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  • 工匠文化論:火知りと日知り

    貨幣や政治のシステム、そして文字によるリテラシー、宗教に至るまで、従来の国家と民族中心の歴史観は、いわゆるウェストファリア条約から、1750年代に始まり二度の大戦へと200年弱続く「長すぎる19世紀」において構築されたものである。この間は、王権や宗教権力によって抑圧されていた商工階級が文字による歴史や文学を主導し、迷信に染まっていた信仰と理知的な科学を分離し、民主主義や資本主義経済の様々なシステムを考案した時代であるとされる。 そして、ヨーロッパ諸国が全世界への海洋へと進出し、植民地や博物学的な研究をも独占した。宣教活動によって普及した「紀元」は、地質学・考古学・物理学の進展により、キリスト教…

  • 歴史の夢・ロマン・謎:信用ならない語り手にすぎない、歴史学の直視しがたい現実としての

    歴史に夢とロマンと謎はつきものである。これはいい意味で言っているのではない。プロの研究者でもアマチュアの歴史家でも、知らず知らずのうちに、 ●自己投影、アナクロニズム ●勧善懲悪、陰謀史観 ●テーマの束縛、専門化 ●権威主義、タブーの無視 などといった問題を棚上げにして、夢やロマン、謎という虚構で一般読者の関心を惹こうとしてきた。おおよそ社会的な発言力や影響力を得た壮年・中高年になってからでは、学んだ歴史観、そして研究上のインプットとアウトプットを軌道修正するには遅い。 この弊害は、歴史研究そのものにたいして、研究者とそれ以外の人間のあいだで温度差、認識の隔たりを生んでいる。一般的な認識として…

  • 人文探しの旅:大阪・奈良

    かねてより人文探しの旅をしてみたかった。自分探しではなく、古本集めと古代史のフィールドワークを兼ね、国内を回り、現代の地域振興に役立つ情報を収集するれっきとしたプロジェクトである。 一日目 出発は大阪の天王寺。そこから阿倍野を下り、南田辺の古書店「黒崎書店」を目指す。目当てはインドと中国の天文知識の交点、「宿曜」の本である。また、一帯は太子信仰や物部氏、安倍晴明にゆかりの深い地域である。太子の手下が大蛇を斬り殺した桃ヶ池(股ヶ池)など、 目当ての古書を確保したあと、八日えびすで知られるという山阪神社に詣でた。そこから針中野まで歩き、近鉄で柏原市まで向かう。手始めに石神社や弘法水を見て回る。高尾…

  • 歴史地理、物質民俗、音・光・香り……史学の新視点

    これまでわたしは、「農耕社会の成立史」のように編集されてきた伝統的な史学から、鍛冶や鉱山師などの職人の歴史を抽出し、水銀朱や鉱石、岩石の加工と特有の信仰とのむすびつきを考えてきた。 「農耕社会の成立史」であるところの、理性や精神の発達史観からすると、農耕にむすびつく食欲や性欲などの直接な欲望の充足から「ほど遠い」、いわば余分なこれらにまつわる説話伝承は、脈絡を追うことは困難であり、単なる迷信や虚構、想像力と解釈されている事例が少なくない。さらに産業革命による機械化・都市化も手伝い、多くの人の手がかかっていた職人仕事や鉱山労働、土木治水工事などの意義が変化し、農耕や日常の市民生活から分離した。 …

  • 「蝦夷」、境域の民たち:西国との交易・文化的関係をかんがえる

    蝦夷の歴史は「境域」の歴史と捉えるべきと思う。 明治以降の古代東国史研究は、蝦夷対和人という民族対立、支配や隷属という階級対立の歴史として考えられてきた。それは江戸時代から続くアイヌとの交易だったり、北海道の入植という内政問題とも密接にかかわってきたし、コロポックル論争などから端を発する先住民問題にも入り組んでいる。そのほかにも縄文人と弥生人というよく知られた類型や、東北以西のアイヌ語地名説、マタギなどの狩猟文化など、学界の定説、俗説を問わず近代の蝦夷観が波及した例は枚挙に暇がない。 そして多くの説が、アイヌ=蝦夷=縄文人、和人=渡来人=弥生人のような図式を当てはめ、北海道や東北の文明化や近代…

  • 説話研究の意義

    説話の研究は、じつに多面的な意義をもっている。 まず一つは、言語の構造の研究である。これまでの言語研究では自立して成立しうるかのような、文法的な側面がクローズ・アップされてきたが、言語は人と人とのあいだにはたらきかけ、あるいは生と死のあいだを仲立ちするものであるべきであり、その内容物たる物語のおよぼす影響は社会において計り知れないものである。 たとえば時制の標示やものごとの位置関係、数などの順序といった文法的な表現は、言語学者の考えている以上にひとを拘束する。こうした構造への考察を純粋に突き詰めていった結果が「法学」なり「数学」といった解釈の手立てへと結実している。善悪などそこでもなお解決でき…

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