「代わって。ねえ、代わってよ」 真夜中に声がした。それは、誰かの声じゃない。 僕の声だった。 「代わって。ねえ、代わってよ」 怖くて、目が開けられない。耳をふさいでも無駄だ。 だって、声は僕の体の中から聞こえている。 「代わって。ねえ、代わってよ」 「いやだよ」と答えてみた。 「ケチだな」と声がした。不思議だ。僕の中で、僕と僕が会話している。 怖くなって起き上がって、おかあさんのところに行った。 「怖い夢を見たのね」 おかあさんは優しく背中を撫でてくれた。もう声は聞こえない。 僕は安心して眠った。 翌朝、おばあちゃんに話した。 「その子は、おそらく双子のかたわれだ」 おばあちゃんはそう言って、仏壇に手を合わせた。 「かたわれ?」 「もうひとりの、おまえだよ」 「もうひとりの、僕?」 「おまえは、双子で生まれるはずだった。だけど、どういう..