■鉄の匂い133■
その足で仮住まいにしていた喫茶店に行き荷物を纏めた。姉さんの処から持ってきた鞄と片付けた荷物を詰めた段ボール箱を抱えて、土管山の公園に向かう。土管山の公園とは、人が通れるくらいの土管の上に残土を盛って全面を滑り台にした遊具が鎮座する公園である。土管山以外には半分埋めた古タイヤくらいしかない雑草生い茂る公園で、当然に人気(にんき)は無くだから何時も人気(ひとけ)が無かった。『僕』も、傍を通ることはあっても中に入るのはこれが初めてだった。人目を憚る『僕』にはお誂えの公園。とりあえず土管の中に荷物を降ろし、水道で顏と手を洗う。家には帰りたくなかった。しかし兄さんの関係以外で泊まれる処は無かった。夜に休める場所がない。初めての経験だった。膝を抱え一睡もできずに朝を迎え、そのまま昼すぎまで土管の中に蹲っていた。腹が減った...■鉄の匂い133■
2019/03/31 22:11