飯田木工所の赤木さん--16

飯田木工所の赤木さん--16

しばらくすると工場の質とでもいうか、どんな工場にも品を作るランクみたいなものがあって、過去にものづくりを経験した幸平にはそれがある程度判るのだが、それでなくとも、誰にだってそれがきちんとした職人の手になるものか否かは見れば大体は判るものだ。 この工場では図面から物を組み立てられる人は眼鏡のオヤジ、つまり鈴木さんしか居なくて、彼は他とは独立した関係のない物を作っていた。工場から給料をもらっている形ではなさそうで、故に専務から尊大にされない存在だった。専務と言っても鈴木さんからみれば子供に近い若造だからそれも当然なのだが、ややこしい図面の仕事がくると鈴木さんでないと話にならないのだろう。山ちゃんや…