chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 【2695冊目】今邑彩『ルームメイト』

    ルームメイト (中公文庫)作者:今邑 彩中央公論新社Amazon ※ネタバレがありますのでご注意ください。突然消えたルームメイトの麗子。部屋の電話をリダイヤルすると、つながったのは同棲相手がいなくなったという男性だった。そして主人公の春海は、麗子が二重生活どころか三重生活まで営んでいたことを知る・・・・・・ミステリアスな導入に惹かれて読み始め、一気に読み終えた。多重人格モノのミステリはいろいろあるが、その中でもよくできている。トリックはアンフェアギリギリだが、多重人格を正面に出し、あえて強調することでそこをクリアするという離れ業が見事。テープを使ったミスリードもうまく、てっきり私は○○のほうが…

  • 【2694冊目】東野圭吾『疾風ロンド』

    疾風ロンド (実業之日本社文庫)作者:東野 圭吾実業之日本社Amazon 出先で読む本がなくなったので、あわててコンビニで買った本(この行動自体どうかと思いますが)。内容もまた、お手軽なコンビニ・エンターテインメントです。炭疽菌を改造した生物兵器を研究所から盗み出し、雪山に埋めたまま事故死した男。警察に通報すると、勝手に炭疽菌を改造したことがバレてまずいので、研究所は1人の研究員に秘密裏の改修を命ずるのですが・・・とまあ、基本的には雪山でひたすら生物兵器(の隠し場所を示すテディベア)を探し回るというだけの話なのですが、それだけで400ページ近い分量を読み切らせるリーダビリティはさすが。とはいえ…

  • 【2693冊目】宮﨑雅人『地域衰退』

    地域衰退 (岩波新書 新赤版 1864)作者:宮崎 雅人岩波書店Amazon 最初に、ギョッとするデータが示される。この20年間で、もっとも人口が減ったのは、奈良県川上村と北海道夕張市の49.0%。川上村は労働力人口も63.2%減少している。人口減少数では、福岡県北九州市が49,479人、福島県いわき市が38,671人。同じく20年間で、53市町村で病院数がゼロになり、21市町村で医師数がゼロになった。一方、空き家率では、 2018年時点で山口県周防大島町が30.0%、鹿児島県肝付町が26.1%などとなっており、上位20位すべての自治体で2割を超えている。本書はこうしたデータを踏まえて、日本中…

  • 【2692冊目】齋藤亜矢『ヒトはなぜ絵を描くのか』

    ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待 (岩波科学ライブラリー)作者:齋藤 亜矢岩波書店Amazon 岩波化学ライブラリーの一冊。100ページほどの薄い本ですが、内容は充実しています。「絵を描く」ことは、ヒトであれば幼児のころから当たり前のようにやっています。でも、それができる動物はほとんどいない。なぜでしょうか。本書はそこを解き明かすことで、ヒトにひそむ「認知」と「運動」の機能に迫ります。その謎を解くカギのひとつは「幼児の絵」にあります。たとえば、3歳くらいの子どもの絵には、ときどき「上下逆さま」のものが見られるそうです。実験で、ネコの耳のようなラインを紙に引いて、それをひっくり返し…

  • 【2691冊目】劉慈欣『三体III 死神永生』

    三体Ⅲ 死神永生 上作者:劉 慈欣早川書房Amazon 三体Ⅲ 死神永生 下作者:劉 慈欣早川書房Amazon 中国生まれのSF巨篇『三体』の完結編。相変わらず、予想を裏切り続ける展開が読者を飽きさせない。VRを取り入れつつ、地球を舞台に人類同士の戦いを描いた『三体』、面壁者や宇宙戦争(というか一方的な虐殺)を描いたスペースオペラ・エンターテインメントの『三体Ⅱ 黒暗森林』に続き、本書で展開される物語は、ある意味もっとも抽象度が高く、SF的な想像力を極限まで推し進めたものだ。しかも、ネタバレになるので詳しくは書かないが、え、ここまでやるの、という出来事の連続なのである。中で読んでいて嬉しかった…

  • 【2690冊目】中村文則『去年の冬、きみと別れ』

    去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)作者:中村文則幻冬舎Amazon 2人の女性を殺害し、死体を焼いたとされる男性へのインタビューで、この小説は始まります。でも、どこかおかしい。「資料」として突然挿入される、奇妙な手紙。何度も投げかけられる「君には無理だ」「私たちの領域には到達できない」という声。被告の姉がかもしだす異様な存在感。そして、事件の裏側に隠されたとんでもない秘密と、タイトルの意味が、明らかになります。う〜ん。そもそもトリック小説として読んでいなかったこともありますが、これはかなりのサプライズ。こないだ読んだ『イニシエーション・ラブ』もそうでしたが、この展開には、かなり意表を突かれま…

  • 【2689冊目】こうの史代『ぼおるぺん古事記』

    ぼおるぺん古事記 (一)天の巻作者:こうの 史代平凡社Amazon ぼおるぺん古事記 (二): 地の巻作者:こうの 史代平凡社Amazonぼおるぺん古事記 三: 海の巻作者:こうの 史代平凡社Amazon すばらしい一冊、いや三冊だ。『この世界の片隅に』で戦時下の日常を丹念に描いたこうの史代が、日本神話のミステリアスでユーモラスな世界観をみごとに漫画化してみせた。 しかも現代語訳ではなく、書き下し文ベース。それでもちっとも読みにくくないのは、やはり絵の力だろう。特に、たくさん出てくる神様を「キャラ化」して描き分けているのが、読み手としてはたいへんありがたい。「古事記」最大のつまづきポイントで…

  • 【2688冊目】茨木のり子『倚りかからず』

    倚りかからず (ちくま文庫)作者:茨木 のり子筑摩書房Amazon 茨木のり子の詩は、まっすぐに心に突き刺さる。平易な言葉が組み合わされているだけなのに、一見、散文のようなのに、実は、極限まで研ぎ澄まされ、削ぎ落とされている。なんというか、言葉の純度がものすごく高いのだ。言葉のクリスタルゼーション。だが、冷たいわけではない。むしろ、温かい。読むほどに、自分の心が適温になっていくのがわかる。それも言葉の力、詩の力。薄い本だが、そこから通じている世界は、とんでもなく広く、深い。生涯、手元に置いておきたい一冊です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

  • 【2687冊目】村木厚子『公務員という仕事』

    公務員という仕事 (ちくまプリマー新書)作者:村木厚子筑摩書房Amazon 元・厚生労働事務次官という肩書からは意外なことに、この本にはとても好感がもてた。おそらくとても真面目で、でも適度なユーモアがあって、温かい人柄なのだろう。そのことは本書からしっかり伝わってくる。 若者向けの「ちくまプリマー新書」からの一冊ということで、ひらたくいえば公務員就職推奨本である。極端な長時間労働や政治家への「忖度」問題など、最近とみに人気が落ちているという国家公務員の仕事の現場を紹介している。悪いところは悪い、としっかり指摘しつつ、全体としては著者自身の経験から、公務員という仕事のやりがいや楽しさを伝えるも…

  • 【2686冊目】沢木耕太郎『凍』

    凍 (新潮文庫)作者:耕太郎, 沢木新潮社Amazon 山野井泰史と、山野井妙子。トップクライマーの夫婦が挑んだのは、ヒマラヤのギャチュンカンだ。高さは8000メートルをわずかに下回るが、「素晴らしい壁があり、そこに美しいラインを描いて登れる」ことが期待できたからだ。彼らにとっては、8000メートル超えの名声よりそっちのほうが大事なのだ。本書は壮絶な山岳ノンフィクションである。ギャチュンカンに挑む2人を襲う、困難に次ぐ困難がすさまじい。わずかな氷の裂け目を辿って何時間も登り、絶壁を削ってできたスペースで眠る。足は冷え切って痛み、目は見えなくなり、妙子に至っては食事も受け付けなくなる。その上、何…

  • 【2685冊目】ギ・ド・モーパッサン『オルラ/オリーヴ園』

    オルラ/オリーヴ園 モーパッサン傑作選 (光文社古典新訳文庫 Aモ 2-4)作者:モーパッサン光文社Amazon モーパッサン晩年の短篇集。「ラテン語問題」「オルラ」「離婚」「オトー父子」「ボワテル」「港」「オリーヴ園」「あだ花」の8篇が収められている。際立って異質なのが「オルラ」である。モーパッサンの短編は、どんなに悲惨な展開であってもどこかに作者の冷めた眼が感じられるのだが(本書でいえば「港」とか「オリーヴ園」)、「オルラ」では、作者自身が狂気と錯乱に飲み込まれてしまっている。他の作品のような突き放した文章ではなく、現実と夢想、正気と狂気が混ざり合った文章で書かれているのだ。「われわれに…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、hachiro86さんをフォローしませんか?

ハンドル名
hachiro86さん
ブログタイトル
自治体職員の読書ノート
フォロー
自治体職員の読書ノート

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用