原田マハ 『 楽園のカンヴァス 』は、アンリ・ルソーを取り上げたアート・ミステリです。ルソーについては、ヘタウマ絵ぐらいの認識でしかなかったのですが、本作品を読んで考えを新たにしました。著者のアート系の作品は、刺激的であり勉強にもなるので、恋愛小説や成長小説よりも好みです。
長嶋有 『 佐渡の三人 』は、死にまつわるお話4作品を収めた連作短編集です。亡くなった親族の納骨に向かう、ある家族の”ゆるゆる”とした日々が描かれています。この”ゆるゆる”感は、著者ならでは。さしてドラマチックな出来事は起こりませんが、それが良いのです。
ビル・プロンジーニ 『 脅迫 』は、作中に主人公の名前が表れないハードボイルド、名無しの探偵シリーズの第7弾です。これまでとは違った趣となっています。密室トリックとしてはイマイチだし、犯人もインパクトが少ないのですが、地味な探偵小説に多様性を与える意味はあったと言えるでしょう。
スティーヴン・キング『クージョ』は、狂犬病を患った巨大な犬が、車に立て籠もった母子をひたすら襲うというごく単純なストーリ―です。短編ですら間が持たないシチュエーションでしょう。これを、読み手を飽きさせるどころか、息もつかせぬ極上のパニック長編に仕立て上げるのが巨匠キング。
ジェイン・アン・クレンツ 『 ガラスのかけらたち 』は、ロマンティックミステリです。恋愛+殺人ミステリに加え、サイドストーリが絡み合って読み応えはあります。事件の結末はあっけなくて肩すかし気味なので、愛憎と癒しのドラマとして理解した方が良いかもしれません。
【本の感想】中薗英助『闇のカーニバル スパイミステリィへの招待』
中薗英助 『闇のカーニバル スパイミステリィへの招待』は、スパイをテーマとした評論集です。著者の幾つかの作品を読み終えていれば、著者の主張に首肯したり、反発を覚えたり、感慨を深めることができるのでしょうが、残念ながら目が滑って時間ばかりかかってしまいました。
横山秀夫 『 ノースライト 』は、再生の物語です。D県警シリーズ、F県警シリーズといった、事件をとりまく男たちが沸騰する警察小説・・・とは全く異なります。本作品は、ミステリとしては、サスペンスフルな展開よりも、叙情的なシーンが勝っているのです。
【本の感想】エドワード・D・ホック『ホックと13人の仲間たち』
エドワード・D・ホック『ホックと13人の仲間たち』は、著者のシリーズキャラクターが13人を集めた短編集です。こう並べてみると、作風はキャラ先行型と言えますか。物語が、キャラクターを際立たせるためにあるような印象を受けます。これは!という作品がないのが残念です。
山内昌之 『 嫉妬の世界史 』は、嫉妬の視点で世界史を切り取ったものです。歴史は夜作られる、でななくて、歴史は嫉妬で作られるを、洋の東西の文献から証明を試みています。ただし、嫉妬があったんじゃね?ぐらいの想像の範疇ではありますね。
樺沢紫苑 『 学びを結果に変えるアウトプット大全 』は、精神科医である著者が、心理学や脳科学に言及しつつ、「話す」「書く」「行動する」によるアウトプットを、ノウハウとしてまとめたものです。テーマ毎に見開きページで完結する体裁で解説を進めており、読み易くはあります。
ロバート・ゴダード 『 日輪の果て 』は、名品『蒼穹のかなたへ』の続編です。前作から6年後、引き続き文芸作品もかくやという重厚さを期待すると、大きく外してしまいます。例えるならば、まるで下手くそなドナルド・E・ウェストレイクの作品を読んでいるようです
原田マハ 『 たゆたえども沈まず 』は、フィンセント・ファン・ゴッホ、テオ兄弟と、パリの日本人美術商の物語です。美し過ぎる兄弟愛と友情がつづられていますが、そこはフィクションということで。フィンセント・ファン・ゴッホの生涯に、林忠正を絡ませて、よりドラマチックに仕上がっています。
米澤穂信 『 愚者のエンドロール 』は、省エネ男子高校生が、日常の謎を解く、古典部シリーズの第二弾です。一つの事件に様々な探偵が推理を述べ、二転三転しながら真相を導き出すという点で、アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』のまさにオマージュとなっています。
氏家幹人 『 江戸人の老い 』は、文献を紐解き、江戸時代の老人の姿から老いを考え直す試みです。本書は、鈴木牧之、徳川吉宗、敬順、江戸時代の3名の老人を取り上げています。三者三様の老後から、自分の老い先にも思いを馳せてしまいました。
ジョー・ゴアズ 『 狙撃の理由 』は、自身を狙撃した犯人を追う追跡劇です。本作品で際立っているのは、キャラクターの心の機微が、微に入り細を穿つが如く描かれている点です。クライマックスは、多いに盛り上がるのですが、さてさて、ラストは・・・こういう結末も嫌いじゃありません。
ジョー・ゴアズ 『 狙撃の理由 』は、自身を狙撃した犯人を追う追跡劇です。本作品で際立っているのは、キャラクターの心の機微が、微に入り細を穿つが如く描かれている点です。クライマックスは、多いに盛り上がるのですが、さてさて、ラストは・・・こういう結末も嫌いじゃありません。
【本の感想】ハンス・ロスリング 、 オーラ・ロスリング 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』
ハンス・ロスリング 、 オーラ・ロスリング 『 FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 』は、データから真実を読み解く術を与えてくれます。本書は、あくまで自身のマインドセットを変化させるためのものでしょう。
野坂昭如 『 火垂るの墓 』は、戦時中を舞台に少年と幼い妹の死を描いた、あまりに有名なアニメ作品の原作。文字として読むと悲しいより辛いという印象です。クセの強い文章で、慣れるまで苦戦を強いられましたが、読み進めるうちに作品のトーンと絶妙にマッチしていることが分かります。
【本の感想】グレゴリー・マクドナルド『フレッチ 死体のいる迷路』
グレゴリー・マクドナルド 『 フレッチ 死体のいる迷路 』は、元新聞記者フレッチが活躍するミステリー シリーズ第二弾。本作品は、フレッチの捜査行に殺人事件が絡んで、というまっとうなミステリです。前作と比較すると物足りなさが目立ちます。
大谷羊太郎 『 悪人は三度死ぬ 』は、人体消失、死体の瞬間移動といったトリックが堪能(?)できる本格推理小説です。ややこしいトリックにイライラが募ってしまいました。タイトルに込められた意味には、フ~ムとはなるのですが。
中島京子 『 小さいおうち 』は、戦中から戦後にかけて女中を勤めた老女の回顧録です。赤い三角屋根の小さな洋館で、主人公が秘かに憧れを抱く奥様を中心とした日々がつづられていきます。奥様が身を焦がした密やかな恋愛に、主人公は心穏やかではありません。
東野圭吾 『 赤い指 』は、加賀恭一郎シリーズの第7弾です。息子の殺人を隠蔽しようとした家族に、加賀が寄り添い解決に導くという、ホロリとくる作品に仕上がっています。サイドストーリーを含め、泣ける東野圭吾といったところでしょうか。
【本の感想】上遠野浩平『恥知らずのパープルヘイズ ―ジョジョの奇妙な冒険より― 』
上遠野浩平 『 恥知らずのパープルヘイズ ―ジョジョの奇妙な冒険より― 』は、第5部『黄金の風』の途中退場キャラ フーゴが主役のスピンオフです。ジョルノがフーゴをつかって残党狩りをおこなうという展開に違和感あり。ジョルノは、権力志向的なストイックさと無縁と思いたいのです。
【本の感想】ジョーナ・バーガー『インビジブル・インフルエンス 決断させる力』
ジョーナ・バーガー 『 インビジブル・インフルエンス 決断させる力 』は、人は物事を決める時に、知らず知らず見えない影響力に左右されている、という主張を科学的な観点から繰り広げるものです。記載されている実証実験の内容とその結果は興味深いのですが、でそうする?が知りたいところ。
【本の感想】ルトガー・ブレグマン『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』
ルトガー・ブレグマン 『 隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働 』は、お金を配ってしまえば、現代の課題は全て解決するんだよ、という主張を展開します。荒唐無稽ともとれるアイディアですが、著者の自信のほどを見せつけられました。
戸川昌子 『 大いなる幻影 』は、まさに読者をも幻影に包み込むミステリです。絶望のうちに妄執に取り憑かれた独身老女たちの描写が、素晴らしいですね都合良すぎなところも感じてしまうけれど、どんでん返しは成功しています。読みに難い点はありますが、それを差し引いても傑作と言って良いでしょう。
アイラ・レヴィン 『 ステップフォードの妻たち 』は、ウーマンリブ(死語)全盛期の1972年(発表時)を背景とした、奇妙な物語です。貞淑な妻たちの姿に、著者を含めた当時の男性の願望を反映したものと見るべきでしょうか。そういう意味では、本作品は、御伽噺なのでしょう。
小倉昌男 『 経営学 』は、クロネコヤマトの名を一躍世に知らしめた名経営者 小倉昌男氏の自著です。収益確保が難しくなってきたトラック運送業から撤退し、ヤマト運輸を宅配業への転身させたプロセスが著されています。出逢ってみたい経営者像ではありますね。
佐賀潜 『 華やかな死体 』は、若き検事の姿を描いたミステリです。弁護士でもある著者自身のキャリアを生かした法廷物で、さすがに臨場感がたっぷり。検事四年目の主人公と、法廷戦術に長けた弁護士の攻防戦が見所です。法廷劇が好きな方にはおススメできます。
エドワード・D・ホック 『 怪盗ニック登場 』は、金品に値しないないものだけを盗む風変わりな泥棒が主役の短編集です。全作品30頁前後ながら、ラストには必ずサプライズが用意されています。パターン化された筋立てなれども、ホックの名人芸が堪能できます。
パトリック・ルエル 『 長く孤独な狙撃 』は、元暗殺者を主役に据えたミステリです。恋人の父親は、殺しのターゲット。ラストは、ちょっとした驚きの真相が待っているので、じっくりと読み込むべき作品なのでしょうね。余韻を残す幕の引き方が素晴らしい、人間ドラマに仕上がっています。
柳広司 『 贋作『坊ちゃん』殺人事件 』は、夏目漱石『坊ちゃん』のその後を描いた、何と!ミステリです。オマージュと言っても良いでしょう。赤シャツ殺人事件の真相を追う坊ちゃん。思わず本家を再読したくなるくらいに優れた作品に仕上がっています。
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