古城に住まう少女 ~オーバチュア~
「ここが新しいお家うち?」 そう言って、わたしが目を輝かせて見つめる先には、色あせた煉瓦造りの屋敷。 屋敷と呼ぶにはいささか堅牢で、門に連なる塀は高く手前には深い堀。底には川が流れ、時折鯉カルプがピシャリと音を立て飛び跳ねる。 「そうだよ、ここが今日からお前の新しいお家になるんだ。エミリ」 門前の橋を渡りながら、幼いわたしの手を取り答える父。 「お友達もいっぱい出来る?」 「ああ、もちろんだとも。エミリがいい子にしていたらな」 「わたし、いい子にしてるよ。ね、ママ?」 「あなた」と後から日傘を差した母が呼び止める。 「なんだイザベル、浮かない顔して」 「わたくし、このお屋敷が気味悪くて……だっ…
2016/01/21 18:30