『洗礼ダイアリー』/文月悠光
詩人の文月悠光によるエッセイ集。タイトルにある「洗礼」というのは、「社会に入るために経験しなければならないこと」とされているような物事、通過儀礼のようなものだと言ってもいいだろう。幼いころからちょっと「人とズレて」いたという文月は、学校で、職場で、SNSで、家庭で、友人関係で、さまざまな「洗礼」を浴びては、そのたびに動揺したり混乱したりする。各エピソードの中心になっているのは、彼女の感じる違和感、所在なさ、悔しさ、寂しさ、もどかしさ、やりきれなさ、不安、戸惑い、といった感情の揺れ動きで、なんとも不器用で不安定な、自意識が強くて潔癖な、傷つきやすい魂が感じられる。
2019/11/27 20:47