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2005/10/29

  • 「宇宙飛行士ピルクス物語」~「審問」「運命の女神」~スタニスワフ・レム①

    「要約:レムの小説観は非常に狭苦しくとんちんかんであり、おそらくそれはかれの社会性の欠如からきている。レムの作品に一貫するのは人間嫌いと社会の不在であり、それはかれのぶっとんだ小説のおもしろさの源泉であると同時に一つの限界でもある。感情なき宇宙的必然の中で:スタニスワフ・レムを読む(季刊『InterCommunication』2006年夏号)山形浩生」スタニスワフ・レムは、知能指数がえらく高く(180をたたき出したらしい!)、理屈好きで、気難しい、皮肉屋のおじさんでありながら、密度の高い知的、独創的な作品を生み出してきた、自他ともに認めるSF界における孤峰の一人であります。私は、「ソラリス」はもちろん、目についたレムの作品は、それなりに購入してきたのですが、面白くないことはないものの、難しそうだなと敬遠し...「宇宙飛行士ピルクス物語」~「審問」「運命の女神」~スタニスワフ・レム①

  • ペトラ~グレッグ・ベア②

    「わたしは醜い石と肉の子であり、それを否定することはできない。母のことは覚えていない。わたしが生まれてすぐに蒸発したのかもしれない。どうせ死んでいるのだろう。わたしは父の姿も―息子と似ているとすれば、くちばしがあり、翼もどきのものがついた醜い代物のはずだ―見たことがない。」77年前にモルデュー(神死)が起こり、あらゆる存在がぐらつき、世界は、混沌に飲み込まれてしまいます。妄想が実体あるものの如く現実化し、これまでの安定した世界は崩壊し、物語の舞台となる聖堂だけは、かろうじて残っています。素性のよくわからない司教の下で、中世のような、退化した小世界ではあるものの、何とか一定の秩序を維持しています。ただ隠されていることは、石像が命をもつようになることを信じた者たちによって、石像が「肉体」を持つようになり、人間...ペトラ~グレッグ・ベア②

  • 「中国・アメリカ 謎SF」~王諾諾の二題

    『改良人類』「「どのぐらい寝てたんだい?」「六一七年と三か月になります」「は?600年?なんで起こしてくれなかったんだよ!」ALSを患っていた主人公の劉海南は、治療法が確立されているであろう未来に希望を託して冷凍睡眠に入っていました。彼が、600年後に目覚めたとき、遺伝子改変の技術が極度に進み、遺伝子に関わる病気はもちろんのこと、性格や容姿に至るまでコントロールできるようになり、まさに「理想的」な人々からなる社会が実現しているように見えました。ところが、行き過ぎた弊害として、遺伝子の多様性が失われてしまい、再度取り戻すには、配列を固定している「ロック機能」を解除する必要がありますが、これができなくなってしまっていました。このため,ひとたび悪質なウィルスがはやると、人類全滅となるリスクが極めて高くなっている...「中国・アメリカ謎SF」~王諾諾の二題

  • 分離~サム・J・ミラー

    「(おれの息子を返してくれ。)と叫びたかった。(おれを愛してくれる息子を。あの子はどこにいるんだ。あの子になにをした。この不機嫌そうな生き物は、どこのどいつだ。)眼下に張りめぐらされた、クアナークの二百万におよぶ命をささえている鋼鉄の格子を通して、黒いグリーンランドの水が、われらが洋上都市の水門に打ち寄せていた。」環境破壊と地球温暖化が進み、居住できる土地、工作できる土地が水没し、激減した近未来の世界では、限られたエリアの洋上都市クアナークの高層階に住む、まさに開創の高い人々と、土地を追われ、難民として、仮想の苛烈な労働に従事する人々とに分断され、乏しい資源と食料のもとで、格差が強烈な社会となっていました。主人公は、海に沈んだ北アメリカから、スウェーデンに逃れてきたものの、よい仕事は見つからず、氷河から割...分離~サム・J・ミラー

  • エンパイア・スター~サミュエル・R・ディレイニー②

    「わたしは"宝石"。わたしは多観(マルチプレックス)な意識を持つ。これはつまり、さまざまな視点からものごとを見られるということである。わたしの内部構造における振動パターンの倍音列。それが持つ働きのひとつこそは、この多観性にほかならない。ゆえに、これよりわたしは、文学の世界でいうところの<全知の観察者>の視点から、この物語をじっくりと語っていくことにしたい。」植民惑星テュロスの農夫、コメット・ジョーは、その名のとおり、星々を眺めるのが好きな青年でしたが、ある日、八本脚の仔悪魔猫ディクにより、墜落した宇宙船の衝突現場に導かれます。そこで、ジョーは、いまわの際の乗組員のノルンから、エンパイア・スターへと行き、メッセージを伝えてほしいと託されますが、ノルンは、それだけを伝えると「宝石」と化してしまいます。いったい...エンパイア・スター~サミュエル・R・ディレイニー②

  • 限りなき夏~クリストファー・プリースト①

    「目の前にセイラがいた。自分のほうに手を伸ばしている。強調された明るい色彩のけばけばしさを目にした。凍りついたあの日が動かぬままでいることを見て取った。セイラの笑み、幸せそうな顔、プロポーズの受諾—それらはほんの一瞬まえのことだった。だが、それらは見ているまに色あせ、トマスは彼女の名を大声で呼んだ。セイラはなんの動きも返事もせず、静止したままで、そのまわりの光が暗くなった。トマスはまえにつんのめった。全身をどうしようもない無力感に襲われ、地面に倒れた。」いずこからともなく現れる「凍結者」。彼らは、過去を訪れ、その時代の人々の貴重な一瞬を凍結し、その部分の時の経過を止めます。切り取られたシーンは「活人画」(タブロー)として、そこに閉じ込められた人々は、その時点から、忽然とこの世から消え失せた存在となってしま...限りなき夏~クリストファー・プリースト①

  • 久しぶりに、百万編知恩寺の古本まつりに行きました。

    今年の秋の百万編知恩寺の古本まつりは、10月29日から11月3日まで開催されました。久しぶりにのぞいてみることにしました。前のブログ記事から見ると、8年ぶりということですね。SFや怪奇幻想系がとんとなくなってしまったこともあり、今回は、雰囲気を楽しみに来たという感じでしたが、いや、やはり、私にとっての掘り出し物は残念ながらありませんでした。ちょっと「におい」がした棚は、唯一、これだったかな。買うには至りませんでしたが。この古本市は、京大の近くでもあり、学術的な品ぞろえもあるイメージがあり、少しマニアックなところもあると思っているのですが、SF系は、購買層が減ってしまっているのか、先細りなのですかね。結局は、SFとは無縁の図鑑系を2冊購入し、後にしましたが、いい日和だったので、気分転換にはなりました。知恩寺...久しぶりに、百万編知恩寺の古本まつりに行きました。

  • 死者登録~ジョー・ホールドマン②

    「わたしにはしつっこい睡眠障害があり、生きていくにはなかなか辛いが、これは大事に持っていたいと思う。そりゃあ、大事にしたいとも。もとをただせば二十年も昔、ヴェトナムへとさかのぼるものだ。グレイヴズへと。」ヴェトナム戦争時、米軍の戦死者の、なかにはバラバラとなった遺体は、それなりに縫い合わせ、遺品を整理して、棺に封印し、一定数たまると、飛行場へトラック輸送するという業務を担当する「死者登録所」にいた「わたし」。あるとき、現場死体を見に来てほしいという要請に、ヘリコプターで現地に向かう、わたしと上官のフレンチ大尉。そこには、乾いた皮膚が骨格に張り付き、歯をやすりで削られた、現地の山岳民族とおぼしき奇妙な遺体があり、ヴェトコンによる拷問によるものではないかとの疑念があるとのこと。死体を検分している最中、敵襲があ...死者登録~ジョー・ホールドマン②

  • 征たれざる国~ジェフ・ライマン②

    「みんな<死者>なんだ、と彼女は思った。みんな彼岸へわたろうとしているのよ。そう思うと、平和でくつろいだ気分になった。彼女の親しい人はみんな<死者>だった。背後の街では、茶色い煙がもくもくと立ちのぼっていた。上空では、鳥たちがあいかわらず気流に乗って輪を描き、空はあいかわらず微妙に形を変え、光を散らして、それを通して巨大な影を落としている。空では、昼間の星のように、ちっぽけな白い光が動いていた。天空のどこかに、<大国人>が機械のひとつを据えていたのだ。空の高みには、冷たい金属と安全がある。<大国人>は、蜘蛛の巣のような網を星々にかけわたしてすべるという。そんなそばまで天に迫ろうというのだ。すべりなさい、と三女は<大国人>に告げた。すべって、立ち去りなさい、世界を私たちのもとに返して。」大国の思惑に翻弄され...征たれざる国~ジェフ・ライマン②

  • 26モンキーズ、そして時の裂け目~キジ・ジョンスン①

    「この一団を手に入れて三年になる。エイミーはかつて、ソルトレイク・シティ空港の離発着機の空路下にある月極めの家具付きアパートメントで暮らしていた。うつろだった。何かに身体を噛まれて穴が空き、その穴が感染してしまったかのようだった。ユタ州特産市で猿の出し物があった。まったく彼女らしからぬことだったが、エイミーはふいにどうしても見たいと感じた。ショーが終わると、理由もわからぬままにオーナーに近づいてこう言った。「どうしてもこれを買わなければならないの」」エイミーは、連れ合いに捨てられ、仕事はクビになり、妹は癌に侵され、アパートに一人取り残され、何ともうまくいかない、喪失の日々になかば呆然としていたところ、26匹の猿のサーカス団に出会います。この団が欲しくなったエミリーの願いは、意外にも聞き入れられ、わずか1ド...26モンキーズ、そして時の裂け目~キジ・ジョンスン①

  • 初めはうまくいかなくても、何度でも挑戦すればいい〜ゼン・チョー

    「ひとりになると、バイアムは服を脱ぎ、きちんとたたんで岩の上に置いた。そして何年も自分自身にかけていた術を解いた。地下鉄から地上に出て新鮮な空気を深々と吸い込んだときのようだ。バイアムは初めて、不完全な自分に対する愛情がこみ上げてくるのを感じたー脚がなく、角もなく、如意宝珠も持っていない、ありのままの自分。自分はできるかぎりのことをした。」龍になる一歩手前の大蛇(イムギ)であるバイアムは、準備怠りなく、龍となって昇天するべく、奮闘します。大空に上っているときに、その姿を見た人間から、龍だと認められることが、大きな条件となっているのですが、バイアムは、千年に一度のチャンスを、三回続けて失敗してしまいます。自らの運命を受け入れ、龍になることを諦めたバイアムは、腹いせのため、三度目のしくじりの原因となった、天体...初めはうまくいかなくても、何度でも挑戦すればいい〜ゼン・チョー

  • ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル〜テッド・チャン⑤

    短編作家であるチャンにとって、短い長編並みのボリュームのある本編は、最長の作品となります。仮想環境で生きているディジタル生物〜ディジエントを養育するという、ブルー・ガンマ社のプロジェクトの試みから物語は始まり、ディジエントが様々な人間と関わりながら、「人間」らしく育てられ、経験を積み、自ら選択を行っていく過程を描きます。プロジェクトメンバーのアンとデレクは、ディジエントの進化、成長にむけて、試行錯誤を繰り返しますが、「人格」を持った個性ある存在として接するという一貫した姿勢を貫きます。でも、お察しのとおり、儲かるかどうかの厳然たる企業論理による淘汰により、「人間的」なディジエントよりも、役に立つ機能に特化したものへとニーズがシフトしていく中で、ブルー・ガンマ社のニューロブラスト系のディジエントは、次第に取...ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル〜テッド・チャン⑤

  • 郷村教師~劉慈欣①

    「きみたちがわかっていないことはわかっている。でも暗記しなさい。いずれわかってくるから。ある物体に生じる加速度は、加えられた力に比例し、その物体の質量に反比例する」「先生、ほんとにわかったから。お願い、休んで!」最後の力で彼は叫んだ。「暗記しなさい!」子供たちは泣きながら暗唱しはじめた。「ある物体に生じる加速度は、加えられた力に比例し、その物体の質量に反比例する。・・・」中国の僻地、貧困と無知の中で、先の見えない暮らしを余儀なくされている村で、寄宿舎の付設された学校を、献身的に守っている教師の話から、物語は始まります。村人は、子供に対する教育の必要性への理解すらほとんどなく、廟の社殿の修理のために、寄宿舎の垂木を取り外すような振る舞いにさえ出る始末です。それでも、この先生は、教育こそが未来の希望であると、...郷村教師~劉慈欣①

  • 時間飛行士へのささやかな贈物~フィリップ・K・ディック⑧

    「アディスン・ダグは、プラスチックのまがいアカスギの小枝を滑りどめにはめこんだ長い小道を、大儀そうにとぼとぼと登っていた。やや首をうなだれ、肉体の激しい苦痛に耐えているかのような足どりだった。ひとりの若い娘がそれを見まもっていた。彼女はとんでいって彼を支えてやりたかった。あまりにも疲れきったみじめなようすに胸が痛んだが、それと同時に、彼が生きてそこにいるという事実で心がはずみもした。一歩一歩と彼は近づいてくる。顔を上げようともせず、勘だけで歩いているように・・・まるでいままでにも何度かここにきたことがあるみたい、とだしぬけに彼女は思った。ばかに道順にくわしいなあ。なぜかしら?」時間飛行から帰還する際の事故にあってしまった、ダグたち3人の「時間飛行士」たち。既に死んでいるはずにもかかかわらず、いったんは未来...時間飛行士へのささやかな贈物~フィリップ・K・ディック⑧

  • 黄金律~デーモン・ナイト③

    「黄金律」とは、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」との道徳の根本則であるが、本物語は、「黄金律」の否定型(silverrule)である「他の人からしてもらいたくないことは他の人に対してするな」がしっくりきます。ミズーリ州チリコシ界隈のあるエリアで、他者に対する行動がそのまま自分に跳ね返るような奇妙な事件が続発します。このことに、政府に関わるきな臭いものを感じた新聞記者のダールは独自に取材を行ううちに、当局から秘密裡に接触を受け、軍の研究施設において、真実を知ることと引き換えに、その機密をしばらくの間、隠匿することが人類にとって必要なことを理解し、公表しないことを求められます。ダールは、完全に承諾したわけではありませんが、事実を見て、判断することを前提に、軍の研究施設へと向か...黄金律~デーモン・ナイト③

  • 雨にうたれて~タニス・リー①

    「まだ幼かったころ、あの、いつ果てるともしれずつづいた<警報>の日々のことを、わたしはぼんやりとながら憶えている。母もまた、家の中に囚われたわたしの仲間だった。幼な心に理由もわからぬながら、邪悪な恐怖の奔流となって降りしきった雨。毒という毒と放射能が、あらゆるものの上に、目に見えぬきらめきを放ちながら積もりつづけ、空にもまたいつのまにか蓄積していたそれらを豪雨が一気にあらいながしてよこすのだった。」町に警報が鳴り響き、放射能やあらゆる毒素を含んだ鉛色の雨が降り注いでくる危険を知らせます。人々は,戸外に出るのを可能な限り避け、放射能を遮蔽し、ダメージの蓄積から逃れる暮らしを余儀なくされています。それでも,放射能の影響を完全に防ぐことはできず、癌による早死は,避けがたいことと受け止められています。一方、町には...雨にうたれて~タニス・リー①

  • 変革のとき~ジョアンナ・ラス

    あのメッセージが送られてきたときユキは車の中にひとりでいて、ツー・トン式の信号を一生懸命解読したのだった。ノッポで派手なわが娘は車からとびだしてありったけの声で叫んだのだった。だからむろん彼女もいっしょに来なければならなかった。このコロニーが築かれてから、このコロニーが打ち捨てられてから、その覚悟は理屈の上ではできていたが、現実となるとちがってくる。実に怖ろしいことだ。「男よ!」ユキは車のドアをとびこえながら、叫んだのだった。「戻ってきたのよ!本物の地球人の男が!」植民惑星「ホワイルアウェイ」では、600年前に、疫病により「男性」が死に絶え、残された「女性」たちは、生き抜くための苦難を何とか乗り越え、新しい、社会・経済システムを築こうとしていました。卵子同士を合体させるという手法によって、子孫を残すことが...変革のとき~ジョアンナ・ラス

  • 雪~ジョン・クロウリー

    「それまでに、少なくとも八千時間分のジョージーを伝達済みだった。彼女の一日一日、一時間一時間、出かけたり帰ってきたりする姿、言葉や動き、生きた彼女そのもの—そのすべてが、ほとんど場所も取らずに「パーク」にファイルされている。やがて時が来たら、「パーク」に行けばいいのだ。たとえば日曜の午後、(「パーク」の売り口上によれば)静寂に包まれ、美しく造園された環境で、彼女専用の個人安息室を訪れる。そして、最先端の情報保存と検索システムの奇跡を通して、一人きりで彼女にアクセスできるのだ。生きている彼女に、どこから見ても生前の彼女そのものの姿にアクセスする。いつまでも変わりも老いもせず、(「パーク」のパンフレット曰く)永久に色あせぬ記憶よりなおいっそうみずみずしい姿に。」ジョージーの、亡き資産家の前夫は、大枚をはたいて...雪~ジョン・クロウリー

  • ジャガンナート―世界の主~カリン・ティドベック

    「偉大なるマザーの中で新しい子供が生まれ、<育児嚢>の天井に突き出したチューブから吐き出された。子供はビシャッという音を立てて生きた肉の寝床に落ちた。パパが足を引きずりながら分娩チューブに近づき、しなびた手に赤ん坊を抱きあげた。」パパ曰く、「世界が駄目になったとき、マザーが我らを受け入れてくれた。マザーは守り手、ふるさとである。我らなくしてはマザーは生きられず、また、マザーなくしては我らも生きることはできない。」マザーと呼ばれる巨大な生物?の体内で一生を過ごす人間?たち。女性は、腸の蠕動を司る機関や、脚を動かし移動させる機関に配属され、男性は、受精や脳内において、マザーの案内者としての役目を担っています。<育児嚢>でパパの世話を受けながら育った子供は、「欠員」状況に応じて、大きくなった順に、各部署へと送り...ジャガンナート―世界の主~カリン・ティドベック

  • 失われた時間の守護者~ハーラン・エリスン⑦

    「もしもグレゴリウス教皇が、人々の心の中の時間を調整しなくてはならないという知識を啓示で受けていたならどうじゃ?もしも一五八二年の余計な時間が十一日と一時間だったらどうじゃ?もしその十一日は対処してきちんと消し去ったが、残った一時間がすべりぬけて解き放たれ、永遠にはねまわり続けていたらどうじゃ?ごく特別な一時間・・・決して使ってはならぬ一時間・・・決して過ぎてはならぬ一時間。もしもそうならどうじゃ?」亡妻の墓を訪れ、語りかける、ガスパールという名の老人。この老人を襲おうとしたチンピラ連中を蹴散らした、ベトナム帰りの黒人のビリー。ガスパールは、ビリーの家に身を寄せ、二人は共同生活を始めます。常に愛妻のことを忘れないガスパールは、老い先短い中で、自分が死ぬことで、この世界から妻の記憶が消え去ることを恐れています。一...失われた時間の守護者~ハーラン・エリスン⑦

  • システムの危殆~マーダーボット・ダイアリー~マーサ・ウェルズ

    「統制モジュールをハッキングしたことで、大量殺人ボットになる可能性もありました。しかし直後に、弊社の衛星から流れる娯楽チャンネルの全フィードにアクセスできることに気づきました。以来、三万五千時間あまりが経過しましたが、殺人は犯さず、かわりに映画や連続ドラマや本や演劇や音楽に、たぶん三万五千時間近く耽溺してきました。冷徹な殺人機械のはずなのに、弊機はひどい欠陥品です。」この出だしの一段落は、「主人公」である警備ユニットが、どのように生まれたのか、どんな風変わりな嗜好を持っているかを簡潔に示してくれます。とある惑星の本格開発に当たって、事前調査として派遣された調査隊。探査に要する宇宙船から居住基地まで一式を請け負う企業との契約上、用心棒としての警備ユニットが同行しています。この調査隊は、その調査を妨害するかのような...システムの危殆~マーダーボット・ダイアリー~マーサ・ウェルズ

  • オクテイヴィア・E・バトラーの短編集「血を分けた子ども」が刊行される!

    高い評価を受けている作家でありながら、いくつかの作品がSFマガジン等に掲載されたきりで、だんだんと忘れられていくのも「もったいないなあ」ということで、このブログでも、作品の紹介を行ってきた作家の一人が、オクテイヴィア・E・バトラーです。・・・と思っていたところに、昨年、「キンドレッド」が河出文庫で突如出版され、「何で今頃」と思っていましたが(米FXでテレビシリーズ化の準備が進められ、「ParableoftheSower」も映画化されるようですね。本国での評価は高く、人気は根強いのでしょう。)、今度は短編集が出ると聞き、二度びっくりというところです。掲載作品は、今時点では、出版元の河出書房新社のホームページにもまだ載っていませんが、表題作の「血を分けたこども」を筆頭に、「夕べと朝と夜と」、「ことばのひびき」のライ...オクテイヴィア・E・バトラーの短編集「血を分けた子ども」が刊行される!

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