■鉄の匂い315■
リサちゃんと別れて家に戻ると、ミホちゃんが台所で洗い物を手伝っていた。なんとなく声を掛けそびれて、『僕』はミホちゃんから遠くもなく近くもない応接間のソファに座ってテレビを見ていた。お母さんが覗きに来て、気を利かせてミホちゃんをお手伝いから解放し『僕』の隣りに座らせてくれた。けどすぐお父さんが帰ってきて「従姉妹でも結婚は出来るぞ姻族ってわかるか?」と冷やかされ、ミホちゃんは真っ赤になって台所に戻ってしまった。小学生相手に結婚だの言う父さんもアレだけど、なんか間が持たなくなっていた『僕』は、ほっともした。夜になって親戚が集まるとそこは大人の宴会で、応接間は子供の誕生日を肴に飲みたいだけの困った人たちの盛り場と化した。ミホちゃんを、リサちゃんを送った五差路を越えて駅まで送る。駅の改札で黙って手を差し出すミホちゃんと長...■鉄の匂い315■
2019/09/30 22:42