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中原中也・夜の詩コレクション57/浮 浪
浮 浪 私は出て来た、街に灯がともって電車がとおってゆく。今夜人通も多い。 私も歩いてゆく。もうだいぶ冬らしくなって人の心はせわしい。なんとなくきらびやかで淋しい。 建物の上の深い空に霧(きり)が黙ってただよっている。一切合切(いっさいがっさい)が昔の元気で拵(こしらえ...
2020/05/31 05:05
中原中也・夜の詩コレクション56/無 題
無 題 疲れた魂と心の上に、訪れる夜が良夜(あたらよ)であった‥‥‥そして額のはるか彼方(かなた)に、私を看守(みまも)る小児(しょうに)があった‥‥‥ その小児は色白く、水草の青みに揺れた、その瞼(まぶた)は赤く、その眼(まなこ)は恐れていた。その小児が急にナイフで自殺すれば、...
2020/05/30 10:26
中原中也・夜の詩コレクション55/夜寒の都会
夜寒の都会 外燈に誘出(さそいだ)された長い板塀(いたべい)、人々は影を連れて歩く。 星の子供は声をかぎりに、ただよう靄(もや)をコロイドとする。 亡国に来て元気になった、この洟色(はないお)の目の婦(おんな)、今夜こそ心もない、魂もない。 舗道の上には勇ましく、黄銅の胸像...
2020/05/29 05:06
中原中也・夜の詩コレクション54/かの女
かの女 千の華燈(かとう)よりとおくはなれ、笑める巷(ちまた)よりとおくはなれ、露じめる夜のかぐろき空に、かの女はうたう。 「月汞(げっこう)はなし、低声(こごえ)誇りし男は死せり。皮肉によりて瀆(けが)されたりし、生よ歓喜よ!」かの女はうたう。 鬱悒(うつゆう)のほか訴うる...
2020/05/28 00:02
中原中也・夜の詩コレクション53/或る心の一季節 ――散文詩
或る心の一季節――散文詩 最早(もはや)、あらゆるものが目を覚ました、黎明(れいめい)は来た。私の心の中に住む幾多のフェアリー達は、朝露の傍(そば)では草の葉っぱのすがすがしい線を描いた。 私は過去の夢を訝(いぶか)しげな眼で見返る………何故(ナニユエ)に夢であったか...
2020/05/27 09:06
中原中也・夜の詩コレクション52/涙 語
涙 語 まずいビフテキ寒い夜澱粉(でんぷん)過剰の胃にたいしこの明滅燈の分析的なこと! あれあの星というものは地球と人との様(さま)により新古自在(しんこじざい)に見えるもの とおい昔の星だっていまの私になじめばよい 私の意志の尽きるまであれはああして待ってるつもり ...
2020/05/26 09:04
中原中也・夜の詩コレクション51/(何と物酷いのです)
(何と物酷いのです) 何と物酷(ものすご)いのです此(こ)の夜の海は――天才の眉毛(まゆげ)――いくら原稿が売れなくとも燈台番(とうだいばん)にはなり給(たま)うな あの白ッ、黒い空の空――卓の上がせめてもです読書くらい障(さまた)げられても好いが書くだけは許してください ...
2020/05/25 04:23
中原中也・夜の詩コレクション50/ダダ音楽の歌詞
ダダ音楽の歌詞 ウワキはハミガキウワバミはウロコ太陽が落ちて太陽の世界が始った テッポーは戸袋ヒョータンはキンチャク太陽が上って夜の世界が始った オハグロは妖怪下痢はトブクロレイメイと日暮が直径を描いてダダの世界が始った (それを釈迦(しゃか)が眺めてそれをキリス...
2020/05/24 05:14
中原中也・夜の詩コレクション49/初夏の夜に
初夏の夜に オヤ、蚊が鳴いてる、またもう夏か――死んだ子供等(こどもら)は、彼(あ)の世の磧(かわら)から、此(こ)の世の僕等(ぼくら)を看守(みまも)ってるんだ。彼の世の磧は何時(いつ)でも初夏の夜、どうしても僕はそう想(おも)えるんだ。行こうとしたって、行かれはしないが、あんまり遠くで...
2020/05/23 10:28
中原中也・夜の詩コレクション48/道化の臨終(Etude Dadaistique)
道化の臨終(Etude Dadaistique) 序 曲 君ら想(おも)わないか、夜毎(よごと)何処(どこ)かの海の沖に、火を吹く龍(りゅう)がいるかもしれぬと。君ら想わないか、曠野(こうや)の果(はて)に、夜毎姉妹の灯ともしていると。 君等想わないか、永遠の夜(よる)の浪、...
2020/05/21 09:22
中原中也・夜の詩コレクション47/子守唄よ
子守唄よ 母親はひと晩じゅう、子守唄(こもりうた)をうたう母親はひと晩じゅう、子守唄をうたう然(しか)しその声は、どうなるのだろう?たしかにその声は、海越えてゆくだろう?暗い海を、船もいる夜の海をそして、その声を聴届(ききとど)けるのは誰だろう?それは誰か、いるにはいると思うけれど...
2020/05/20 09:51
中原中也・夜の詩コレクション46/道修山夜曲
道修山夜曲 星の降るよな夜(よる)でした松の林のその中に、僕は蹲(しゃが)んでおりました。 星の明りに照らされて折(おり)しも通るあの汽車は、今夜何処(どこ)までゆくのやら。 松には今夜風もなく土はジットリ湿ってる。遠く近くの笹の葉もしずもりかえっているばかり。 星の降...
2020/05/19 05:14
中原中也・夜の詩コレクション45/聞こえぬ悲鳴
聞こえぬ悲鳴 悲しい 夜更(よふけ)が 訪(おとず)れて菫(すみれ)の 花が 腐れる 時に神様 僕は 何を想出(おもいだ)したらよいんでしょ?痩せた 大きな 露西亜(ロシア)の婦(おんな)? 彼女の 手ですか? それとも横顔?それとも ぼやけた フイルム ですか?それとも前世紀の ...
2020/05/18 05:19
中原中也・夜の詩コレクション44/或る夜の幻想(1・3)
或る夜の幻想(1・3) 1 彼女の部屋 彼女には美しい洋服箪笥(ようふくだんす)があったその箪笥はかわたれどきの色をしていた 彼女には書物や其(そ)の他(ほか)色々のものもあったが、どれもその箪笥(たんす)に比べては美しくもなかったので彼女の部屋には箪笥だけがあった ...
2020/05/17 03:14
中原中也・夜の詩コレクション43/夢
夢 一夜(ひとよ) 鉄扉(かねど)の 隙(すき)より 見れば、 海は轟(とどろ)き、浪(なみ)は 躍(おど)り、私の 髪毛(かみげ)の なびくが ままに、 炎は 揺れた、炎は 消えた。 私は その燭(ひ)の 消(き)ゆるが 直前(まえ)に 黒い 浪間に 小児と 母の、白い 腕(かい...
2020/05/16 08:01
中原中也・夜の詩コレクション42/白紙(ブランク)
白紙(ブランク) 書物は、書物の在(あ)る処(ところ)。インキは、インキの在る処。 私は、何にも驚かぬ。 却(かえっ)て、物が私に驚く。 私はもはや、眠くはならぬ。 私の背後に、夜空は彳(た)ってる。 書物は、書物の在る処。 インキは、インキの在る処。...
2020/05/15 06:28
中原中也・夜の詩コレクション41/深更
深 更 あああ、こんなに、疲れてしまった……――しずかに、夜(よる)の、沈黙(しじま)の中に、揺(ゆ)るとしもないカーテンの前――煙草(たばこ)喫うより能もないのだ。 揺るとしもないカーテンの前、過ぎにし月日の記憶も失(う)せて、都会も眠る、この夜(よ)さ一(ひ)と夜(よ)、我や...
2020/05/14 06:28
2020/05/14 06:27
中原中也・夜の詩コレクション40/夜更け
夜更け 夜が更(ふ)けて帰ってくると、丘の方でチャルメラの音が…… 夜が更けて帰って来ても、 電車はまだある。 ……かくて私はこの冬も夜毎(よごと)を飲んで更かすならいか…… こうした性(さが)を悲しんだ 父こそ今は...
2020/05/13 05:11
中原中也・夜の詩コレクション39/我が祈り 小林秀雄に
我が祈り 小林秀雄に 神よ、私は俗人(ぞくじん)の奸策(かんさく)ともない奸策がいかに細き糸目(いとめ)もて編(あ)みなされるかを知っております。神よ、しかしそれがよく編みなされていればいる程、破れる時には却(かえっ)て速(すみや)かに乱離(らんり)することを知っております。 神...
2020/05/11 10:13
中原中也・夜の詩コレクション38/暗い天候(二・三)
暗い天候(二・三) 二 こんなにフケが落ちる、秋の夜に、雨の音はトタン屋根の上でしている……お道化(どけ)ているな――しかしあんまり哀しすぎる。 犬が吠える、虫が鳴く、畜生(ちくしょう)! おまえ達には社交界も世間も、ないだろ。着物一枚持たずに、俺も生きてみたいんだよ。 ...
2020/05/10 06:39
中原中也・夜の詩コレクション37/蛙 声
蛙 声 天は地を蓋(おお)い、そして、地には偶々(たまたま)池がある。その池で今夜一(ひ)と夜(よ)さ蛙は鳴く……――あれは、何を鳴いてるのであろう? その声は、空より来(きた)り、空へと去るのであろう?天は地を蓋い、そして蛙声(あせい)は水面に走る。 よし此(こ)の地方(く...
2020/05/08 09:45
中原中也・夜の詩コレクション36/或る男の肖像
或る男の肖像 1 洋行(ようこう)帰(がえ)りのその洒落者(しゃれもの)は、齢をとっても髪に緑の油をつけてた。 夜毎(よごと)喫茶店にあらわれて、其処(そこ)の主人と話している様はあわれげであった。 死んだと聞いてはいっそうあわれであった。 2 ―...
2020/05/07 04:49
中原中也・夜の詩コレクション35/月の光 その二
月の光 その二 おおチルシスとアマントが庭に出て来て遊んでる ほんに今夜は春の宵(よい)なまあったかい靄(もや)もある 月の光に照らされて庭のベンチの上にいる ギタアがそばにはあるけれどいっこう弾き出しそうもない 芝生のむこうは森でしてとても黒々しています おおチル...
2020/05/06 09:53
中原中也・夜の詩コレクション34/月の光 その一
月の光 その一 月の光が照っていた月の光が照っていた お庭の隅の草叢(くさむら)に 隠れているのは死んだ児(こ)だ 月の光が照っていた月の光が照っていた おや、チルシスとアマントが 芝生の上に出て来てる ギタアを持っては来ているがおっぽり出してあるばかり ...
2020/05/05 09:54
中原中也・夜の詩コレクション33/月夜の浜辺
月夜の浜辺 月夜の晩に、ボタンが一つ波打際(なみうちぎわ)に、落ちていた。 それを拾って、役立てようと僕は思ったわけでもないがなぜだかそれを捨てるに忍びず僕はそれを、袂(たもと)に入れた。 月夜の晩に、ボタンが一つ波打際に、落ちていた。 それを拾って、役立てようと僕は思っ...
2020/05/03 07:10
中原中也・夜の詩コレクション32/幻 影
幻 影 私の頭の中には、いつの頃からか、薄命(はくめい)そうなピエロがひとり棲(す)んでいて、それは、紗(しゃ)の服なんかを着込んで、そして、月光を浴びているのでした。 ともすると、弱々しげな手付をして、しきりと 手真似(てまね)をするのでしたが、その意味が、ついぞ通じたためしはな...
2020/05/02 07:08
中原中也・夜の詩コレクション31/一つのメルヘン
一つのメルヘン 秋の夜(よ)は、はるかの彼方(かなた)に、小石ばかりの、河原があって、それに陽は、さらさらとさらさらと射しているのでありました。 陽といっても、まるで硅石(けいせき)か何かのようで、非常な個体の粉末のようで、さればこそ、さらさらとかすかな音を立ててもいるのでした。...
2020/05/01 13:36
2020年5月 (1件〜100件)
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