話が終わったのだ。先生の膝には膝掛け、すでに座布団を敷いて座っておられた。「稲村くん、すまない。紅茶を頼んでくれたんだね」「はい。西谷くんに座布団があると聞きましたので、先生がここでお飲みになるかお尋ねしようと戻ってまいりました」「君がレモン...

  • 合縁奇縁・5

    清家先生はカメラを手に僕の後から付いて来る。カメラは一眼レフだ。玄関へ回り、靴に履き替えて裏庭の方へと歩いて行く間も、先生は立ち止まり何度もシャッターをきる。カシャッカシャッというシャッター音が小気味良くて、小型のデジタルカメラやスマホのカメラとは違った余韻が心地良かった。木漏れ日が差す木立の中を抜ければ、元は普通の池だったというビオトープが見えてくる。「こちらです」「へえ・・・。案外、広いんで...

  • 合縁奇縁・4

    清家宗隆というお人は、僕が赤いスポーツカーのオーナーに対して抱いていたイメージとは少し違うようだ。店の前の車は派手で、それに乗るオーナーももっとチャラい方を想像していた。だが清家先生は大変落ち着いておられる。話題も豊富で頭の回転が速い。 細身だが身体付きはガッシリしておられる。身長は山下常務とさして変わらないだろう。手元にある繊細なマーブル模様の名刺は大変好ましい。山下常務とは話しが合うようで、...

  • 合縁奇縁・3

    昼食を終えてコーヒーを飲んでいると、商談が済んだのか佐井寺店長が事務所に顔を出した。「山下店長、おいででしたか!」「ああ」「ちょうど良かった!ちょっと挨拶して頂きたい方が来店しておられるんですが。お願い出来ますか?」山下常務はチラリと黒川店長を見た。黒川店長は素知らぬ顔で山下常務を見返す。端から見ればふてぶてしい態度だ。「もちろん構わないよ。黒川がね、お客さまがどなたか教えてくれないんだよ」佐井...

  • 合縁奇縁・2

    《花信風》に到着したが、黒川店長の車はない。ここから移動してしまった後のようだ。代わりに黒い国産ハイブリッドカーと赤いスポーツカーが停まっている。「黒は佐井寺くんの車だね」「そのようです」「赤いスポーツカーに見覚えはないから、あれはお客さまの車だな」「そうですね。もう一台停められますが、他のお客さまがおいでになるかもしれませんね。佐井寺店長の車の後ろに車を停めましょうか?それともマンションの駐車...

  • 合縁奇縁・1

    「煩いんだけど」山下常務の刺々しい声が役員室に響いた。「明利」綱本室長の声は山下常務のそれとは真反対で、甘くて、柔らかくて、耳触りが良い。柔らかなベルベット生地で耳の中を擽られているような気さえしてくる。山下常務は彼の艶のある声を何とも思わないのだろうか。いつも聞き慣れた声だから、特には何も感じないのかもしれない。僕は時々、ゾクリとさせられるというのに。山下常務は綱本室長へは一瞥もくれずに冷たく言...

  • 合縁奇縁【目次】

    合縁奇縁・目次合縁奇縁・1、登場人物紹介稲村典孝(イナムラノリタカ)・・・『S-five』に勤務。山下明利の秘書を務めている。山下明利(ヤマシタアキトシ)・・・『S-five』常務。*****ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ! 日高千湖 ランキングに参加しております、良かったらポチッと押してやってください♪ ↓にほんブログ村 ありがとうございました! ...

  • 磯の鮑の片思い・50【最終回】

    「お前、本当に自分から手を上げていないんだな?」『NMW』本社ビルの裏手にオープンする予定の店のプロデューサーとして未知久が採用される事になった。中園社長は「そうじゃない」と言ったが、俺は今一つ信じられない。また『ステップ』の社長とか『NMW』の広報部長とかに

  • 磯の鮑の片思い・49

    『NMW』本社ビルの裏にあったレストランは昭和初期に建てられたという。古いが有名な建築家が設計した2階建てのビルだ。鉄筋コンクリート造りのビルの外壁には石が張られ、内装はアールヌーヴォー調で統一されている。「うわっ」「なかなか素敵な造りだろう?子どもの頃、本社に遊びに来ると父や伯父が必ずここで飯を食わせてくれたんだよ。懐かしいな」中園社長は懐かしそうに店の中を見回しながら歩き回っている。「本社には...

  • 磯の鮑の片思い・48

    コーヒーを飲みながら純さんが言う。「結局はさ、俺も

  • 磯の鮑の片思い・47

    あれから数日が経った。松沢くんは明らかに俺を避けていた。中園社長は俺たちがギクシャクしているのを何とかしようとする事はなく、自然に任せる感じ。純さんは気を遣って、松沢くんに何かと声を掛けていた。 中園社長と松沢くんは得意先回りに出て、俺と純さんは新作が納品されるのを待っている。昼食は駅前広場にいたキッチンカーからロコモコ弁当を買ってきた。「ねえ、真央ちゃん。あれからタカシに会った?」「・・・いい...

  • 磯の鮑の片思い・46

    翌朝、未知久はいつもの時間に散歩に出掛けた。未知久のいない所で「ミミちゃん、未知久を守ってあげてね」とお願いすると、ミミちゃんは威勢良くキャンキャン吠えて尻尾を振った。「わかってんのかな?」玄関先で俺に向かって猛烈な忠犬アピールするミミちゃんを見ながら思わず呟く。「なにが?」「何でもない。いってらっしゃい」「うん。真央もな」靴を履いた未知久が立ち上がった。未知久が戻る時間には、俺は出勤してここに...

  • 磯の鮑の片思い・45

    「いいのかよ?」「いいんじゃないの」「でも」「心配すんなって」「心配すんなって方が無理だろ!?」未知久は俺の心配やタカシの事なんかどうでもいいって感じで、「全部食いやがって、無くなっちゃったんじゃないか」とぬか漬けの心配をしている。「ぬか漬けは食って帰れ、って自分が言ったんじゃないか」「残してもいいのに」羊羹とぬか漬けを黙々と食べ、湯呑みのお茶を飲み干したタカシは憮然とした表情で立ち上がった。「お...

  • 磯の鮑の片思い・44

    湯を沸かしている間に、食器を軽く水で流して食洗機に入れる。リビングからはタカシの楽しそうな声が聞こえてくる。リビングに飾ってある俺とおばあちゃんと未知久3人の写真を見て、「これ、どこ?」と聞く。未知久は「伊豆」とか「箱根」とか適当に答えている。「お前がうろうろしても大騒ぎにはならないのか?」「意外とならない。おばあちゃんが一緒にいるとプライベートだとわかるからかな。それにサインとか写真とかは普段...

  • 磯の鮑の片思い・43

    一見、和やかに食事が進んだ。ギクシャクしているのは俺だけのような気がする。タカシは未知久の部屋に入れてもらって楽しくて堪らないって顔をして飲み食いしているが、未知久はいつもと変わらない感じ。ミミちゃんは煩く吠えたので隣の部屋のゲージに押し込まれ、時々「クーン」と悲しそうに鳴くから俺は可哀相になっている。このままの流れだと、俺が邪魔者っぽいよな?「あの・・・ミッチー」俺が「未知久」と呼ばないから、...

  • 磯の鮑の片思い・42

    帰宅すると、ミミちゃんの熱烈お出迎えだ。大歓迎してくれるから帰り甲斐がある。俺が玄関ドアの前に立つ前から、おそらくエレベーターのドアが開いた瞬間からミミちゃんは吠えている。ドアを開くと小さな茶色い物体が飛び跳ねているのが見えた。赤と緑のタータンチェックのリボンが付いた首輪を巻いたミミちゃんが、ジャンプして俺の足に飛び付いた。「ミミちゃん!ただいまです!」「キャンキャンキャン」茶色の耳をピンピンさ...

  • 磯の鮑の片思い・41

    「実は・・・その・・・。大変言い難いんですけど・・・」「うん。ゆっくりでいいよ」中園社長は優しい眼差しで俺を促した。「ごめんなさい」は後でもいいか。いつでも言えるから。俺は松沢くんにこの会社に残ってもらいたいし、出来れば今まで通りの付き合いをしたい。それには社長の手助けが必要なのだ。「その・・・。実は・・・松沢くんに、その・・・告白されてしまったんです」「松沢くんにかい?」社長は驚いて目を丸くした...

  • 磯の鮑の片思い・40

    純さんと松沢くんは午後から局に向かい、営業2課には俺と社長だけが残った。アドバイザーの仕事を退いてからは、こういう日は少なくない。『from.N』の放送日は社長も一緒に局入りするので、ここに残るのは俺一人だったりする。テレビの中では、話題のダイエットマシンに乗ったMCの加本さんが楽しそうに身体を揺らしている。感想を言いながら笑顔で重心を保つのは大変そうだ。 社長が『MIT-3』のCDを止めてクラッシックに変...

  • 磯の鮑の片思い・39

    翌朝、未知久は難しい顔をして出て行った。タカシのサインを指で弾きながら、「こんなもん、頼むなよ」と俺を睨む。頼んだわけではないが成り行きでもらう約束をしただけだ、と説明したが機嫌が悪い。 スケジュールを確認したら午前中はダンスレッスン。午後からアイドル誌の取材と撮影。お正月特大号の表紙と付録のポスター撮り。巻頭カラー特集は和服を着たメンバーが羽子板対決、というハードな内容だ。「未知久、大丈夫かな...

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