もう40年ほど前に短い期間だけ山歩きをしたことがある。主に出向いたのは北八ヶ岳で、雪が降り始めて人が少なくなる頃になると一人で出かけていた。早朝に茅野駅に着き、バスで横岳ロープウェイに向かい、頂上駅で降りると大抵は一人きりで、雪原には足跡ひとつないのが普通だった。初めての時は自信もなくて、雪原を前に帰るかどうか迷ってうろうろしたのが懐かしい。 当時テントは持っていなかったので山小屋泊が普通だったが、黒百合ヒュッテに宿泊し翌朝天狗岳に登ったことがある。夜中は小屋の中でもマイナス10以下、ストーブに当たっている面は暖かいけど、背中はゾクゾク寒かった。外はマイナス15度くらいだったように思う。 翌朝は雲ひとつない快晴で、山頂までは暑くて長袖アンダー1枚。気温はおそらくマイナス10度近いはずだが、頂上で腰をかけて休んでいても日差しが強くて暑いくらいで気持ちが良かった。 と..