秋の夕空、金色、はんぶんこ
彼女が安っぽい単層ガラス窓をガラリと開けると、ひやりと清涼な空気が部屋の中に入ってきた。 「ふーっ、生き返るー」 揺れたカーテンが風といっしょに彼女の頬をかすめたので、彼女は思わず笑みをこぼした。 ──空気が酸っぱい黒ずんでいると散々な言われようの大都会・S宿にも、当然ながら秋は来るし、まれに清涼な空気が流れる時もある。 今日はまさにそんな日で、彼のマンションの窓から顔を出した彼女は、気持ち良さそうな顔をして窓の外を見ていた。薄い青紫の空の下にはもう夜景めいたビルの窓明かりや車のテールランプが見え始めている。 「……もっと早く開ければよかったです」 彼女が苦笑まじりに言う。 付き合って一年経っ…
2021/03/04 12:21