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まいどー! 有田川ダム上の柴崎おとり店です(^^)/ http://livedoor.gabacha.net/

和歌山県有田川ダム上で鮎釣りの遊漁券とオトリ鮎を販売しています。 いつでもお気軽にお立ち寄りください(*‘ω‘ *)

柴崎おとり店
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2020/02/16

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  • 安田川 その22

    二人はまた休みごとに鮎釣りへと通い始めた。 慎也が天才鮎釣り師に戻るまでに時間はかからなかった。が、慎也は以前の慎也に完全に戻ったわけではなかった。 あの出来事以来、慎也は極端に口数の少ない男になってしまった。 慎也が自分から口を開くことはまずない。

  • 安田川 その21

    隆人は自分の責任を感じていた。 雅は気の多い女だったのだ。 そのことは釣具店の若い店員からも聞いたことがあったし、彼女が何度か違う男と歩いているところを見かけたこともある。 慎也に早い段階で忠告しておくべきだった。  慎也は建設会社を辞めて寮を出た。 田

  • 安田川 その20

    慎也は日に日に痩せ細り、仕事も鮎釣りも手につかなくなった。「オレもう駄目かもしれん・・・・・・」 電話の向こうで慎也の弱々しい声が隆人に届いた。 すぐに大学病院の看護士が電話を替わる。 看護士の話では、慎也はナツメグを大量に摂取して自殺を図り病院に搬送された

  • 安田川 その19

    隆人も雅に好意を持っていたが、慎也が相手なら仕方がない。 ただ、一方の隆人にも彼女が出来ていた。 叔父の宅配会社に勤める同い年の女だ。 実はその女も慎也に一目惚れをして隆人が相談に乗っていたのだが、慎也の方がいっこうに取り合わなかった。 雅にぞっこんな

  • 安田川 その18

    鮎釣りでの諍いは鮎釣りの釣果で解決をするという理屈を慎也は冷静に考えていたのである。 ただ、その事がわかっていても確実に相手の理不尽な行動を制止できるほどの圧倒的な釣りを見せつけられるかどうかは、よほどの技量と自信がないかぎりは行動には移せない。 隆

  • 安田川 その17

    男らは釣れる場所を五人で占拠して、大声で冗談を言ったり笑ったりしながら騒いでいた。 隆人には直ぐに細川囮店の連中だとわかった。細川達也本人の姿はない。 鮎釣りには暗黙のルールがある。 それは、他人の釣っている場所を横取りしないと言うことだ。 ある場所で

  • 安田川 その16

    慎也は照れながら会釈をしている。 隆人は、荒川名人のその様を見逃さなかった。 荒川名人は慎也の顔を見て誰かを思い出したに違いない。 それは恐らく慎也の父親なのではないだろうか。 刹那、荒川名人に後で訊いてみたいという気も起こったが、やはり鮎釣り界の重鎮

  • 安田川 その15

    慎也も気付いたようだ。 近畿地区大会で優勝した細川達也だった。 同じ有田川町出身で、慎也の実家から五キロほど下流で囮店を営んでいた。 歳は慎也より二十歳程も上だ。 細川は予選で敗退し既にティシャツに着替えていた。 細川は全国大会に四回も出場した腕前だが

  • 安田川 その14

    瞬く間に二時間が過ぎた。 慎也は十二匹釣って同数で二十五位にくい込んでいる。「十二匹で二十五位タイの選手が六人います。ただいまより重量判定で一番目方の重い選手を勝上がりとします」 審判からアナウンスがあると会場からどよめきが漏れた。 暫く時間が経って放

  • 安田川 その13

    「慎也、お前もそろそろ着替えなあかんで」「ああそうやな」 二人は急いで車に戻った。 出場選手らが続々と鮎釣り姿になって河原に出てくる。「慎也見てみいっ。あれ中村名人やで」「うん、その横は津本名人やな」 慎也も興奮気味だ。 雑誌でしか見たことのない名人がそ

  • 安田川 その12

    馬瀬川に到着したのは夜中の三時だった。 真っ暗な河原に目を凝らすと沢山の車が止まっていた。「すごい車の数やで」 そう言って、隆人は車から降りた。「全部で百人ぐらい参加者がいるって案内には書いてたな」「オレは地区大会でも勝てんのに、例えまぐれで地区大会で

  • 安田川 その11

    隆人は、母と祖母が話していたことを思い出した。 大阪から囮鮎を買いに来た常連客の中の誰か。 やはり慎也の父は鮎釣りをしている人なのだ。 だが、有名になったらわかるとはどういう意味なのか。 隆人が疑問に思うと慎也が続けた。「俺はその時はお母ちゃんの言って

  • 安田川 その10

    高校を卒業すると、慎也は和歌山市内の建設資材を取り扱う会社に就職した。 社員寮も完備された大きな会社だった。 隆人は公務員試験に合格できずに就職浪人の身となっていた。 しばらくはそのまま叔父の家に下宿して宅配を手伝うことになった。 同じ和歌山市内に住む

  • 安田川 その9

    慎也は祖父母や先生からの説得で、何とか高校受験をすることになった。 ただし、それは第一志望の和歌山市内の工業高校ではなかった。 実家からバスで通える有田市内の普通高校だ。 家計のことを気遣ったのだろう。 和歌山市内となると下宿代など何かと経費が嵩む。

  • 安田川 その8

    自分とて幼い頃から慎也と一緒に囮鮎を購入する釣り人達のことをずっと見てきた。 大阪から車で乗りつけた釣り客には、若い大人もいたし年配者もいた。 まさか、あの中に慎也のお父さんがいたのだろうか。 隆人は思いもしなかったことを聞いて我が事のように動揺した。

  • 安田川 その7

    「隆人は受験丈夫やろうかねえ」 祖母の心配そうな声だった。「まあ、今のところは何にも言ってないからねえ。慎ちゃんの影響で受験せんとか言いだしたら絶対説得せんといかんけど。それにしてもこんな受験の時期に大変なことが起こったもんやわ。あの元気な佐知恵さんが急

  • 安田川 その6

    慎也は小学校四年になると生け簀から囮鮎をすくうようになった。 隆人も時々やらせてもらったが、慎也のように上手くはできなかった。「ボク上手やなぁ。お父ちゃんに習うたんかあ」 釣り客からのそんな問に慎也は無言で首を振った。 そんな様子を隆人は側で黙ってみて

  • 安田川 その5

    友釣りは、囮鮎が元気かどうかで釣果が左右されるため、釣り客は囮鮎を弱らせないよう素早く行動しなければならない。 鮎の友釣りは一風変わった釣りである。  他の川釣りや海釣りとは原理が違う。 一般的に釣りと言えば、ハリに付けた餌を魚に食わせて釣り上げるもの

  • 安田川 その4

    杉原隆人の記憶の一番最初に高瀬慎也がいる。 家の前の河原で一緒に雑魚釣りをしている風景が隆人の頭の中にはっきりと残っていた。 家が隣同士だったので学校に通うのもずっと一緒だった。 お互いが朝どちらかの家に行って誘っては登校した。 慎也には父親がいなかっ

  • 安田川 その3

    翌年、好子は女の子を出産した。 だが、鈴木には他にもう一人女がいた。有田川上流にある鮎囮店の高瀬佐知恵である。鈴木は和歌山県南端の串本に住んでいたが、夏場になると紀伊半島の川を鮎釣りで転々としていた。そんなことで鈴木は佐知恵と知り合ったのだ。そして、佐

  • 安田川 その2

    その夜、交流団の懇親会が行われた。 好子ら村の女は懇親会の準備やまかないについた。 その喧騒たる宴会の最中に鈴木と好子は二人で会場からこっそりと抜け出した。 和歌山団が消えた鈴木を捜し始める一方で宴の騒ぎは大きくなっていた。「伐倒で勝った言うていきがん

  • 安田川 その1

    高知県東部に馬路村という小さな山村がある。村の八割が国有林で成り立っている村だ。昭和三十四年の春、その村に林業技術交流団が訪れた。団は和歌山、奈良、京都の三つ、そして主催の高知を入れた四団である。林業技術交流団は、その名のとおり林業の技術交流を目的とす

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