たろとみつのはなし 1
夜が深まると わたしたちが暮らす駐車場は ざわざわと騒がしくなる わたしは子どもたちと待っていた 雨の日も風の日もいつも同じ場所にある 白い大きな車の下で ここがいつものわたしたちの場所 離れて暮らす成長した息子や 近所の森に住む仲間たちもこの時刻になると 丘の上にある病院の だだっ広いこの駐車場に ひたひたと集まってくる まるで月の光からのびる糸に操られた マリオネットのように わたしたち自身とは別の 何か大きな意志に導かれて 今日もこの場所に集まってきた あるものは駐車場の真ん中にじっと佇んで 丸い背中の影が月の光に長く延びて またあるものは生垣に寝ころんで 虫の鳴き声に耳を澄ましている …
2022/03/02 23:23