早逝の詩人・矢沢宰「光る砂漠」
風があなたのふるさとの風が橋にこしかけてあなたのくる日を待っている少年光る砂漠影をだいて少年は魚をつる青い目ふるえる指先少年は早く魚をつりたい小道がみえる……小道がみえる白い橋もみえるみんな思い出の風景だ然し私がいない私は何処へ行ったのだ?そして私の愛は(絶筆)作品「風が」は、風が擬人化されたシンプルな短詩で、作中の〈あなた〉は矢沢宰自身でしょう。長い療養生活の中で彼は幾度も故郷へ想いを馳せたに違いありません。遺稿詩集『光る砂漠』のタイトルは、「少年」の詩の一節から採られました。作者は魚釣りを愛好していました。しかし、砂漠で魚を釣るとは、実に矛盾した光景です。〈光る砂漠〉とは、川面の光り輝く波紋が、砂漠の波紋に似ていることから発想したといわれています。一滴の水もない砂漠と川という相反するイメージの対比が、緊張感...早逝の詩人・矢沢宰「光る砂漠」
2021/03/20 09:29