春子さんの茶の間 その13
窓ガラス越しの陽の光はもう春爛漫の感じ。 庭の椿も一度に咲いた。 真紅で大きめ女王様のようなのも、ちまちまと小さい藪椿も、しっとりとうつ向いている白い椿も。 寒がりの春子さんには嬉しいけれど、こう一足飛びに春がきたのでは風情がない。 春子さんには家事の外にやることは沢山あって、一日中退屈をすることはないけれど、 それと寂しいのとは別物だということに、ずっと前から気が付いてはいた。 近頃特に感じる。親しい友もみな老いて「出かけよう」と誘っても「明日になってみないと」と 起きてみないと体調が分からないなどと、情けないことを言う。 友がおかしいのではない。春子さんが元気過ぎるのだ。 昔から元気だった。両親に感謝しなさいよとよく言われた。 出かけると言ってもデパートをぶらついて食事してコーヒー飲んでお喋りするくらいのこと。 まあデパートでも今と..
2020/02/26 20:10