隣りの芝生は青い、とは限らない

隣りの芝生は青い、とは限らない

「例えばだよ、東京に二十年住んでいて、一度も外に出たことがない人がこの景観を眺めたらどう感じるんだろうね」 橋を渡っていた時、スウェーデン人男性の声が明瞭に響いて来た。中高年の二人組の一人の声であった。 私は一瞬歩きを止めた。通常、赤の他人の会話には注意を払わないが、やはり自国に関する名称が聞こえると聴覚が過敏になる。 日本人である私の姿が彼らの視界に入り込んだのか、おそらく違う。 この場所は市の中心からはかなり離れている。円安に起因してか、最近海外にて日本人を見掛けることは、残念であるが滅多にない、増してはここは国際的に有名な観光地でもない。 二人組が立