知らぬ間に失われるとしても(39)
圭一の口が離れ、代わりに手が何度か屹立をゆるく扱く。その手も離れて圭一が動く気配がしたので、旭は目を開けた。 ベッドの下に手を伸ばした圭一が、何かを取り出す。「……何?」「ジェル」「買った?」「うん」 柏崎に教えてもらった、と圭一が呟くように言いながら蓋を開ける。見上げていた旭と目が合うと、少しだけ笑って顔を近付けてきたが、何かに気付いたように途中でやめた。 やっぱり柏崎くんはもう知ってるのか。旭はしばらく会っていない友人のことを思い出した。圭一とのことを話そうと思ってい
2021/06/30 23:01