「世界」は存在しない
マルクス・ガブリエルは「あらゆるものをその中に含んでいる一つの世界というものは存在しない。」と言う。少し注釈が必要だろう。彼は宇宙と世界という言葉を使い分けていて、宇宙の存在については否定していない。宇宙はすべての物質が自然法則に従って運動している場である。いわば客観的な世界と呼んでもいいかもしれない。しかし「世界」はもっと大きく、われわれの意識的な主観現象も含め、ありとあらゆるものを包摂すると考えられるからである。しかし、科学技術の発展に伴い科学万能主義がはびこると、人々は「宇宙=世界」だと錯覚するようになった。自然主義哲学というのは科学と哲学に境界を認めない考え方で、あらゆることが自然科学の対象となりうるという考え方である。痛みだとか美しい花の色だとか異性に引かれる切ない気持ちなどという、もろもろの意...「世界」は存在しない
2023/08/20 06:00