chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 【2785冊目】村瀬孝生『ぼけてもいいよ』

    ぼけてもいいよ―「第2宅老所よりあい」から作者:村瀬 孝生西日本新聞社Amazon 「第2宅老所よりあい」は、福岡市にある高齢者の生活の場のこと。本書は、この地域の中のごくふつうの民家に、通い、あるいは暮らすお年寄りとの日々を綴った一冊だ。高邁な理想を唱えるのは簡単だ。でも、現実にシモの世話をし、同じ問いかけに何度も答え、「家に帰る」というお年寄りといっしょに何時間も歩くとなると、これはなかなかたいへんなのだ。本書には、そんな実践の日々から生まれた、地に足のついた言葉が散りばめられている。それは一見平凡だが、ときにドキッとするほど鋭く、こちらの思い込みをえぐってくる。たとえば本書の冒頭では、北…

  • 【2784冊目】尾脇秀和『氏名の誕生』

    氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書)作者:尾脇 秀和筑摩書房Amazon ややこしくも、大変面白い本でした。苗字があって、名前がある。現代の私たちには当たり前のことですが、実は、江戸時代以前はそうではありませんでした。当時は自分の仕事やポジションに応じて、名前を変えるのも当たり前。名前とはそれほど確固としたものではなく、むしろその人の地位や仕事をあらわす「しるし」のようなものだったのです。それが大きく変わったのは、明治維新でした。興味深いのは、そこで行われた「姓」と「名」という(現代にやや近い)名前の導入には、朝廷勢力の影響があったこと。実は、武家社会になり、名前のあ…

  • 【2783冊目】米原万里『マイナス50℃の世界』

    マイナス50℃の世界 (角川ソフィア文庫)作者:米原 万里,山本 皓一KADOKAWAAmazon 今朝のニュースで、カナダでは気温がマイナス50℃に達した、と言っているのを見て、この本を思い出しました。ロシア語通訳の達人にして名エッセイスト、米原万里の初の著作です。そして、なんと地球上で最も寒い場所、ロシアのヤクートへの旅を綴った一冊なのです。しかもこれ、TBSの企画で実現した取材らしいのですが、写真が山本皓一、同行のリポーターがあの椎名誠という意外な組み合わせ。ちなみに本書の写真のキャプションは全部椎名誠がつけているそうです。本書で一番強烈なのは、ヤクートの寒さ。なにしろ飛行機から降りた時…

  • 【2782冊目】宮部みゆき『昨日がなければ明日もない』

    昨日がなければ明日もない (文春文庫 み 17-15)作者:宮部 みゆき文藝春秋Amazon 杉村三郎シリーズの最新作。「絶対零度」「華燭」「昨日がなければ明日もない」の中編3つが収められています。「絶対零度」はとにかく読後感が胸糞。しばらく引きずってしまい、次の作品を読めなくなるほどでした。宮部みゆきの「容赦のなさ」が久々に味わえたような。「華燭」は、なんと同じ結婚式場で同時に2つの結婚式がお流れになるという意外きわまる作品。コミカルですが謎解き要素は3作中いちばん濃いかも。「昨日がなければ明日もない」は意味深なタイトルですが、その意味がわかった瞬間の切なさがたまりません。ラストで立ち尽くし…

  • 「私家版・新潮文庫の100冊」を選んでみました

    この間、100冊を通して読んでみたのですが、あらためて秀逸なセレクションだと感じ入りました。 ですので、その選書に異をとなえるつもりはないのですが、やはりこう見事な選書眼を披露されると、それをほめるだけではなんだか物足りないんですよね。及ばないながらも、自分なりの「回答」を示してみたくなる、というか。 なので、100冊読破記念企画として(まあ、誰もそんなの期待しちゃいないでしょうけど)「もうひとつの新潮文庫100冊」セレクションを作ってみました。少々長いリストになりますが、ご笑覧いただければ幸いです。 ジャンル分けはせず、基本的に著者名の五十音順にしてあります。複数冊に及ぶものはまとめて一冊…

  • 【2781冊目】村田沙耶香『地球星人』

    地球星人(新潮文庫)作者:村田沙耶香新潮社Amazon いや〜、いいですね〜。狂ってます。これまで読んできた村田作品の中でも、本書はかなりぶっちぎっています。リミッターが外れているというか、遠慮がないというか、容赦がないというか。主人公の「私」は、小学生の頃は自分を魔法少女だと信じていたというのですが、まあ、その程度なら「夢見る年頃」にはよくあることです。でも、34歳にもなって、今度は「私は実はポハピピンポボピア星人」だ、なんて言い出したら、さすがにシャレになりません。でも、「私」は大真面目なのです。しかも、「性交渉なし」の条件でネットを介して知り合った夫も、おそろしいことに同じ意見、同じ思考…

  • 【2780冊目】森川すいめい『感じるオープンダイアローグ』

    感じるオープンダイアローグ (講談社現代新書)作者:森川すいめい講談社Amazon オープンダイアローグについて書かれた本はいろいろありますが、本書はその中でも、短いながらその本質に迫った一冊なのではないかと思います。その理由の一つは、著者が自らオープンダイアローグ発祥の地フィンランドで学び、日本人医師初の国際トレーナー資格を取得したことにあります。本書は外野の書いた「解説書」というより、オープンダイアローグを深く実践した著者による、一種の「体験記」なのです。その意味で、本書の白眉は著者自身が受けたトレーニングについて書かれた第3章です。そこで行われたのは、著者自身の過去や、心の痛みを他者に語…

  • 【2779冊目】國分功一郎・熊谷晋一郎『〈責任〉の生成』

    の生成ー中動態と当事者研究" title="の生成ー中動態と当事者研究"><責任>の生成ー中動態と当事者研究作者:國分功一郎,熊谷晋一郎新曜社Amazon 決して簡単な内容ではありません。特に「中動態」という概念は、定義を読めば理解はできるのですが、なかなか体感的に入ってこないものがあります。なので、ピンと来ない部分も多かったのですが、にもかかわらず非常に刺激的な一冊でした。今までの自分の思考を大きく揺さぶり、変えてくれた本でもあります。まず「免責と引責」のくだりに興味を惹かれました。例えば放火をしてしまう人がいる。もちろんとんでもないことです。責任を取らせるべき、という意見も出るでしょう。で…

  • 【2778冊目】草森紳一『その先は永代橋』

    その先は永代橋作者:草森紳一幻戯書房Amazon 博覧強記、稀代の読書家であった草森紳一は、2008年、門前仲町の自宅で、本に埋もれるようにして亡くなりました。本書はその晩年に書かれた2つの連載エッセイを収録した一冊です。第一部「その先は永代橋」は、永代橋という「場所」にまつわるあれこれを取り上げたエッセイです。そこに登場するのは清河八郎に小津安二郎、河竹黙阿弥に七代目団十郎と多士済々。しかもそこから四方八方に雑学の触手が広がり、思わぬところにつながっていくのがおもしろい。第二部「ベーコンと永代橋」のベーコンは肉ではなくて、著者が愛してやまない画家フランシス・ベーコンのことです。こちらはあまり…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、hachiro86さんをフォローしませんか?

ハンドル名
hachiro86さん
ブログタイトル
自治体職員の読書ノート
フォロー
自治体職員の読書ノート

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用