限りなき夏~クリストファー・プリースト①
「目の前にセイラがいた。自分のほうに手を伸ばしている。強調された明るい色彩のけばけばしさを目にした。凍りついたあの日が動かぬままでいることを見て取った。セイラの笑み、幸せそうな顔、プロポーズの受諾—それらはほんの一瞬まえのことだった。だが、それらは見ているまに色あせ、トマスは彼女の名を大声で呼んだ。セイラはなんの動きも返事もせず、静止したままで、そのまわりの光が暗くなった。トマスはまえにつんのめった。全身をどうしようもない無力感に襲われ、地面に倒れた。」いずこからともなく現れる「凍結者」。彼らは、過去を訪れ、その時代の人々の貴重な一瞬を凍結し、その部分の時の経過を止めます。切り取られたシーンは「活人画」(タブロー)として、そこに閉じ込められた人々は、その時点から、忽然とこの世から消え失せた存在となってしま...限りなき夏~クリストファー・プリースト①
2022/11/28 22:42