よしのふで

詩 アポローンの夏

蒼穹に消え行く白雲を追いかけ涸れた地に干上がった水を探した薄れゆく自分の存在を確かめたこぼれ落ちる砂を受け止め息づく針の柱の横で両手を空高く差し出すそして見上…

2024/06/13 21:00

小説「恋石(こいし)たちの岸辺」十三、『半神』との出会い

……川は過ぎ去っていく現実の時間だ。石はそれをずっと見続けている。まるで時間の外にいるように。思えば人も社会も学生生活もこの川のように過ぎていく。不登校になっ…

2024/06/11 21:00

詩 酔夢の月夜

森にお寺が浮いていたこんもり繁った梢の上でまあるい月がてらてらと笑っていた寺が啼いたほお ほお ほおこっちにおいで 分けても 分けても そこは森走っても 走っ…

2024/06/10 21:22

詩 ぼくはレミング

＊レミング 大増殖の後に死の行進をするといわれていたタビネズミです。 集団自殺はどうやら迷信らしい  ぼくらはレミング崖下へと集団で疾走する…

2024/06/09 21:00

詩 首狩りロングフットの鎌

宵に木々が鳴ったなら嵐と共に彼が来る教会墓地の土の底から屋根を跨いで彼が来るカツコツ木靴でやってくる気づいたときにはもう遅い振り返ってもぼんやりと煉瓦を照らす…

2024/06/07 21:00

小説「恋石(こいし)たちの岸辺」十二、夜の告白

河原の石たちにはそれぞれ個性がある。それぞれに声がある。それぞれに耳があって、話しかければ答えてくる。天気のいい日は河原で良く読書をした。鮎解禁の頃になると…

2024/06/06 21:00

詩 山風吹く里の歌

空と山とが紡ぎだす 雲の糸の花の下故郷の川はゆるゆると流れ 故郷の道はうねうねと曲がるきみが育った町に野にきっと天狗は生きていて朝と夕には疾風が走る目にも止ま…

2024/06/05 22:00

詩 夏波の航海

夏波私の心は揺れる波何も出来ずにぼやいては明日の潮を考える明日の凪を考える 私は波間に浮かぶ舟右や左に流されて着くべき港も持たぬまま浜を尻目に遠ざかる 波、…

2024/06/04 21:00

詩 街の心臓（City）

この街で過ごした十数年は僕を何者にもすることがなく僕は何者にもなれず変わり続ける街のように寂びれ、一方は開発されていく資本は街の上にも、人の上にも不公平な雨の…

2024/06/02 21:00

小説「恋石(こいし)たちの岸辺」十一、山崎岳という生徒

それからというもの、隼世と夏音はよく話をするようになっていた。ある日のこと、鈴木智史から呼び止められた。同じ演劇部ということもあって隼世は鈴木について行くこ…

2024/06/01 21:00

詩 フーリエと魔法の言葉を

例えば選択の初めその岐路から始められるとして思い通りの人生設計を引けただろうかそれとも同じ過ちを繰り返すだけなのだろうか同じ迷いと 同じ選択 同じ罪を同じまま…

2024/05/31 21:00

詩 生まれたての「さようなら」

きらきらと輝く光の矢で生まれたての町が輝き生まれたての人々が過ぎてゆく陽炎のように、優しい幻のように生まれたての風が僕の耳に囁く生まれてくることは、さようなら…

2024/05/30 21:00

小説「恋石(こいし)たちの岸辺」十、小石のパレード

「でも……あれって女の子が嘘つきじゃあなかったかな。ユーモアとかペーソスとか言われてたけど、最後はなんだが悲しい物語だった気がするな」そう答えながら、すんな…

2024/05/28 21:00

詩 Pure Walk『サヨナラはどこへいくのだろう』

人はいつかさよならするんだってきみはいった今日さよならをしても明日会う人もいれば会わない人もいる人はなぜさよならをいうのだろうさよならをいった後どこへいくのだ…

2024/05/27 21:00

詩 夜の印画紙『夜行列車』

闇夜の列車は淋しそう夜の底へとへばりつき町と町とをつないでも線路の向こうは夜ばかり星海漂う夜ばかり 闇を突っ切る星のよに灯りに集まる虫のよに時間のレールを右、…

2024/05/25 21:00

徒然 蛍の季節には…

実家の近くに地下水が川のように湧き上がって流れている場所があった。熊野神社のちょうど下である。小さな沢の小さな清い流れ。その冷たさときたらじんじんと骨まで伝わ…

2024/05/24 21:00

詩 月夜の印画紙『ホタル狩り』

 ある綺麗な月夜の晩に姉やとふたりでホタル狩り社の水辺にホタル狩り 団扇(うちわ)をかざしてホタルを誘えば畦(あぜ)の蛙が身を投げる沢に沿って川上へ蛍の森へと…

2024/05/23 21:00

小説 「恋石(こいし)たちの岸辺」九、初夏の河川敷、石の言葉

下校時、校門に向かっていると夏音と珠理が何か話し合っていた。言い合っていたのかもしれない。夏音はどうしたのという程度で相手にしていない様子。「隼世。チエシャ猫…

2024/05/22 21:00

詩 Pure Walk 『言いそびれた言葉が落ちてった』

きみが好きだった絵本を借りた背中と背中を寄り添ってきみが背景を ぼくが文字を絡め合った時間はすでに遠く 交わることもなく地球はまあるいんだって言ったきみは時の…

2024/05/21 21:00

詩 夏の坂道

鳥居の見える坂道をどこまで上れば星の町きみを追って来たけれど杉はひょろりと立ち並び社は静かに鎮座して欠けた月こそ静かです 恋しき夏の名残の日々は草むらに歌う虫…

2024/05/20 21:00