●小説「傾国のラヴァーズ」その66・聖名ではなく…
家に着いても、俺はス一ツのままでいた。聖名、ではなく、鈴崎社長にしっかり話をしたいと思ったからだ。聖名のスマホの電源は入らない。結局、言っていた通り、二時間ほどして聖名は帰ってきた。「ただいまー…」玄関のドアが開き、聖名の声がした。意外にも聖名はしらふだった。「ごめんね。断れなくて…あれ?着替えないの?」声は軽かったが、聖名は顔色が悪かった。しかし、俺は立ち上がり、「鈴崎社長、お話しがあります」すると聖名は驚いたように、「ちょっとごめんね。シャワー浴びてから聞かせて」何とも軽い言い方に、俺はますます怒りを覚えてしまった。ふっ、と聖名のものではないような香りがした。それにも俺はどうしてか怒りを覚え、固まった一瞬の隙に、聖名は着替えに自分の部屋に向かってしまい、更には俺の方を見ず、さっさと浴室に向かってしまっ●小説「傾国のラヴァーズ」その66・聖名ではなく…
2023/09/10 23:24