トリステの正しい場所 8
「それで?」「はい?」「また始めたのか、フェンシング」サインを終えた書類を受け取り、フルアは上司に視線を向けた。短くなった煙草を灰皿に捩じ込み、重厚なデスクチェアに背中を預けたハインリヒが紫煙を吐き出す。その眼差しは一見すると射抜くような鋭さと冷たさを持っているが、冬の海の色を宿したそれが存外に温かいものだと知っている。今も純粋な好奇心を浮かべたハインリヒの双眸に、フルアはそれと辛うじて分かる程度...
2022/04/25 14:16
2022年4月 (1件〜100件)
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