男と女が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「時々、疑問に思うのだけど、どうして君はよく旅行に行きたくなるの?僕はどこか遠くに行きたいという欲求を…
「世の中には食べるとライオンになったと思える茸があるらしいね」 「そうなのか」 「大抵の動物達はその茸を食べてライオンになったと錯覚すると自分が強くなったと…
草原で鹿を捕獲したライオンを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「ライオンが鹿の首を噛んでいるね」 「ライオンはいつも獲物の首を狙うようだね…
獲物を追って草原を走っている一匹のチーターを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「あんなに速く走れたら楽しいだろうね」 「そうだろうね。きっ…
夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある大きな声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が象だと気付いた。 「やあ。ごめん…
夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな柔らかな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が暗闇の中で座っていた駝鳥だと気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「その籠の中には何が入っているの?」 「鼠を飼っている。今は五匹しか籠の中に入ってい…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それにしても自分以外の人間には二度と出会えないかもしれない思っていたよ」 「ああ。…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それは何だ?」 「これは百科事典だよ。かなり昔から持ち歩いているのだけど、僕達の身…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は口がたくさんあるね。そんなにたくさんの口が必要になるの?食べる口と話す口と空気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は随分と脚が多いね。しかも、生えている場所がおかしいよ。どうして背中とか脇腹から…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「それは新しい脚かね?随分と珍しい場所から生えてきたね」 「ええ。私もまさか身体の天辺から脚が生…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「君はしばらく会っていなかった間に太ったようだね。新しい臓器が増えたのかね?」 「さあ。どうです…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その肩の穴は何だね?」 「肩とはどこですか?」 「君は自分の身体に肩がないと思っているのかね?…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「今、コーヒーを飲む為に俯いたから気付いたのだけど、君は頭頂部に小さな穴が開いているのだね。昔は…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その手の先端にに穴が開いているようだけど、どうしたのかね?」 「ああ。この穴ですか。この穴が新…
夢の中で私は洗面所に立っていた。手の平に穴が開いていると気付いたので私は動揺した。その傷を負った経緯は思い出せないのだが、穴が手の平を完全に貫通している様子…
朝、洗面所で鏡を覗き込むと額に『幸運を』という文字が書かれていた。それは私の渾名だった。その言葉の発音が私の本名とよく似ているので昔から友人達から『幸運を』…
夏に今の学校に転校してきてから私の渾名は『腕』になった。本名に発音が似ているから一人の同級生が誤って『腕』と呼んできたのだが、それから他の同級生達も私を『腕…
夕暮れ時、侍と一緒に広い田畑に挟まれた畦道を歩いていた。遠くにある山々の方から冬の冷たい風が吹き付けてきていた。辺りに人気はなく、私達はしばらく会話を交わし…
「頂上に着くまでは腕を食べてはいけませんよ」と遠足で山を登っている最中に教師が言ってきた。 突拍子もない内容の指示なので聞き間違いだろうと思ったが、私は疲れ…
「日の出を見に行こう」と飲み会の最中に友人の一人が言い出した。 その提案に皆が挙って賛同したので私達は居酒屋から出て東に向けて歩き出した。とりあえず外にいれ…
なかなか夜が明けないので私は東の空を見ながら不安になっていた。先程まで丘の上には私以外の人間達がたくさん集っていたのだったが、待ち草臥れたようで明らかに数が…
夜明け前に私は丘の上に立ち、空に向けて「雪になれ」と叫んでいた。雪を願う丘の上には真夏には誰も来ないはずなので私は好きなだけ大きな声を出せていた。高揚感に身…
夜明け前に私は丘の上に立ち、空に向けて「晴れになれ」と叫んでいた。私の周りに立っている人々も口々に大声で同じ言葉を空に向けて放っていた。高揚感に身を任せて何…
真夏の夜明け前、私は兄と一緒に海へと続く道路を歩いていた。早く海で泳ぎたいという気持ちを抑えられずに真夜中に家から出発したのだった。辺りはまだ暗くて街灯の光…
友人と一緒にプラットホームのベンチに座って列車の到着を待っていた。私達は日陰にいるのだが、真夏の日差しが辺り一帯を照らしているせいで蒸し暑くて仕方がなかった…
プラットホームのベンチに座って本を読んでいると男が隣に座ってきた。その男がこちらを見てきているようだったが、私は話し相手を必要としているわけではないので視線…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「このところ、僕は昔の人が書いた小説を読んでいるのだけど、その作品の中に『電球が切れた』という見慣れない…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「あの学校の教育について考えてみたのだけどね」 「どうしたの?学校が気に入らないの?」 「あの学校は立派…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「また満点を取れなかったよ」 「満点なんて簡単に取れるわけがないから落ち込む必要はないよ。そもそも、生徒…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「星占いって知っている?」 「知っているよ。星を見て運命を占うのだろう?君はそんな大昔の迷信を信じている…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「このところ、様々な古代文明について解説している本を読んでいるよ。その本によると昔は鹿を王に見立てて敬う…
夢の中で水に浸かった街路を歩いていた。足首の高さまで浸水しているのだが、水の感触が鮮明なので私は夢を見ているとはまったく気付いていなかった。一頭の鹿と並んで…
「こんにちは」と森の中の獣道で一頭の鹿が話し掛けてきた。 久しく人間の言葉での通信を受けていなかったので私は驚いた。喉の奥にある発信器が正常に機能するだろう…
「こんにちは」と一匹の魚が話し掛けてきた。 久しく人間の言葉での通信を受けていなかったので私は驚いた。喉の奥にある発信器が正常に機能するだろうかと心配しなが…
「これは『海の箱』ですよ」と館の主人は言った。テーブルの上には一個の木製の箱が置いてあった。 客は箱の表面に彫刻されている魚や蛸などを見ながら感心したように…
「これは『足音の箱』ですよ」と館の主人は言った。テーブルの上には一個の木製の箱が置いてあった。 「『足音の箱』ですか。そのような名が付けられている理由がある…
「これは『犬達の箱』ですよ」と館の主人は言った。テーブルの上には一個の木製の箱が置いてあった。 「『犬達の箱』ですか。表面に犬達の姿が彫られているわけでもな…
夜、私は息子と一緒に線路沿いの道路を歩いていた。時々、列車が通り掛かると辺りに大きな騒音が響き渡るのだが、それ以外の時でも息子がずっと犬の声真似をしているの…
今日、犬のように吠える集団の会合に初めて出席した。皆で犬の声真似をしたのだが、私は他の参加者達の声と比較すると自分の声があまりにも犬と似ていないような気がし…
今日、逆さ言葉を言い合う集団に初めて参加した。単語の発音の順序を逆様にしながら参加者同士で話し合ったのだが、私はまだ頭が慣れていないせいで会話になかなか参加…
今日、石を持ち寄る集団の会合に初めて出席した。皆で持ってきた石を披露し合い、それぞれの石について紹介した。私は会合の趣旨をよくわかっていないまま参加したので…
旅先の土産物屋で美しい青色の石を見つけた。まるで青空のようだと思い、気に入ったので購入した。 それから私はその青色のような石を肌身離さずに持ち歩いている。雨…
旅先の土産物屋で美しい漆黒の石を見つけた。まるで宇宙のようだと思い、気に入ったので購入した。 それから私は暇があると漆黒の石を手に取って観察している。虫眼鏡…
宇宙船の休憩室で二人の船員達が話し合っていた。 「誰が丸窓の映像の設定を勝手に変更した?」 「知らないよ。丸窓の映像がどうかしたのか?」 「宇宙船と並んで泳…
宇宙船の丸窓から外の様子を見てみる。星空の中を泳いでいる一匹の鯨と目が合う。それは窓に映された架空の像でしかないのだが、こちらと同じ速度で泳いでいる鯨の姿を…
友人が入院したと知ったので休日に見舞いに行った。大きい病院なので建物の入口から病室までが随分と長く感じられた。友人は窓辺のベッドに横になっていたが、彼と挨拶…
物音が聞こえてきたような気がしたので意識が覚醒した。目を開けると天井の照明が点いていた。白衣を着た看護士が病室の中にいた。寝台のすぐ近くに立っているのだが、…
休日に息子と一緒に遠方の動物園に出掛けた。ひどく風が冷たいので私は建物の中にある温かな爬虫類の展示場に長居したくなっていた。 「頭が大きな蛇がいるよ」と息子…
休日に息子と一緒に遠方の動物園に出掛けた。ひどく風が冷たいので私は建物の中にある温かな爬虫類の展示場に長居したくなっていた。 「この蛇は不老不死らしいよ」と…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「君は医学の発展がいずれ人類を不老不死にすると思うか?」 「ひょっとすると、可能なのかもしれないけど、す…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「もし君が人間の寿命を知る能力を持っていたとしたらどうする?」 「あまり嬉しくない能力だね。しかし、誰も…
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男と女が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「時々、疑問に思うのだけど、どうして君はよく旅行に行きたくなるの?僕はどこか遠くに行きたいという欲求を…
旅先のホテルで壁に設置されている鏡の中を覗き込んでいる夫に妻が問い掛けた。「どうしたの?自分の姿が気になるの?」 「ああ。この辺りの道を歩いていたら通行人か…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「これからの世界はどうなっていくのだろう?」と夫がテレビ画面を見ながら呟いた。 「あなた…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「本当にこんな馬鹿みたいな投資詐欺に騙される間抜けな人間達が世界中にたくさんいるのかと思…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「この犯罪者に課せられた刑期は短過ぎるね。たった五年の懲役刑は罰として甘いよ」と夫がテレ…
休日に妻と一緒に家具販売店でずらりと陳列されているソファを見物していると店員が話し掛けてきた。「どのような商品をお求めでしょうか?」 「重そうなソファばかり…
休日に妻と一緒に家具販売店でずらりと陳列されている椅子を見物していると店員が話し掛けてきた。「どのような商品をお求めでしょうか?」 「どの椅子も不安定そうね…
「そもそも、あなたはどうして椅子に座っていたのですか?」と警察官が質問してきた。 「長時間に渡って歩いていたので足がかなり疲れていたのですよ。それで、路上に…
「そもそも、あなたはなぜ浜辺を歩いていた生き物を蟹であると判断したのですか?」と警察官が質問してきた。 「脚の数が多かったのですよ。だから、蟹だろうと思った…
明け方に夢を見た。 私は学校の廊下を歩いていた。休み時間のようで周りにはたくさんの生徒達が行き交っていた。私は廊下の先に人集りが出来ていると気付き、そちらに…
明け方に夢を見た。 私は学校の廊下を歩いていた。こちらに話し掛けてきた同級生の発言の内容をまったく理解できなかったので私は当惑して現実世界ではないようだと察…
今日は翻訳機の調子が悪いようである。一時的な異常に過ぎないのだろうか?それとも、修理が必要な状態になっているのだろうか?しかし、今はその問題について考えるべ…
「先方が使用している言語には敬語が存在しません。ですから、この手紙を翻訳すると敬語をすべて省略した文章になりますが、構いませんか?」と翻訳機械が尋ねてきた。…
「先方が使用している言語には星という単語が存在しません。ですから、この手紙の文章は内容を完全には翻訳できません」と翻訳機械が言ってきた。 まさか星という単語…
「この手紙の文章に登場する鳥の種類は何ですか?」と翻訳機械が尋ねてきた。 「遠くから見ただけだから種類まではわからないよ。そのつもりで翻訳してくれ」と私は指…
この群島の公用語は土着の古語、外来語、鳥語という三つの要素から成り立っている。この群島は大海原の真ん中にあり、昔から他の言語圏との交流が少なかった為に個性的…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。こちらの世界での生活にはそれなりに慣れてきたつもりなのだが、…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。こちらの生活にはそれなりに慣れてきたつもりなのだが、今でも私…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。前世の記憶があるせいか、今でも私は自分の声に違和感を覚えてい…
前世でトラックにはねられ、記憶を保持したまま異世界に転生してから数十年が経っている。前世の記憶があるせいか、今でも私が発する言葉には多少の訛りがあると周りの人…
「世の中には食べるとライオンになったと思える茸があるらしいね」 「そうなのか」 「大抵の動物達はその茸を食べてライオンになったと錯覚すると自分が強くなったと…
草原で鹿を捕獲したライオンを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「ライオンが鹿の首を噛んでいるね」 「ライオンはいつも獲物の首を狙うようだね…
獲物を追って草原を走っている一匹のチーターを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「あんなに速く走れたら楽しいだろうね」 「そうだろうね。きっ…
夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある大きな声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が象だと気付いた。 「やあ。ごめん…
夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな柔らかな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が暗闇の中で座っていた駝鳥だと気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「その籠の中には何が入っているの?」 「鼠を飼っている。今は五匹しか籠の中に入ってい…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それにしても自分以外の人間には二度と出会えないかもしれない思っていたよ」 「ああ。…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それは何だ?」 「これは百科事典だよ。かなり昔から持ち歩いているのだけど、僕達の身…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は口がたくさんあるね。そんなにたくさんの口が必要になるの?食べる口と話す口と空気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は随分と脚が多いね。しかも、生えている場所がおかしいよ。どうして背中とか脇腹から…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「それは新しい脚かね?随分と珍しい場所から生えてきたね」 「ええ。私もまさか身体の天辺から脚が生…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「君はしばらく会っていなかった間に太ったようだね。新しい臓器が増えたのかね?」 「さあ。どうです…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その肩の穴は何だね?」 「肩とはどこですか?」 「君は自分の身体に肩がないと思っているのかね?…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「今、コーヒーを飲む為に俯いたから気付いたのだけど、君は頭頂部に小さな穴が開いているのだね。昔は…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その手の先端にに穴が開いているようだけど、どうしたのかね?」 「ああ。この穴ですか。この穴が新…
夢の中で私は洗面所に立っていた。手の平に穴が開いていると気付いたので私は動揺した。その傷を負った経緯は思い出せないのだが、穴が手の平を完全に貫通している様子…
朝、洗面所で鏡を覗き込むと額に『幸運を』という文字が書かれていた。それは私の渾名だった。その言葉の発音が私の本名とよく似ているので昔から友人達から『幸運を』…
夏に今の学校に転校してきてから私の渾名は『腕』になった。本名に発音が似ているから一人の同級生が誤って『腕』と呼んできたのだが、それから他の同級生達も私を『腕…
夕暮れ時、侍と一緒に広い田畑に挟まれた畦道を歩いていた。遠くにある山々の方から冬の冷たい風が吹き付けてきていた。辺りに人気はなく、私達はしばらく会話を交わし…
「頂上に着くまでは腕を食べてはいけませんよ」と遠足で山を登っている最中に教師が言ってきた。 突拍子もない内容の指示なので聞き間違いだろうと思ったが、私は疲れ…