世界よりも信じるもの 2
酒場の中ではランタンの光が暗闇を照らしていた。それでも比率としては暗闇の方が多い。隣の席に何人いるか分からないほどだった。三人掛けの卓が八つくらいしかない小さな酒場だ。皿に残った焼き豚の油を舐めるように平らげていたリリィは、今や夢の中だ。すーすーすーと嵐の後の静けさを醸し出していた。長い睫毛と、頬紅を付けたような桃色のほっぺたが、緩徐に動くたびにジルバは見とれてしまう。それをつまみに酒をあおることは格別だった。「ったく。この前の仕事で稼いだ金がちゃらだ」不満を漏らしながら、ジルバの瞳は微笑んでいた。長靴型をした木のジョッキを傾け、エールを飲み干していると、残っていた一脚にいきなり男が座った。ジルバは言葉より先に剣の柄に手をかける。「これは失礼。ちょっとお話を聞かせたくてね。うちの仲間は、ほれ、みんな潰れちまった...世界よりも信じるもの2
2012/06/14 11:16