インドから帰国して早3年目。日本語の活字に飢えていた私は大沢在昌と東野圭吾の小説を交互に読んで来たのだった。両者ともに100作品を超えるが、終わりが近くなってきたので次はだれにしようかと思っていた。ある日、吉村昭がボクシングをテーマに何作か書いている事を知った。そこで次は吉村作品を読もうと決めたのだったが、ボクシングの小説は短編だったため1冊ではなく作品集になっていた。で、脱獄をテーマにしたこの作品を1冊目に選んだのだった。小説の中では佐久間清太郎と言う仮名になってるが、白鳥由栄と言う実在する人物がモデルだ。1907年に青森県に生まれた白鳥は1933年強盗殺人を犯し、青森刑務所に投獄される。劣悪な環境に抗議するために1936年脱獄。1941年に秋田刑務所に投獄されるが翌1942年またもや脱獄する。3か月の...「破獄」吉村昭