■鉄の匂い203■
大通りからは窺い知れなかったが、路地は奥に行くに連れ右左に忙しなく折れ曲がった。角に到達して初めてその先が右に曲がるのか左に折れるのかを認知できる煩雑な隘路。今日に限って荷物が積まれてて行き止まりと言う可能性だって十二分にある。曲がり角の向こうから人が来ないこと、階上の踊り場に喫煙休憩の従業員が居ないことを確認する為に、急いでる振りをしてモヤシを追い越し建物に隠れた先を見届ける。対向者は居ない。裏口から急にゴミを捨てに店の人間が出て来る以外に目撃される危険はない様だ。振り返り様に隠し持っていた鉄パイプをモヤシの頭に振り下ろす。不意を突かれたモヤシは呆気なく一撃を食らい翻筋斗(もんどり)打って水溜りに倒れた。が、第二撃を食らわそうと馬乗りになった瞬間に、腿に痛みが走った。チキチキチキと金属音。起き上がるモヤシの手...■鉄の匂い203■
2019/06/30 21:31