蛇口から出る水を手でじゃぶじゃぶ受けていると、先日訪れた上流のダム湖が目に浮かんだ。 あそこからここまで流れる道を作ってくれた人がいたんだ。 土を掘って、パイプを通してくれ...
北海道の自然の中で生まれ育った私の心は、子どもの頃と今を行ったり来たりしながら、本当の幸せについて思いを廻らせています。 そんな日々の思いを綴ったエッセイ集です。
1件〜100件
少し前に、安全地帯の歌について書いたので、今回もそれにあやかったタイトルにしましたが、歌詞には関係のない内容です。ごめんなさい。 「じれったい」のは、カポックの開花までの道の...
平面上で指を動かすだけで、ほとんどのことが調べられる。 既知、未知を問わず沢山の人とコミュニケーションが取れる。 ぼんやりする時間など作らないほどに、数えきれないほどの娯楽...
「同じ空の下」で検索すると、高橋優さんをはじめ、「名前がかぶってごめんなさい」と謝るしかないレベルで、才能溢れる皆さんの曲や作品が表示されます。 サイトを立ち上げたのが201...
大げさに表現するとこうなりますが、つまりは「風」のことです。 大人になって、ふと気づきました。 風の強い日が苦手です。 そんな話を、以前友人にしたら、 「何事にも動じなさ...
最近になって、土曜日が「0点の日」になることが増えました。 「休日のルーティーン」と呼んでいた掃除や雑務など、気が乗らないことはやめにして、やりたいこと(中でも生産性のないこ...
桜が咲き誇って迎えた年度はじめは、みんな、その花のようです。 新しい環境でも、そうでなくても、笑顔で挨拶を交わし、新鮮な気持ちでお互いを受け入れ合っている風景。そこに立ってい...
「捨て去る時には こうして出来るだけ 遠くへ投げ上げるものよ」 さだまさしさんの、「檸檬」。サビの部分です。 この歌詞に心を動かされたのは10代の頃で、別れ際に見せる、こんな...
太陽の動きが気になる時季になりました。 明日は春分の日です。 今年は3月21日ですが、あらためてこの日になった理由を調べてみようと思い立ちました。 よく言われるのは、「昼...
「愛」の字に 込めた想いは 時を経て 永遠(とわ)と刹那に 分かれてゆけり nanaefree 作 昨今のニュースに、...
たった今、この子に あらん限りの愛情を注いだら ひとの痛みを分かる子に育てたら 世界中のみんながそうしたら 40年先には、平和な世界が実現しているかな 私たちが今見て...
車を運転していて、後ろを走っていた車が脇道に入ったなと思ったら、その道の先で前に割り込んでくる。なんだかムカっとする。目の前で信号が変わって、私だけ止まる羽目になったなら、なお...
散歩をしていて、思い出しました。 子どもの頃は、こんなことが嬉しかったのです。 生まれ育ったところでは、土の黒や、そこから芽吹く緑色を久しぶりに見るのは、4月の半ばになって...
「お母さんのことを一番分かっているのは、お姉ちゃんかもしれないけど、おれが一番、お母さんのことを“想って”いるんだよ。」 長男が、小学校の高学年のある日、私と長女の会話に入っ...
カポックの花芽に、びっくりするくらい変化がない。 零度を下回る朝も多いので、こんなものだったかもしれない。 25年前を思い出してみる。 あの年は、春の異動で引っ越しがあっ...
今日もまた、心が狭い…。 左の隣家のエアコンの排水が、こちらの方へ流れてくる。 窓から離れているとはいえ、我が家の前を横切った水は、反対側の排水溝へと流れていく。 そちら...
曇りなき眼で見定め、決める。 映画「もののけ姫」で、アシタカが言ったこのセリフが好きです。 DVDまで買って、子どもたちと何度も観ましたが、観るたびに、この言葉がずしりと重...
昨年末に、ベランダに置いているカポックに花芽が付いているのを見つけました。 30年育てていて、2回目です。 この前は…と、子どもたちの年齢で計算してみたところ、何と25年前...
大晦日です。 たいそうな事はしていませんが、新年を迎える準備はできました。 昔…私が子どもの頃は、お正月を前に、毎年「たいそうな事」をしていて、慌ただしかったのを覚えていま...
「夢のお告げ」というようなものを、そこそこ信じています。 これまでで一番感謝している夢は、大きなヘビが何匹も、次々に鎌首をもたげて、うねりながらこちらへ這って、近づいて来ると...
もうじき冬至を迎えます。 「太陽の誕生日」とはよく言ったものです。 南中高度が一番低くなる日。つまり、ここからまた高く仰ぎ見る太陽へと転じていくのです。 でも、日の出や日の...
子どもの頃のクリスマスツリーは、イチイの生木でした。 12月のある日、学校から帰ると、居間の隣の部屋にそれが“ドン!”と置いてあって、姉たちと飾り付けをするのが恒例でした。 ...
ふと思った。 若いって、迂回するのも楽しいと感じる、余裕があるものなんだなぁ。 答えが半ば見えているのに、まだ悩んでいる。 AでもBでも、結果はそんなに変わらないだろうに...
「された」ことには、誰でもすぐに反応して、相手に対して怒ったり、他の誰かに訴えたりします。 一方、「してもらったこと」というのは、すぐに気づけない場合が多くて、ずっと後になっ...
「愚図は嫌いだよ!」 これは、ジブリ作品「天空の城ラピュタ」の、ドーラのセリフです。 この場面を見るたびに思います。 「私も愚図って嫌いだな。」 私が嫌いな“愚図”とは...
昨日、自分の大腸の内壁を見た。 子どもたちが使う言葉を借りると、“つるピカ”だった。 よく耳にする“宿便”なるものも一切なく、学生時代に生物で習った“柔突起”で覆われている...
仕事をしていると、相手は人なのですから、苦情を寄せられて、それに対応するのは使命のようなものです。 それにしても、苦情を言う人というのは、してもらったことよりも、してもらって...
このブログを開設して一年が経ちました。 当初から、週末に一度の更新ペースでしたが、昨年の今頃は、その度に頭を抱えていました。 「画面がイメージ通りに配置できない!」 「こ...
子どもが三人もいると、頼み事をしやすい子が一人はいるものだ。我が家の場合、それは長男。 長女のように言葉巧みに逃げる器用さもなく、末の息子のように頼りなくもない。 そうやっ...
今朝、何かがリセットされた 日曜日だというのに、6時半に目が覚めた ベランダに飛んできていた枯れ葉を片付けた 土曜日の恒例行事にしている掃除を、早い時間に終わらせた シ...
ロードオブザリングでは、邪悪の象徴だった二つの塔。 我が家の物入れでは、決して悪ではないけれども、常に頭を悩ます種だった二つの塔。 130cmくらいのが二つ。重さはきっと1...
周囲を見回しても、テレビの報道番組を見ていても、なんだかみんな、自分の事情を語りすぎです。 こんな時期ですから、何かしらの事情を抱え、折り合いをつけながら生活しているのはみん...
最近、「収納術」という言葉をよく耳にします。 発想に感心してしまうアイデア製品や技術、見た目に可愛らしい小物など。 自分で暮らしをコントロールして形づくるわけですから、毎日...
そもそも、私が大量の写真整理やアルバムに悩まされる原因となったのは、元夫…。子どもたちの父親でした。 写真好き、カメラが趣味という人は世の中にたくさんいますが、元夫の場合は別...
子どもたちが生まれてからのアルバムは五十数冊…というところでしょうか。1冊に200枚くらいの写真が貼ってあるので、一万枚は軽く超えている計算になります。 十五年足らずでそうな...
最初に手がけた、一番古いアルバムに貼られていたもののほとんどは、祖父が撮ってくれたモノクロ写真でした。 私は、小さい頃から、このアルバムが大好きで、写真を撮ってもらうたびに好...
1つ目に開けた包みに入っていたのは、私が子どもの頃の古いものから、子どもたちが生まれる直前までのアルバム4〜5冊でした。 そこで、私は最初の決断をしました。 中学生以降の写...
厚手の台紙のアルバムが、60冊! 写真が200枚くらい貼ってあって、1冊につき約2kg!総重量は…。 私たちが引っ越しする際に、ひときわ手を焼いた“財産”です。 それでも...
子どもたちを三人とも連れてこちらへ来ると決めたことは、周囲には当然、無茶と思われていました。 中学生と、小学生が二人。 義務教育中とはいえ、経済的負担は大きいと覚悟しなけれ...
孫がもうすぐ一歳になります。 娘が毎日のように写真や動画を送ってくれるので、日々の成長をほとんど見逃すことなく、目を細めて見守ってきました。 娘が生まれた頃は、セクハラやマ...
暑い夏の日の午後、頬に汗を伝わせて子どもが帰って来た。 「かき氷が食べたい。」 の声に、台所の隅からかき氷器を持ち出す。 白く眩しく削げ落ちてくる氷には、「削り氷」という名が...
昨日、洗濯機のフタを開けたら、雪景色だった。 洗濯物の底から、メモ帳の表紙と半分程残った用紙の束が出てきた。多分、再生紙で、他は見事にこなごな…。 そしてそれは、息子が仕事...
虫採りが大好きな女の子は、やがて3人の子どものお母さんになった。 虫採りが大好きだったお母さんの子どもたちは、みな虫採りが大好きな子に育った。 夏が近づくと、子どもたちの血...
その日、15年使い続けていたガラス製の麦茶ポットの底があっけなく抜けた。冷蔵庫のドアポケットから出そうとして、隣にあった別のガラス瓶とぶつかったときだった。 いっぱいに入って...
あなたには 幸せになってほしいから 遠くで手を振るだけの人になる これも、数年前に新聞の歌壇に載った一首です。 (多少の記憶違いはあるかもしれません) 失恋の歌のようでもあり...
蛇口から出る水を手でじゃぶじゃぶ受けていると、先日訪れた上流のダム湖が目に浮かんだ。 あそこからここまで流れる道を作ってくれた人がいたんだ。 土を掘って、パイプを通してくれ...
5月の下旬に差しかかったある朝。 その日は5時半ちょうどに起き上がった。 それは、40年前に私が生まれた日時だった。 毎日だいたいこのくらいの時刻に起きているのだが、その...
向かいの家では、幼なじみの大きな鯉のぼりがゆうゆうと泳いでいました。 私は家の周りや田んぼのあぜ道を歩き回り、溶け残った雪を割ってふきのとうが顔を出すのを手伝っては、「春の精...
年度の初めはいつも忙しくて、気付くと「とっちらかした」生活をしている。 一つの仕事が終わらないうちに次々と新しい課題が横から差し挟まれ、そらに気を取られていると順調だった仕事までこ...
末の息子は背伸びをする。 三つ上の兄と対等に渡り合いたくて。 並外れた運動神経。アイデアあふれる創作力。当然のことながら、いつも遥か上を行く姿を見上げて、悔し涙を流す。 「...
母の背に負われて橋を渡った。 田んぼのあぜ道を歩き、用水路を越えようとしたとき、そこには幅の狭い板が渡してあるだけだった。母は先に渡ってしまい、手まねきをしていたが、私は怖く...
義父が亡くなったと知らせを受けたときは、離婚から7年経っていました。 その間、離婚の事実は双方の両親をはじめ、親戚には一切知らせることなく、離れて暮らしてはいるものの、家族で...
この春、三人の子どもたちそれぞれにクラス替えがあった。この地に引っ越して来てまだ半年。ここでまた、新たな友だち関係を作り直すのは酷だなと心配していたが、どの子もあっさりと受け入...
末の息子の手を引いて、近くの駅に向かう。息子はうつむき加減に歩き、ときどき立ち止まって、 「お母さんも一緒に行ってほしかった。」とぐずる。 私たちはそれぞれ逆の方向行きの電車...
12月の半ばを過ぎたある日、鳴った電話を取ると、聞いたことのない男性の声は、知らない姓を名乗りました。 「私の妻は、お宅のご主人と数ヶ月前から親しくなり、今回ご 主人が海外に行...
あの人はその日も、遠くを見る目で懐かしそうに思い出話を始めた。 この時季に山に行くと、真っ白でこんな形の花びらをした花が、雪のように咲いていたものだと。 その指は、細長いひ...
子どもの頃、私には速く走れない人の気持ちが分からなかった。頭の中で描くリズムに合わせて手足を動かすだけ。それだけで、他の子を置き去りにして走ることができた。 運動会では、毎年...
天使はほんとうにいる。 それはある日、私の耳元で囁いた。 「しんやだよ。し、ん、や。」 はっと目が覚めた。子どもたちを寝かしつけているうちに、うとうとしたのだった。 横に...
夫の実家を出る決心をしたとき、できるだけ遠くへ行きたいと思いました。 北海道内には知人が点在していて、触れられたくない部分を話さなければならなくなる状況を作りたくありませんで...
ここへ来る前は、北海道の夫の家で、夫の両親と同居していました。 夫は自分が忙しいのが大好きで、国内だの、海外だのを飛び回っていてほとんど家に帰りませんでした。それなのに、帰るときに...
靴の中には秘密が隠れている。 靴の持ち主さえも多分それに気付いていない。 そして、それらの秘密は誰にも気付かれることなく、履き古された靴と一緒に捨てられるのが常で、知らない...
前をすぐ上の姉が歩いていた。私はそのランドセルに顔を押しつけたままつかまり、泣きながらついて歩いていた。吹き荒れる風で、涙も鼻水も雪と混ざり合って顔に凍りつき、冷たさと痛さ、そ...
思い出を文にしようとすると、ついつい冬のことが多くなってしまします。 でも、誰もが知っている通り、北海道には素晴らしい夏があります。 いつまでも肌寒くて実感が薄いけれど春もあります...
冬になると、母は街の木工場へ勤めに行った。 子どものころには知らされていなかったが、当時は不作が続いたり米の値段が安かったりと、我が家の生活は苦しかったのだという。 母は朝早くに出...
初詣には二度行きました。その場合、二度目の方は初詣とは呼ばないのかもしれませんが…。 近所に、遠方からも参拝者が来るような大きな神社があり、お札も頂いているので、そこが氏神様...
窓からハルが家の前の雪をかいているのが見えた。雪は後から後から降っていて、その姿は白く霞んで見えた。 ハルを見るのは久しぶりのような気がした。そして、とても遠く見えたのは、雪...
子どもを叱るのは難しくて、気がつくと私は怒っている。3人の中でも、特に長男は、行動の幼さや物の管理の悪さがきっかけにとなり、さらに、黙って話を聞き続けている神妙さが私の怒りを助...
とても疲れる会議があります。 話し合っても議論が進まず、ときに話題がそれてしまう。最後には時間切れで終了するしかなく、時間をかけた割には、結論が曖昧なままで、共通理解はできた...
小学生だったある日、長男は親友ともいえる友達とけんかをして帰って来た。我が家の末の次男も含めてサッカーをしていて、その友だちの蹴ったボールが弟の腹に当たり、謝れだのどうのともめ...
拾い集めた落穂を握りしめたまま顔を上げると、太陽がすっかり沈んだ西の空は済みやかな赤色に染まっていた。 稲束を干し終えた稲架(はさ)に沿って歩き、落ちている穂を拾って、ひと握...
「なるほどなぁ、と思いましたよ。」 長男が小学校に上がった春の家庭訪問で、担任になった朗らかな先生はそう言って笑った。 ひらがなの学習に入ったばかりの国語の時間に、一番最初の...
やっと涼しくなり始めた10月の夜に、北海道の実家から電話があった。祖父が亡くなった。 おどろかなかった。少しほっとしたような気持ちもした。これでやっと、苦しまなくて良くなったんだ...
湯船から、長男の声がした。 「むかーし、むかし。桃が流れてきました。」 私は洗い場で髪を洗っていた。シャンプーが目にしみるのを気にしながら、薄目を開けて声のした方を見ると、ち...
私が小さい頃には曽祖母がいて、よく思い出話をしてくれた。 北海道の原野を開拓して農地を広げた話。 その近くに元々住んでいた、言葉の通じない民族の突然の訪問にひどく驚いたあま...
私が子どもの頃、時間はゆっくりと流れていた。なぜ、放課後から日暮れまでの数時間で、あんなにたくさんのことができたのだろうと思うほどに。 田舎育ちの私の周りは、発明の材料に満ち...
仕事上の研修を受けていて、心を揺らされる言葉に出会いました。 それは、「見捨てられなかった思い出」。 そのときの講師の方が、以前先輩から聞いたという話です。 子どもの頃、...
子どもの頃の私は、北海道の大自然に包まれながら、家族の愛を一身に受け、好奇心の赴くままに、生きている事を全肯定されて育ちました。 ひいき目に見ても、可愛らしいとは言えない見た...
「同じ空の下」 これは、大好きだった祖父が亡くなったときに、葬儀に駆けつけられない自分を慰めた言葉です。北の地平に近い空を見つめて、あの青のどこかは、静かに眠っている祖父を見...
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蛇口から出る水を手でじゃぶじゃぶ受けていると、先日訪れた上流のダム湖が目に浮かんだ。 あそこからここまで流れる道を作ってくれた人がいたんだ。 土を掘って、パイプを通してくれ...
5月の下旬に差しかかったある朝。 その日は5時半ちょうどに起き上がった。 それは、40年前に私が生まれた日時だった。 毎日だいたいこのくらいの時刻に起きているのだが、その...
向かいの家では、幼なじみの大きな鯉のぼりがゆうゆうと泳いでいました。 私は家の周りや田んぼのあぜ道を歩き回り、溶け残った雪を割ってふきのとうが顔を出すのを手伝っては、「春の精...
年度の初めはいつも忙しくて、気付くと「とっちらかした」生活をしている。 一つの仕事が終わらないうちに次々と新しい課題が横から差し挟まれ、そらに気を取られていると順調だった仕事までこ...
末の息子は背伸びをする。 三つ上の兄と対等に渡り合いたくて。 並外れた運動神経。アイデアあふれる創作力。当然のことながら、いつも遥か上を行く姿を見上げて、悔し涙を流す。 「...
母の背に負われて橋を渡った。 田んぼのあぜ道を歩き、用水路を越えようとしたとき、そこには幅の狭い板が渡してあるだけだった。母は先に渡ってしまい、手まねきをしていたが、私は怖く...
義父が亡くなったと知らせを受けたときは、離婚から7年経っていました。 その間、離婚の事実は双方の両親をはじめ、親戚には一切知らせることなく、離れて暮らしてはいるものの、家族で...
この春、三人の子どもたちそれぞれにクラス替えがあった。この地に引っ越して来てまだ半年。ここでまた、新たな友だち関係を作り直すのは酷だなと心配していたが、どの子もあっさりと受け入...
末の息子の手を引いて、近くの駅に向かう。息子はうつむき加減に歩き、ときどき立ち止まって、 「お母さんも一緒に行ってほしかった。」とぐずる。 私たちはそれぞれ逆の方向行きの電車...
12月の半ばを過ぎたある日、鳴った電話を取ると、聞いたことのない男性の声は、知らない姓を名乗りました。 「私の妻は、お宅のご主人と数ヶ月前から親しくなり、今回ご 主人が海外に行...
あの人はその日も、遠くを見る目で懐かしそうに思い出話を始めた。 この時季に山に行くと、真っ白でこんな形の花びらをした花が、雪のように咲いていたものだと。 その指は、細長いひ...
子どもの頃、私には速く走れない人の気持ちが分からなかった。頭の中で描くリズムに合わせて手足を動かすだけ。それだけで、他の子を置き去りにして走ることができた。 運動会では、毎年...
天使はほんとうにいる。 それはある日、私の耳元で囁いた。 「しんやだよ。し、ん、や。」 はっと目が覚めた。子どもたちを寝かしつけているうちに、うとうとしたのだった。 横に...
夫の実家を出る決心をしたとき、できるだけ遠くへ行きたいと思いました。 北海道内には知人が点在していて、触れられたくない部分を話さなければならなくなる状況を作りたくありませんで...
ここへ来る前は、北海道の夫の家で、夫の両親と同居していました。 夫は自分が忙しいのが大好きで、国内だの、海外だのを飛び回っていてほとんど家に帰りませんでした。それなのに、帰るときに...
靴の中には秘密が隠れている。 靴の持ち主さえも多分それに気付いていない。 そして、それらの秘密は誰にも気付かれることなく、履き古された靴と一緒に捨てられるのが常で、知らない...
前をすぐ上の姉が歩いていた。私はそのランドセルに顔を押しつけたままつかまり、泣きながらついて歩いていた。吹き荒れる風で、涙も鼻水も雪と混ざり合って顔に凍りつき、冷たさと痛さ、そ...
思い出を文にしようとすると、ついつい冬のことが多くなってしまします。 でも、誰もが知っている通り、北海道には素晴らしい夏があります。 いつまでも肌寒くて実感が薄いけれど春もあります...
冬になると、母は街の木工場へ勤めに行った。 子どものころには知らされていなかったが、当時は不作が続いたり米の値段が安かったりと、我が家の生活は苦しかったのだという。 母は朝早くに出...
初詣には二度行きました。その場合、二度目の方は初詣とは呼ばないのかもしれませんが…。 近所に、遠方からも参拝者が来るような大きな神社があり、お札も頂いているので、そこが氏神様...
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