「破船」吉村昭
1972年刊行の吉村昭の小説。吉村氏の小説は物悲しい物が多いのだが、表現が淡々としていて冬の情景が目に浮かぶ。どちらかと言うと貧しい者であったり、物資や愛情に恵まれた者よりそうではない人々の話が多い。しかし、それが悲惨であればあるほど、淡々とした文章が悲惨さをイコール悲惨として、それ以下にもそれ以上にも表していない。たぶん伝わらないだろうけど。なんというのかなぁ。読んでみると解る、読まなければ解らない。当たり前だけど。破船(新潮文庫)吉村昭新潮社ある北の方の海岸にある17戸の小さな集落が舞台で、前は海、後ろは険しい山、隣の町まで徒歩で3日がかりと言う、陸の孤島のような寒村である。その貧しさは蛸や秋刀魚が取れる時には干物にして売りに行き、塩を作っては売りに行く。農産物は限られた物しかできず、米は当然なく雑穀...「破船」吉村昭
2024/11/30 21:08