s1195 大金
昭二は、夜這いの話が再燃し、明子の身にこれ以上災が起きては、とそそくさと帰り支度をした。 明子の縋る気持を振り切り、来た道をとぼとぼ帰る昭二の背中は泣いていた。 昭二は、やはり自分の家には寄らず、そのまま港から四十年前と同じ、誰にも気づかれず島を出た。 後日、明子のもとへ小包が届いた。 差出人住所には全く覚えはなく、昭二からの郵便物には間違いなし。 この郵便物は、明子の度肝を抜くのである。 郵便物の中味は、長靴とカッパ、明子名義の通帳と印鑑、なんと二千万円ものカネが入っていた。 当時のお金では、腰を抜かす程の大金である。 間違いなく、昭二が送ってきたものだと考えられるが、どうしたものか考えあぐねた。 思案に思案をした末、この金を大事に使い、何時の日か昭二に恩返しをしたい、と考えた。 結論を出してからの明子は、まるで人が変わった。 当時、旅人がちらほら島に来たが、聞くところ島の民家にお世話..
2025/03/18 00:46