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2019/11/03

1件〜100件

  • 幻の文学少女

    前回、文学全集の端本(はほん)が好きだという話を書いたのだけど、それに関連して忘れがたい記憶があるので、ついでに書いておきたい。 いまから20年ぐらい前、このブログでもときどき書いている無職でぶらぶらしていた時代のことだ。 その頃の私の日課は、(当時住んでいた)市内に5、6軒あったブックオフを巡回することで、その日も普通に漫画の立ち読みをしていた。 夕方になって、そろそろ帰ろうかと思い、最後にもう一度均一棚をチェックしていたところ、学校帰りらしい女子高生がやはり熱心に棚を見ている。 彼女が見ていたのは、棚の上に並べられている昔の文学全集の端本だった。 一冊手に取って、箱から出してパラパラと中を…

  • 端本好き

    ようやく尾崎一雄(荻原魚雷編)『新編 閑な老人』を読み終えた。 それで、もっと尾崎一雄を読んでみたいと思ったのだが、いま新刊で手に入るのはこの本と岩波文庫ぐらいしかない。 私はその岩波文庫も持っている(ような気がする)。それだけでなく、古い新潮文庫や旺文社文庫も持っている(はずだ)。……が、どこにあるのかわからない。 まあ、それはいい。いつものことだ。整理整頓能力のなさはいまに始まったことではない。 なので、こういう時は本を探すのをすっぱり諦めて(というか、最初から探す気もなく)また(古)本を買うのである。こうして際限なく本が増えていく。 こういう場合に私がよく買うのが、昭和に刊行された日本文…

  • おもしろがる才能

    引き続き尾崎一雄(荻原魚雷編)『新編 閑な老人』(中公文庫、2022)を読んでいる。 この本は短編と随筆で構成されているのだが、一番最後に「生きる」(1963)という短い随筆が収録されている。 この中で尾崎は「私は退屈ということを知らない。何でも面白い。」と言い、こう書いている。 巨大な時間の中の、たった何十年というわずかなくぎりのうちに、偶然在ることを共にした生きもの、植物、石ーー何でもいいが、すべてそれらのものとの交わりは、それがいつ断たれるかわからぬだけに、切なるものがある。在ることを共にしたすべてのものと、できるだけ深く濃く交わること、それがせめて私の生きることだと思っている。(p.2…

  • 「あの頃」のことは知らないけれど

    いま「週刊はてなブログ」でこんな特集が組まれている。 blog.hatenablog.com タイトルを見て「あの頃? あの頃っていつよ?」と思ったのだが、上の記事の執筆者によるとこういうことらしい。 この特集を執筆している私自身も、インターネットの雰囲気は“あの頃”と大きく変わったように思います。“あの頃”というのは、上の記事で紹介したように、個人の日記サイトが盛んだったような時代です。“あの頃”を思い返すと、「諸行無常」の四文字が脳裏をよぎります。 この前の特集の「純日記」もそうだが、どうも最近の「はてなブログ」は日記ブログを推しているようだ。そうした日記ブログの文化を「はてなブログ」らし…

  • 素人・玄人

    尾崎一雄(荻原魚雷編)『新編 閑な老人』(中公文庫、2022)を読んでいる。 いままで尾崎一雄を読んだことはなかったが(でも本は何冊か持っている、はず)、荻原魚雷さんが好きなので読んでみた。 すると「退職の願い」(1964)という短編にこんな文章を見つけた。 つくづく思うことは、自分が、一個の人間としても、社会人としても、いかに素人か、ということだ。六十四歳になってそんなことに気がついた。(p.42-43) そう、そうなんだと、首が折れそうになるほど何度も頷いてしまった。私は53歳だけど、本当にそういう感じがする。 尾崎は続けてこう書く。 もっとも、ここで云う素人に対する玄人というのが、どうい…

  • 絵葉書を読む(その12) ニッパハウス

    『絵葉書を読む』第12回。今回の絵葉書はこちら。 『ニッパハウス(向井潤吉)』 「ニッパハウス」とは、ニッパヤシの葉を屋根や壁の素材に用いた家のことで、フィリピンなど東南アジアに多く見られる。 この絵葉書はフィリピンから差し出された「軍事郵便」である。 昭和16年(1941年)12月8日に太平洋戦争が勃発すると、日本軍はアメリカ軍が駐留するフィリピンに侵攻し、翌年6月までにほぼ制圧を完了する。 この絵の作者である洋画家の向井潤吉(1901 - 1995)は、開戦の昭和16年12月から報道班員(従軍画家)としてフィリピンに行き、数ヶ月活動している。この絵もその時に描かれたものだと思われる。 この…

  • 祝日会議 ④

    (前回の続き) 擬人化された祝日たちによる『祝日会議』。前回までの記事はこちら。 祝日会議 ① - 何を読んでも何かを思いだす 祝日会議 ② - 何を読んでも何かを思いだす 祝日会議 ③ - 何を読んでも何かを思いだす 今回の会議も無事に終わり、祝日たちはそれぞれ帰り支度をしながらお茶を飲んだり雑談をしたりしている。 「『憲法記念日』さん、今回もお疲れ様でした」 「ああ、体育……じゃない、『スポーツの日』さん、お疲れ様でした。そうやって労ってくれるのはあなただけですよ」と苦笑しながら「でも、今回一番驚いたのは、やっぱり『スポーツの日』さんの金髪ですね」 「いやー、やっぱり似合わないですかね、こ…

  • 祝日会議 ③

    (前回の続き) 擬人化された祝日たちによる『祝日会議』。前回までの記事はこちら。 祝日会議 ① - 何を読んでも何かを思いだす 祝日会議 ② - 何を読んでも何かを思いだす さて、ここでほかの祝日たちの様子も見てみよう。 テーブルの端の方にきれいな白髪の高齢の女性が2人仲良く並んで座っている。顔も背格好もそっくりで、着ている着物の絵柄以外はまったく同じである。 桜の柄の着物が「春分の日」、菊の柄の着物が「秋分の日」で、2人は双子の姉妹なのである。 彼女たちは会議の成り行きを微笑みながら見守りつつ「あらあら」とか「おやおや」とか「まあまあ」とかつぶやいている。そしてときどき2人で声をそろえて『ほ…

  • 祝日会議 ②

    (前回の続き) 擬人化された祝日たちによる『祝日会議』。前回の記事はこちら。 祝日会議 ① - 何を読んでも何かを思いだす 「それはあたしのことですか!? 」 トゲのある女性の声が飛んできた。「みどりの日」である。 「ただ休日を増やすためにできた意味のない祝日というのは、あたしのことですか!? 」 と言って、キッと「勤労感謝の日」を睨む。その目にはうっすらと涙が滲んでいる。 「い、いえ、そういうつもりは……」あわてて弁明する「勤労感謝の日」を無視して「みどりの日」は続ける。 「そりゃあね、あたしだって薄々はそう感じてましたよ。『天皇誕生日』が12月に移動して、4月29日がぽっかり空いたんで、と…

  • 祝日会議 ①

    前回の記事の最後に、「もし祝日に人格があったら」と書いた。 最近の祝日 - 何を読んでも何かを思いだす この思いつきが気に入ったので、こんな話を作ってみた。 題して、擬人化された祝日たちによる『祝日会議』。 よかったらご笑覧ください。 ここは国会議事堂の一室。今日は4年に一度の「祝日会議」の日である。 大きなテーブルを囲んで、十数人の「祝日」たちが席に着いている。 まず最初に、紋付袴を着て仙人のような白い髭をたくわえた老人が開会を宣言する。 「あー……それでは……えー……『祝日会議』を……始めます」 絞り出すようにそう言うと、老人はストンと椅子に座ってすぐに居眠りを始めた。彼の今日の仕事はこれ…

  • 最近の祝日

    このあいだのゴールデンウィークにカレンダーを見ていて、ふと思った。 5月4日っていつから「みどりの日」だっけ? 以前は「国民の休日」という日じゃなかったっけ? 検索してみると2007年(平成19年)から「みどりの日」になっている。 それ以前、1989年(平成元年)から2006年(平成18年)までは旧「天皇誕生日」の4月29日が「みどりの日」だった。その4月29日が「昭和の日」になるというので5月4日に移動したのだ。 そうだそうだ、思い出した。「昭和の日」ができたとき、「なんだか適当な祝日だなあ」と思ったのだった。 最近の祝日はどうもよくわからない。 とりわけ2000年以降にできた新参者の祝日に…

  • イチゴ狩り(草の名前・その6)

    毎年毎年同じようなことを書いて恐縮だが、庭の雑草がえらいことになっている。 よくもまあこんなに飽きもせずに毎年生えてくるものだと思う。 しかしその雑草も、よく見ると毎年まったく同じというわけではない。それぞれの植物の勢力圏というか、生える場所や面積が微妙に変化している。 今年うちの敷地で勢力圏を拡大したのがこの白い花だ。 これは4月に撮った画像なのだが、この白い花が広い範囲で咲いていた。 この植物の名前はクサイチゴ(草苺)である。 名前はクサイチゴなのだが、実際は「草」ではなく「木」に分類される植物らしい。本州から南ではどこにでも見られる、ありふれた雑草である。 この白い花が一面に咲いていると…

  • 根深汁

    先日、職場で長ネギをもらった。 おすそ分けの、そのまたおすそ分けみたいな感じで配っている人がいたので、私もありがたくいただいて何本か家に持って帰ったのだが、考えてみると、そんなに長ネギがあっても使い道がない。 タダでもらえる物なら後先も考えずにもらってしまうという、貧乏人の悲しい性(さが)である。 仕方がないので、一本だけ残して残りはぜんぶ一口大に切って冷凍保存することにした。冷凍にすると味や食感が落ちるのかもしれないが、傷ませるよりはいい。 そして残した一本を使ってとりあえずみそ汁を作った。長ネギのみそ汁、いわゆる「根深汁」である。 (「長ネギ+青ネギ+油揚げ」のみそ汁) 根深汁といって真っ…

  • DIY

    ゴールデンウィークの初日(29日)にバイク(原付)がパンクした。 普通ならいつもお世話になっているバイク屋さんに電話して、バイクを取りに来てもらって修理を頼むのだが、祝日なので店は閉まっている。というか、ゴールデンウィーク中はずっと閉まっているのではなかったか? 困った。どうしよう。 たまたま翌日と翌々日(30日、1日)は仕事が休みだからいいが、月曜(2日)からは仕事がある。しかも早朝の勤務なのだ。 私にはバイク以外の通勤手段がない。2年ぐらい前までは朝イチのバスに乗ればギリギリ間に合っていたのだが、いつのまにかその時間のバスがなくなっていた。(田舎のバスは少なくなる一方だ) そうなるとあとは…

  • 読書一生分

    いつものようにネットをうろうろしていると、こんな言葉が目に飛びこんできた。 読書一生分プレゼント! 読書一生分? なんだそれ? 実はこれ、ネット書店「honto」の10周年企画で、抽選で1名に一生分の書籍費として101万4099円分のポイントをプレゼントするという懸賞なのである。(ちなみに2等が10年分、3等が1年分) (開催期間 2022/4/21 ~ 2022/5/31) つまり人が一生で購入する書籍や雑誌の総額が100万円あまりという計算なのだが、いったいどういう根拠で? と思ったら、ちゃんと説明がしてあった。それによると、 (A)1世帯あたりの書籍・雑誌等への年間支出額:11,558円…

  • 先祖自慢はほどほどに

    先日、いつものように血圧の薬を出してもらいに病院に行った時のこと。 診察の予約時間にはまだ早かったので、診察室の前の長椅子に座って文庫本を読んでいると、後ろの席のおじさんたちの会話が聞こえてきた。 歳の頃6、70ぐらいの二人連れなのだが、会話といってもほとんど一人が一方的にしゃべっていて、もう一人は聞き役にまわっている。 私は聞くともなしに聞いていたのだが、その話の内容がちょっとおもしろかった。少し補足を加えて要約すると、だいたい次のような話である。 いまではすっかり没落してしまったけれど、昔のわが家はけっこう裕福で、戦前は広大な農地を持つ大地主だった。それが戦後の農地改革で土地を取られて衰退…

  • 本の世界がもっと広がる

    「はてな」の今週のお題が「#もしも英語が使えたら」ということなのだが、具体的に英語が使えるというのはどういうことかと考えてみると、私にとってそれは「英語が読める」ということとほとんど同義なのである。 そのほかの「話す・聞く・書く」といった能力はどうでもいい。まあ、実際の英語学習は総合的にやらなければならないのだろうけど、私の場合は「読む」特化型でもかまわない。 それで文学を中心に英語の本を読みまくる。日本語の未読の本でさえ山と積まれているのにどこにそんな時間があるのか、などという現実的で無粋な問題は考えないようにしよう。 一般に日本は翻訳大国と言われていて、わりとマイナーな作家や作品でも翻訳さ…

  • 図書館という避難所

    前回紹介した『税金で買った本』(ずいの / 系山冏)という漫画の帯には「読むと図書館に行きたくなる!」という惹句が書いてあったのだが、これは本当にそうで、私も久しぶりに図書館に行きたくなった。 考えてみればもう3、4年ぐらい図書館に行っていない。いつの間にかすっかり疎遠になってしまった。 昔はほとんど図書館に入り浸っていたのに。 昔、仕事もしないでぶらぶらしていた頃は、ほとんど毎日のように図書館に通っていた。(いま住んでいるところの話ではないけど) アパートの狭い部屋でテレビばかり見ていても気が滅入るし、タダで時間が潰せる場所としては図書館か、ブックオフで漫画の立ち読みぐらいしかなかったのだ。…

  • 税金で買った本

    前回の記事でおもしろいタイトルの漫画を買ったと書いたけれど、それがこちら。 ずいの / 系山冏(けいやま・けい)『税金で買った本』(講談社、2021)[既刊2巻] 「税金で買った本」というのは図書館の本のことで、これはつまり図書館漫画なのである。 主人公の石平くんはいわゆるヤンキーの高校生。 気になることがあって小学生の時以来久しぶりに図書館を訪れたのだが、ひょんなことからそこでバイトをすることになる。 なんだかんだと文句を言いながらも、個性的な職員たちに囲まれて図書館という場所に馴染んでいく石平くん。第2巻では図書館漫画の定番イベント(?)の「読み聞かせ」もこなす。 「お仕事漫画」でもあるの…

  • 大型書店で右往左往

    先日、あんまり天気が良かったので、半日かけてブックオフをハシゴ。 そこそこまあまあの買い物をした帰り道、最後の〆とばかりにショッピングモールに入っている大型新刊書店に寄った。 その書店に行くのはたぶん一年ぶりぐらいなのだが、いろいろ変わっているところがあって少しとまどってしまった。 レイアウトが変わっているのはいいとして、全体的に店の規模が縮小されているようだった。そのせいか、いわゆる「売れ筋」の本ばかりが並んでいるような印象を受ける。 大型書店の魅力として、小さな出版社の本やマニアックな専門書などを実際に手に取って見ることができるという点があると思うけれど、店の規模が小さくなるとまずそういう…

  • 夢のない夢の話

    最近頻繁に仕事の夢を見る。もちろんいい夢ではない。 絶対時間内に終わらないような大量の仕事に追われている夢や、理由もわからず誰かに怒られている夢など、夢らしくシュールなところもあるけれど、その焦燥感や理不尽は生々しく感じられる。やっぱりストレスなのだろうか。 なにも夢の中でまで仕事をすることはないのだが、こればっかりは自分ではどうにもならない。 と、そんなことを考えていたら、昔読んだオカルト関係の本に夢をコントロールする方法を書いたものがあったのを思い出した。 具体的なことはまったく覚えていないが、訓練によって自分の見たい夢が自在に見られるようになるという話だったと思う。 そんな馬鹿な、と思う…

  • 和文タイプライター

    いつものように「ヤフオク」を散策していてこんなものを買った。 『実用邦文タイプライター教科書』(龍成社) 「邦文タイプライター能率研究社」というところが編纂した100ページ余りの薄い本で、たぶん昭和26、7年ごろに出版されたものだ。 前半の30ページで邦文タイプライターの構造や使い方が説明されていて、残りのページは実習用の例文が(簡単なものから難易度の高いものへ順に)掲載されている。 邦文タイプライター、あるいは和文タイプライターといっても、若い人には何のことかわからないかもしれない。いや、私だって実物を見たことがあったかどうか。 しかし80年代に日本語ワープロが登場するまでは、公式な文書はこ…

  • 書く楽しみ、読まれる喜び

    3月17日でブログを開設して丸3年になった。 おめでとう、私。よくがんばったな、私。 ……しかし、なぜだろう、いまひとつテンションが上がらない。 ブログを始めた人の9割ぐらいが1年と経たずにやめていくといわれる中で、記事数は少ないけれど、曲がりなりにも3年続けられたというのはちょっと自慢してもいいことのような気がするのだが、このテンションの低さはなんだろう。 1周年の時はかなり嬉しかったし、2周年の時もまあまあ嬉しかったのだが、3周年の今回は「まあ、こんなもんか」みたいな感じになっている。 それだけブログを書くことが当たり前のことになったということなのだろうか。一応ブログが軌道に乗った、安定し…

  • 便利のインフレ

    私は「ヤフオク」のヘビーユーザーなのだが、最近「かんたん決済」のシステムが少し変わったみたいで、いままで利用できていた(プリペイド式の)クレジットカードが一部のストアで使えなくなった。 その場合は「コンビニ決済」を利用する。通知された専用の番号をメモしてコンビニに行き、機械で手続きをしてレジで代金を支払うのだが、これがなかなかにめんどくさい。 クレジットカードなら落札してすぐに家に居ながら決済できるのに、コンビニだと翌日になってしまう(終了時間が夜のことが多いので)。雨とか降っているとさらに億劫になる。不便である。 しかし考えてみれば、初めて「コンビニ決済」を利用した時には「なんて便利なシステ…

  • 世界のひきこもりとひきこもりの世界

    ぼそっと池井多『世界のひきこもり』(寿郎社、2020)という本を読んだ。 副題は「地下茎コスモポリタニズムの出現」で、これはインターネットによって世界各地のひきこもり当事者が(外からは見えない)交流をしているという意味だ。 著者は大学卒業を前に「ひきこもり」状態になり、それから30年以上(形を変えながら)ひきこもっているという。 1962年生まれというから、私より7歳年上か。 インターネットを使って世界のひきこもり事情を探索していた著者は、世界のいろいろな国にひきこもり当事者がいることを確認し、それをきっかけにネット上に「世界ひきこもり機構」(Global Hikikomori Organiz…

  • 絵葉書を読む(その11) 日本のサラリーマン

    『絵葉書を読む』第11回。今回の絵葉書はこちら。 会社の一室らしいところで社員が乾杯をしているイラストが描かれているのだが、そこに書かれているスローガンがなかなかすごい。 働け働け明日ありと思う勿(なか)れ 断じて頑張れ栄冠我に在り ほかにも「責任突破」「愉快な〆切」とある。左に見えるのは営業成績表のようだ。この集まりは営業目標達成の祝宴だろうか、それとも今後の奮起に期待する激励会だろうか。 いかにも昭和のモーレツ社員というか、日本の会社っぽい風景である。 葉書の表の差出人の欄に「日華生命保険株式会社」(のちの第百生命)と印刷されているので、この会社のオリジナル絵葉書なのだろう。 差出人は個人…

  • 切手少年だったころ

    私はいま50代だけれど、私と同年代の人なら一度は切手を集めてみたことがあるのではないだろうか。 というのも私が子どもの頃、つまり昭和40年代から50年代前半ぐらいにかけて空前の切手収集ブームがあったからだ。 いまの若い人にはまったくピンとこないだろうが、当時の切手収集ブームというのはものすごくて、例えば子ども向けのお菓子の「おまけ」にきれいな外国切手がついてきたり、普通の漫画雑誌に切手の「通信販売」の広告ページがあったり、とにかくみんな切手を集めていた(というイメージがある)。 子どもだけでなく大人でさえ記念切手の発売日に郵便局の前に行列するくらいのブームだったのだ。(もっとも大人の場合は将来…

  • 本と引っ越し

    私はこれまでに2回引越しを経験した。 1回目は大学進学のために実家から一人暮らしのアパートへの引っ越し。 2回目はそのアパートを引き払って実家に帰った時の引っ越しである。 こう書くと大学卒業と同時に普通に地元に戻ったように見えるが、私は卒業後もずっとそのアパートに住み続けていたので、1回目の引っ越しと2回目のそれとの間には実に20年の隔たりがある。だからその2回の引っ越しは内容がぜんぜん違う。 一番の違いはなんといっても本の量である。 最初の引っ越しでは辞書などを数冊持ってきただけだったが、その20年の間に私は「本を買う人」になっていたので、2回目の引っ越しはたいへんだった。 当時住んでいたア…

  • 本屋には一人で行きたい

    先日、例によって例のごとくブックオフで本を見ていた。 すると私の背中の方で男子高校生が話をしているのが聞こえてきた。 「俺、いま伊坂幸太郎読んでるんだよね」 「誰、それ?」 「えっ、おまえ伊坂幸太郎知らんの?」 「知らん。東野圭吾は知ってるけど、その人は知らん」 「マジで? ヤバくね?」 みたいなことをしゃべっている。声がデカい。私はだんだんイライラしてきた。 それに比べて、私の左側数メートルのところにいる女子高生は一人で黙々と棚の文庫本を吟味している。 真剣に本に集中している姿がいい。好感が持てる。(単に私が若い女の子が好きということではない。たぶん) 本屋では客はこうあるべきだ、などとちょ…

  • そうだ、京都に行こう

    「はてな」の今週のお題が「試験の思い出」になっているのを見て「ああ、そうか、受験シーズンか」と気づいた。 私の大学受験はもう30年以上も昔のことになる。 いまもだいたい同じようなものだと思うが、私が受験生の頃は本命、対抗(?)、すべり止めと3、4校受験する人が多かった。私も3校受けた。 本命のA校と対抗のB校はどちらも九州の大学だった。進学で実家を出ることは決まっていたけれど、親は私があまり遠くに行くことを望まなかったし、私も一人暮らしができるなら場所にはあまりこだわらなかったので、これはまあ無難な選択と言えた。 ところがもう一つのすべり止めに、私は京都にあるC校を選んだのだ。 唐突に京都など…

  • 正直者は風邪をひく

    一昨日、早朝の仕事の後でかかりつけの病院に行った。いつもの血圧の薬を出してもらうためだ。 予約の時間よりだいぶ早かったけど、うまくいけば時間を繰り上げて診察してもらえる。今回は血液検査もなく診察だけなのですぐに終わるはずだった。 病院の入り口ではいつものように事務員さんが待っていて、非接触型の体温計で入ってくる人の体温を測り、簡単に体調を聞いている。もうおなじみの風景である。 私も手を消毒したあと体温を測り、さわやかな笑顔の事務員さんから「ここ1週間で熱が出たことはありますか? 風邪をひいてませんか?」という型通りの質問を受けた。 私がなんの気無しにへらへらした顔で「ああ、ちょっと風邪気味で……

  • 「わたしはわがままだからお勤めには向かないわ。」

    一昨日、昨日、今日と3連休だった。 私の仕事は何人かの同僚とローテーションが組まれているタイプのもので、休日も一般のカレンダー通りではなく普通に平日が休みになったりするのだが、連休というのはそんなに多くない。 しかし今は比較的に仕事が暇な時期なので、今のうちに年休を消化しておけとばかりに休みが増えている。 まあ、3連休といっても特に何をするわけでもなく、無為な休日を3回繰り返すだけなのだけれど、それでもやっぱりちょっと嬉しい。 でもそのちょっと嬉しい分、連休明けで仕事に行く時は単発の休日の時よりちょっとつらい。 3連休だから3倍つらいということはないけれど、1.5倍ぐらいはつらいかな。 そんな…

  • 冬将軍に申し上げる

    休日の朝、8時ごろに目を覚ましてトイレに行く。 窓から外を見ると、昨日(木曜日)積もった雪は一日で消え、今日はまた少し寒さが緩んでいるようだ。 そのまま朝食を食べればいいのに、なんとなくまた寝床に戻ってうつらうつらしてしまう。 昨日と一昨日は本当に寒かった。 今年の冬は全体的にそれほど寒くなく、4、5日前などこのまま春になるんじゃないかというほどの陽気だったのに、一昨日に急に冷たくて強い風が吹き始め、夜のうちに10cm ぐらいの雪が積もった。 雪国の人から見れば積雪のうちにも入らないだろうけど、雪に慣れない九州の人間はそのくらいで充分あわててしまう。 幸い通勤に支障をきたすことはなかったけれど…

  • 経年劣化

    「ヤフオク」でブックカバーを買った。 単行本用の布製のやつで、出品者の手作りである。そういうのを年に一枚ずつぐらい買っている。 以前は書店でもらう紙製のブックカバーを使っていたのだが、最近はネットで新刊を買うことが多くなったのでなかなかもらえなくなった。 文庫本用のカバーは安いのが百均でも売っているけれど、単行本用のカバーはどこにでもあるわけではなく、またあったとしてもちょっと高いしデザインも限られている。なのでこういう手作り品を譲ってもらっているのだ。 ちゃんと一冊ずつ本を読むのであればそう何枚もブックカバーが必要になるはずはないのだが、一冊を読み終わる前に別の本が読みたくなり、いちいちカバ…

  • ブログはタイムカプセル

    「はてな」の今週のお題が「自分に贈りたいもの」ということなのだけど、このブログを長く読んでくれている人なら「あんたのことだから、どうせまた本なんだろ?」と思うかもしれない。 ああ、その通りだ。 実際に本以外にあまり欲しいものが思いつかない。いい大人がそれもどうか? とは思うけれど。 しかしその答えでは当たり前すぎておもしろくもなんともない。 そこでちょっとひねって、現在の自分ではなく「未来の自分に贈りたいもの」はないだろうかと考えた。 そして思いあたったのがこのブログである。 私がいつまで生きるかはわからないが、そうだな、さしあたって約20年後、70歳の自分を対象にしてみよう。 その70歳の自…

  • 買い物は毎日したい派

    仕事帰りに毎日のように通っているスーパーがある。 その入り口近くに3台の自動販売機があって、冬になるとそのうちの2台に缶のおしるこが入る。私はこれが好きで、来るたびに、ということは毎日のように買って飲んでいる。ささやかな冬の楽しみだ。 ところが今月になって早くもこのおしるこが消えてしまって、その場所にありふれたココアが入っていた。なぜだ? まだ2月なのに。 これから何を楽しみに残りの冬を過ごせばいいのか。 いや、おしるこの話がしたいのではなかった。 最初に書いたように私はだいたい毎日仕事帰りにスーパーで買い物をしている。そのスーパーは通勤路にあるわけではないので少しだけ回り道になるけれど、24…

  • 「ただ知りたいだけだ」

    前回、岡崎武志、古本屋ツアー・イン・ジャパン編『野呂邦暢 古本屋写真集』(ちくま文庫、2021 )という本について書いた。 paperwalker.hatenablog.com この本の元版は2015年に盛林堂書房から刊行されたもので、このちくま文庫版はそれを増補再編集している。その増補として、本が出てくる野呂の短いエッセイが9篇収録されているのだが、これがすごくいい。 そのエッセイの一つに「蔵書票」と題されたものがある。 わずか3ページの文章なのだが、それを読んで私はなんだか胸が熱くなった。 そこには中学生の頃の野呂自身と、本好きだった彼の叔父さんが出てくる。戦争と家庭の事情でアカデミックな…

  • 同好の士

    昨年の10月から12月にかけて古本関係の新刊(まぎらわしい)が立て続けに刊行された。 なかでも嬉しかったのは岡崎武志、古本屋ツアー・イン・ジャパン編『野呂邦暢 古本屋写真集』(ちくま文庫、2021 )である。 この本は2015年に盛林堂書房から刊行された同書を増補再編集したものだ。盛林堂書房は東京の西荻窪にある古書店で、マニアックなミステリーなどを中心とした出版も行なっている。 その元版は定価2500円で500部出版されたのだが、あっという間に完売し、現在では一万円以上(店によってはその倍も)の古書価がついている。 なので、こうしてちくま文庫から新刊として求めやすい形で再び出版されるのはとても…

  • 絵葉書を読む(その10) ミシン

    『絵葉書を読む』第10回。今回の絵葉書はこちら。 シンガー製ミシンの広告絵葉書だ。 シンガーは1850年からミシンを製造しているアメリカの代表的なミシンメーカーである。 ミシンが日本に入ってきたのは江戸時代末期のこと。 嘉永7年(1854年)、ペリーが二度目の来航をした時に将軍家へ献上した献上品の中にミシンがあったという。ちなみに日本で初めてミシンを扱ったのは天璋院(篤姫)だと言われている。 ミシンが普及しはじめるのは明治になってからで、当然ながら輸入品がほとんどだった。 国産のミシンが量産されるのは大正に入ってからである。パイン裁縫機械製作所(現在のジャノメ)が本格的な量産を始めた。しかしこ…

  • 負けることの可愛さ

    ちょっとしたきっかけがあって田山幸憲『パチプロ日記 I 』(白夜書房、1995 / 旧版1990)を読んだ。タイトルの通り田山さんはパチプロ、つまりパチンコで飯を食っている人だ。(2001年他界) これはその田山さんの1990年(平成2年)の3月から5月までの三ヶ月間の日記である。 1980年台に入って、パチンコには現在の主流である「セブン機(デジパチ)」や「ハネ物」といった新しいギミックの機種が登場し、それにともなって人気が拡大していった。 これを機にパチンコ業界も、パチンコは誰でも気軽に楽しめる健全な娯楽であるというイメージを強調し、それにマスコミが拍車をかけるような形でパチンコが一種のブ…

  • 相続はお早めに

    3年前に父が亡くなった時、遺産相続のあれこれを行政書士に頼んだ。多少お金がかかってもプロに任せたほうが安心だと思ったからだ。 私には姉が二人いるけれど、事前に話し合いは済んでいたので相続は簡単に終わるはずだった。まあ、遺産といっても貯金がいくらかと、あとは田んぼや家などの不動産があるだけだったので、骨肉の争いをするほどのこともない。 ところが意外に手間取ることになってしまった。 問題は不動産のほうだった。 田んぼはすべて父の名義だったので、これをそのまま私の名義にするだけでよかった。これは問題なし。 しかし家が建っているところの土地は父の名義ではなく、祖父の名義のままだったのだ。これをそのまま…

  • 一番よりNo.2

    いつも利用している動画配信サービスで、『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)の第3部「スターダストクルセイダース」のアニメを見ている。 この第3部にホル・ホースというキャラクターが出てくる。 西部劇に出てくるようなカウボーイハットに拍車(ギザギザのやつ)付きブーツという格好で、主人公たちを殺しにくる敵キャラなのだが、どこか人を食ったとぼけた性格をしていて、妙に憎めないところがある。 この男、一人では行動せず、いつも誰かとコンビを組んで仕事をすることを信条としている。 インドで承太郎(主人公)たちを襲った時も、相棒である J・ガイル(こいつは正真正銘の下衆野郎なのだが)が先にやられて一人になった…

  • ultra sale

    昨日、久しぶりでブックオフの「ウルトラセール」に行ってきた。本が全品2割引になるというアレだ。 以前はこの年3回(正月、ゴールデンウィーク、お盆)のセールは欠かすことのできない年中行事で、わざわざ前日に下調べして臨むほどの気合の入れようだったのだが、最近はスルーすることが多くなっていた。 やっぱりネットで本(古本)を買うことを覚えると、遠くの実店舗まで行くのがどうしても億劫になってしまう。 しかし今回は某店に欲しかった本があるとわかっていたので、己を鞭打つようにして出かけたのだ。 寒い中けっこう長い時間バイクに乗っていたので首から肩にかけてガチガチに凝ってしまったけど、目当ての本を買うことがで…

  • 新年の挨拶 2022

    あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いします 「はてなブログ」で3回目の新年の挨拶をすることができました。 飽きっぽい私としては奇跡的なことです。 これもひとえに記事を読んでくれるみなさんのおかげです。 ありがとうございます。 今年もよろしくお願いします。 今年のブログでやりたいことは前回の記事でだいたい書いてしまったので、それ以外の目標を考えると……「健康第一」ですかね。(笑) なにをするにしても「体が資本」ということが身に沁みる中高年、ブログだって例外ではありません。持続可能なブログのためには心身ともに健康でなければ。(不健康ネタというのもアリな気がしますが) よく食べて、よ…

  • 2021年のブ活をふりかえる

    ありがたいことに今年も一年ブログを続けることができた。 今年はこれが最後の更新になるので、今回は2021年のブ活(ブログ活動)をふりかえってみたいと思う。 今年は(この記事を含めて)79件の記事を書いた。昨年が87件なので1割ぐらい減っている。 更新の間隔も不規則だった。私の場合、経験上、野球の先発ピッチャーみたいに中(なか)3日ぐらいの更新がベストなのかなと思っているが、なかなかそのペースを守れない。休日に記事を書くことがほとんどなのだが、他にも用事がある時にはブログにまで手が回らなくなる。 ちなみに記事を書いてもその日のうちに更新することはほとんどなく、たいてい翌日の夕方に予約投稿している…

  • 毎日のことだから

    ようやく土井善晴『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫、2021 / グラフィック社、2016)を読み終わる。 単行本が出た時に話題になったから気になってはいたのだが、ずっと先送りしていた。それが先日文庫化されたので、これを機会に読んでみた。 はてなブログでも特集ページを作ったぐらいだから、読んでブログに感想を書いている人も多いのだろう。 食事を「型」で運用する。土井善晴先生から料理を学ぶはてなブロガーの記事をピックアップ! - 週刊はてなブログ 本書の趣旨はタイトルの通りで、「ご飯」「具沢山のみそ汁」「漬け物など」の「一汁一菜」を毎日の食事の基本にしてみようというものだ。 私のように自分で作…

  • 「読む」と「インプット」

    最近よく目にするようになったなと思う言葉に「インプット/アウトプット」というのがある。 もともとはコンピュータ関係の言葉で「入力/出力」という意味だったはずだが、それが人間にも使われるようになって、知識や情報を得ることを「インプット」、表現したり発信したりすることを「アウトプット」というようになっている。 私はどうもこの言葉が苦手というか、あまり好きになれない。 とりわけ本を読むことを「インプット」と表現しているのを見ると違和感を覚える。これは小説などのフィクションだけでなく、ビジネス書や自己啓発本などを読むことに対してもそうだ。 私の感覚では、「読む」と「インプット」とでは言葉から受ける感じ…

  • 仕事と自由

    もう何度も書いていることだけど、二十代の頃、無職でぶらぶらしていた時期がある。 理由はいくつかあったのだが、その根底には「できるだけ他人と関わらずに自由でいたい」という身勝手な気分があったのだと思う。(まあ、今もそういう気分がないわけではないけど) もっとも霞を食って生きていくわけにもいかないから、たまに派遣のバイトをして糊口をしのいでいた。そういう仕事はだいたい1週間とか2週間ぐらいの短いものが多かったので、一か所で長く働くということはほとんどなかった。 経済的にはドン底の生活だったけれど、しかし、そこにはたしかに「自由な生活」があった……と言いたいところだが、実際はそんなかっこいいものでは…

  • 「有意義な休日」について

    休日の終わり、「ああ、今日もまた無駄な一日を過ごしてしまった」と軽く自己嫌悪に陥ることがよくある。 遅い時間に起きて、だらだらしていたらいつの間にか部屋が暗くなっていた、なんてことはしょっちゅうだ。 その度に休日をもっと有意義に使わなければと反省するのだが、次の休日もやっぱりだらだらしてしまい、部屋の灯りをつけながらため息をつく。 どうすれば「有意義な休日」が過ごせるのだろう。 そこで「有意義な休日、有意義な休日」と念仏のように唱えていたところ、逆にこう思うに至った。 実は「有意義な休日」というのは幻想ではないのか? いや、誤解のないように言っておくと、私はなにも「有意義な休日」の存在自体を否…

  • 愚痴も芸のうち

    仕事が地獄である。 毎年12月は繁忙期でたいへんなのだが、それでも去年と一昨年は休日にブログを書くくらいの精神的余裕はあった。しかし今年はイレギュラーな事情からそれに輪をかけて忙しく、休日も気力体力が尽き果てたままぐったりしている。 「忙殺」という言葉をこれほどリアルに感じたことはない。 そもそもウチの会社は……と、愚痴を書き連ねたくなるのを思いとどまる。 愚痴は、書く方はいくらか気持ちがスッキリするのかもしれないが、そんなものを読まされる方はいい迷惑だろう。 もっとも、私は愚痴っぽいブログを読むのがそんなに嫌いじゃない。 これが生身の人間に面と向かって愚痴を言われるのなら、相手がどんな別嬪さ…

  • 寝るより楽はなかりけり

    最近、休日の起床時間がだんだん遅くなっている。 寒くなってきたことに加えて、いま仕事がきつい時期なのでその疲れが出ているのだと思う。 今日も8時過ぎに目が覚めたが、そのままうつらうつらと布団の中にいて、10時ぐらいにトイレが我慢できずにしかたなく起きあがった。尿意がなければ昼過ぎまで寝ていたかもしれない。 こんな時には、祖母がときどき口にしていた言葉を思い出す。 世の中に寝るより楽はなかりけり いかなる阿呆が起きて働く まことにもっともである。 しかし、そう言っていた祖母は子どもの時からずっと働き詰めの人だった(らしい)。 昔の田舎の農家のことだから、子どもも学校より家の仕事を手伝うことの方が…

  • 冷蔵庫がある生活

    川上卓也『貧乏という生き方』(WAVE出版、2010)という本を読んだ。(なぜそんな本を読んでいるかはお察しください) その中に「ああ、憧れの無冷蔵庫生活」という一項があって、そこで著者は、節電・節約のために冷蔵庫のない生活を目指していろいろ工夫しているが、まだ完全には実現できていないと書いている。 そういえば、以前読んだ稲垣えみ子『寂しい生活』(なぜそんな……お察しください)にも節電のために冷蔵庫を使わない(捨てる)という話があって、こちらはすでに実践しているという。 paperwalker.hatenablog.com どうやら冷蔵庫というのは、家電の中でも節電・節約における最大の難関、ラ…

  • 絵葉書を読む(その9) 歌は世につれ

    『絵葉書を読む』第9回。今回の絵葉書はこちら。 『東京市電車』 昔の東京の路面電車の乗車風景なのだが……実は今回の話はこの絵とは直接関係がない。表の通信文に興味をひかれて購入したのだ。さっそく引用してみよう。(旧字・旧仮名遣いは現代的に改めた) 唯今の御葉書に依りますと、此の度の私の撰定したレコードの中二枚共書生節ばかりだとの御話ですが、私の撰んだのは残月一声と松の声とだけですから、今一枚は何かは存じませんが、何卒御手数ながら直ぐに御返送を願います。本日今直ぐに出かけて、注文しない物をどうして送ったかを聞いて参ります。又余りに東蓄板で御聞き苦しいのが有りましたら、其の時一緒に御返送を願います。…

  • 冬が来る前に

    数日前の雨以来すっかり寒くなってしまった。 もう秋の余韻を楽しむような余裕もなく、すぐにでも冬がやってきそうだ。 そんな季節に必ず頭の中で流れる曲が紙ふうせんの『冬が来る前に』である。(そのまんまだけど) www.youtube.com この曲が脳内再生されると、なんともいえない気持ちになる。 発表されたのが1977年で私がまだ小学生の時だから、リアルタイムで聴いたわけではないだろう。たぶん後年、何かのテレビ番組で聴いたのだと思う。 歌詞の内容は、夏に別れた恋人ともう一度会いたいというシンプルなもので、こう言ってはなんだが、私が共感するような要素はない。 にもかかわらず、あのイントロから歌い出…

  • 共産趣味

    誰がつくったのかは知らないが「共産趣味」という言葉がある。 「主義」じゃないですよ。あくまで「趣味」。 ちゃんとした説明はWikipediaに丸投げするとして、私が理解している範囲で言うと、これはつまり、共産主義や左翼思想などを真面目に研究するのではなく、それを茶化したりネタにしたりしておもしろがることである。それからまた、ソ連や昔の東欧のいわゆる「東側」諸国の文化や事物に興味を持っていろいろ調べたり、グッズを集めたりすることも含まれる。 まあ、ゆる〜く共産主義や旧共産圏に興味を持っている人と言えるかもしれない。 ja.wikipedia.org 実は私にも少し「共産趣味」の傾向があって、だい…

  • だれも買わない本は……

    編集者でライターの都築響一さんにこんなタイトルの本がある。 『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(晶文社、2008) 内容は書評と、本や書店に関するエッセイなのだが、とりあえずそれは置いといてこのタイトルがすばらしい。 すばらしいのでもう一度言おう。 だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ。 本屋に行くと、無数と言ってもいいくらいの本が並んでいる。しかし、当然ながら、すべての本が等しく売れるわけではない。 ベストセラーとして華々しく平台に積まれている本がある一方、目立たずにずっと棚に差されている本もある。いや、そういう本がほとんどだと言っていい。 売れなかった本は…

  • 「読書週間」の標語を読む

    毎年10月27日から11月9日までの2週間は「読書週間」ということになっていて、この期間に読書や本に関するイベントが多く開催される。 この「読書週間」の歴史は意外に古く、その前身にあたる「図書週間」が制定されたのは1924年(大正13年)のことだ。その後戦争による中断をはさんで、1947年(昭和22年)に改めて「読書週間」として制定される。これを第1回として、今年で75回になる。(Wikipediaを参照) この「読書週間」にあたって、毎年本や読書をテーマにした標語とポスターが作られる。現在ではどちらも公募になっていて、今年選ばれたのはこちら。 最後の頁を閉じた 違う私がいた ポスターはこちら…

  • 老いも若きも

    前回、「はてなブログ」の特別お題「10の質問」に答えてみたのだが、このお題はけっこう書きやすいようで、たくさんの人が記事を寄せている。専用のページを見ると、現時点で700件以上の記事が挙がっている。 これを読んでいくのがけっこう楽しい。 blog.hatena.ne.jp いろいろなブログがあるなあと、あらためて思う。 素朴な疑問だけれど、今「はてなブログ」にはいったいどれくらい「現役」のブログがあるのだろうか。「現役」というのはある程度定期的に更新されているという意味だ。 その中で私が読んだことがあるブログというのは、本当にごくごくわずかなものなのだろう。そう考えると、なにかとてももったいな…

  • お答えします

    「はてなブログ」10周年、おめでとうございます。 私はまだ2年半ほどのつきあいで、はてなの端っこの方にひっそりと棲息している書き手ですが、謹んで御祝い申し上げます。 さて、挨拶はそんなところにして、10周年記念で特別なお題が出ているので私も参加してみようと思う。 お題は「はてなブロガーに10の質問」。 ☆ブログ名もしくはハンドルネームの由来は? ブログのタイトルは、ヘミングウェイの短編「何を見ても何かを思い出す」から借用したもの。最初は純然たる「読書ブログ」にするつもりだったのでこういうタイトルにしたのだが、今ではなんでもありの雑記ブログに……。 ハンドルネームは適当なものを思いつかなかったの…

  • ソビエト横断ウルトラクイズ

    前回の記事で、70年代の後半から90年代の初めにかけて開催・放送された『アメリカ横断ウルトラクイズ』が好きだった、という話をした。 paperwalker.hatenablog.com その記事を投稿した後に思い出したことがあるので、「おまけ」として書いておく。 昔、『アメリカ横断ウルトラクイズ』に対抗して、『ソビエト横断ウルトラクイズ』(もしくは『シベリア鉄道ウルトラクイズ』)というのを考えたのだ。つまりは本家『ウルトラクイズ』のパロディである。 ja.wikipedia.org 1次予選は本家と同じく後楽園球場(現在の東京ドーム)で行う。100人が通過。 2次予選は、本家の羽田空港ではなく…

  • アメリカに行きたかったころ

    先日、46年続いたクイズ番組『アタック25』が終了した。 大人になってからはあまり見る機会がなかったが、10代の頃はわりとよく見ていたと思う。 昔(70年代後半から80年代)はこういう視聴者参加型のクイズ番組がけっこうあって、子どもには難しいところもあったけれど、私は好きだった。 タレントが回答者の場合は、真剣にやっていたとしてもどこかで「演出」を意識しているものだが、素人はそんなことはお構いなしなので、何かむき出しの人間臭さのようなものがあったように思う。(もちろん「いま思えば」であって、子どもの頃にそんなことを考えていたわけではない) その視聴者参加型のクイズ番組の中でもとりわけ大好きだっ…

  • 家族のいる俳句

    以前、ちょっとした調べ物をしているときに安住敦という俳人のこんな俳句を見つけた。 啓蟄や書肆二三件梯子して 「啓蟄」は春の季語で、要するに、春の日に本屋を2、3軒梯子したというそれだけの句なのだが、これがなぜか妙に印象に残った。 なんというか、言葉が自分にしっくりくるというか、よく馴染むような気がしたのだ。 そのときから気にはなっていたのだが、最近になってようやくこんな本を読んだ。 成瀬櫻桃子編『安住敦集』(俳人協会、1994) これは安住敦の全作品から300句を選び、制作の古い順に並べ、各句にいろいろな人が短い註を付けていったものだ。 私は普段俳句を読まないし、もちろん自分で詠みもしない素人…

  • コンビニコミック

    先日、コンビニで漫画のラックを見てちょっと驚いた。 『ワンピース』のコンビニ版(廉価のペーパーバック)が出ていたのだ。 もちろん『ワンピース』は現在も連載中の人気漫画である。普通のコミックス(単行本)もまだ生きているはずだ。それなのに(初期のエピソードとはいえ)コンビニ版が出るなんて、まだ早いと思ったのだ。 しかし考えてみれば『ワンピース』が始まったのが1997年、もう24年前のこと。四半世紀前の漫画だと思えば、コンビニ版が出てもおかしくないか。 それにコミックス自体は生きているとしても、1巻から全部棚に並べている書店というのは多分ないだろう。(ちなみに現時点で既刊100巻)いくら人気でも普通…

  • 森へ行きましょう

    ちょっと調べたいことがあって、黒岩比佐子『古書の森 逍遥ーー明治・大正・昭和の愛しき雑書たち』(工作舎、2010)をパラパラめくっていたら、読むのをやめられなくなった。 黒岩さんは、ちょっと変わった切り口で明治や大正の人や文化を紹介するノンフィクション作家である。ほとんど忘れられていた明治のベストセラー作家・村井弦斎にスポットを当てた『「食道楽」の人 村井弦斎』が代表的な仕事だ。 しかし残念ながら、2010年に52歳の若さで亡くなられた。 その黒岩さんは2004年からブログ「古書の森日記」を開設し、そこで仕事で使った(というか、使いきれなかった)膨大な古書を紹介し始めた。 この『古書の森 逍遥…

  • なんでも煮てやろう

    冷蔵庫の豆腐が消費期限間近だったので、冷凍しておいた牛肉と合わせて「肉豆腐」をつくることにする。 ベースの煮汁は例によって「めんつゆ」でつくり、やはり冷蔵庫にあった玉ねぎ(半分)とえのきを適当に切って入れ、牛肉を入れてほぐし、豆腐を入れて煮るだけの、いつもの手抜き料理である。 煮物は一度に四食分ぐらいつくるので後が楽だ。 しかし、いまさらながら「めんつゆ」というのは便利なものだ。 煮物はもちろん、冷奴や天ぷらにかけてもよし、野菜炒めの味付けに使ってもよし、うどんのつゆにしてもよし。ほとんど万能調味料といっていい。 とくに煮物は、何を煮てもそこそこおいしくなるのでとても重宝している。 学生時代に…

  • 漢詩でララバイ

    二十代の頃、ちょっと荒んだ生活をしていた時期がある。 といっても悪い事をしていたわけではなく、ほとんど無職でぶらぶらしていただけなのだが。 その頃の一日はだいたい午前10時とか11時ぐらいから始まる。とりあえず飯を食ったら、さて、今日は何をして時間を潰そうかと考える。 考えるといってもだいたいやることは決まっていて、多少お金がある時(ときどきは日雇いの派遣の仕事をしていた)はパチンコに行く。お金がない時は図書館か、ブックオフで漫画の立ち読み。外に出るのも億劫だったり、雨が降ったりした時には家にこもって一日中テレビを見る。たいていこの三つのどれかだった。 そうやって毎日をやり過ごしていた。 こう…

  • ときどき何を書いていいかわからなくなる

    ……という状態になることがあって、実はいまがそうなのだ。 「スランプ」と言いたいところだが、スランプというのは調子がいい時があってのことなので、このブログには当てはまらないような気もする。 「何を書いていいかわからない」というのは、別の言い方をすれば、「何を書いてもツマラナイ記事しか書けないような気がする」ということでもあり、こっちのほうが気分としては正確かもしれない。 もっとも「それじゃあいままで書いた記事はそんなにオモシロかったのか?」と問われると、「いや、まあ、そういうわけじゃ……へへへ」と曖昧に笑うしかないのだけれど。 いわゆるネタがないわけではない。 しかし、書き始めてしばらくすると…

  • 「草とり」

    ぼんやりラジオを聴いていると、徳冨蘆花の「草とり」という随筆の朗読があった。 気になって調べると、「青空文庫」に入っていたのであらためて読んでみる。(以下、引用は青空文庫版。ただし、仮名遣いや表記は適宜変更した) 六、七、八、九の月は、農家は草と合戦(かっせん)である。(中略)二宮尊徳の所謂「天道すべての物を生ず。裁制補導は人間の道」で、ここに人間と草の戦闘が開かるるのである。 自然は自然のままにいろいろな物を生じさせるが、人間はそれをうまくコントロールしなければならない。 田畑の雑草もそうで、自然のままに放っておくと作物が良く成長しない。だから絶えず雑草を取り除く必要がある。 たかが草取りと…

  • この本(本好きのための童謡)

    本好きのための童謡です。 童謡「この道」(作詞・北原白秋、作曲・山田耕筰)のメロディにのせて読んでください。(「この道」がピンとこない人は、下の方に曲を引用しているので参照してください) では、どうぞ。 この本は いつか読む本 ああ そうだよ だけどいまは 床に積んでる あの本は いつか見た本 ああ そうだよ 家のどこか 埋もれてるはず この本は いつ買った本 ああ そうだよ 同じ本が 三冊もある あの本は いつか読む本 ああ そうだよ その「いつか」が 来ることはない (参考) www.youtube.com

  • 人まかせ

    前回、ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー』という本について書いた。 著者はスコットランド最大の古書店「ザ・ブックショップ」の店主なのだが、その店でちょっとおもしろいサービスを行なっている。 それは「ランダム・ブッククラブ」というもので、年会費59ポンド(1ポンド=約150円として約8850円)を払ってクラブの会員になると毎月1冊古書が送られてくるという企画である。 おもしろいのは、会員は送ってもらう本に対して一切リクエストをすることができず、バイセル氏自身がランダムに本を選んで送るというところだ。 ジャンルも選択できないので、普段小説しか読まないような人にノンフィクションが送られて…

  • スコットランド古本屋日記

    ショーン・バイセル『ブックセラーズ・ダイアリー スコットランド最大の古書店の一年』(矢倉尚子訳、白水社、2021)という本を読んでいる。 2001年のクリスマス。著者が帰省で実家があるウィグタウン(スコットランド南西部にある小さな街)に戻ったとき、地元の古書店「ザ・ブックショップ」の店主から「店を買わないか?」と持ちかけられ、ほとんど衝動的に(銀行ローンを組んで)店を買ってしまう。著者が30歳のときだ。 ちなみにウィグタウンはスコットランド政府が募集した「ブックタウン構想」(本と書店による「町おこし」のようなもの)に立候補し、1999年に「ナショナル・ブックタウン」に認定されたところである。 …

  • いまそこにある危機

    ついにというか、とうとうというか、私の職場でもコロナの感染者がでた。 昨日、久しぶりに隣の市の大型書店に行って至福の時間を過ごしていたら、ポケットの携帯が鳴った。会社からだった。 会社に限らず、日頃私に電話がかかってくることはめったになくて、かかってきた時はたいてい悪い知らせか面倒な出来事なので、緊張して電話に出るとそういうことだった。 同じ職場といっても、感染した人とはそれほど近くで仕事をしているわけではなく、会話することもあまりない。 電話では、最近の接触の有無や、現在の健康状態を訊かれたが、とくに異常なことはない。 仕事がどうなるかはわからないが、そう何日も停滞することはないようだ。 し…

  • イワシの梅煮

    休日。 午前中に銀行に行って、そのままスーパーで買い物。 最近すっかり夏バテなので、今日はとりあえず肉を食べようと思っていたのだが、鮮魚コーナーで小イワシが10尾98円で売っているのを見かけて立ち止まる。や、安い。 これを3食分とすると1食あたり約33円、4食にすると約25円。最近本多静六の本を読んで、財布の紐を締めようと思っていたところなのだ。 しかし今日は肉を……でも安い……頭付きは処理がめんどう……でも安い……時間が……でも安い……としばらく悩んでいたが、結局カゴに入れる。 家に帰ってさっそく料理にかかる。 いまからやると昼飯が少し遅くなりそうなのだが、すぐにやらないとめんどくさくなって…

  • 運まかせ

    例によって例のごとくブックオフを徘徊していると、文庫棚の近くにこんなものが売られていた。 たしか「お楽しみセット」みたいな名前がつけられていたと思う。文庫本2冊で300円である。同様のものが20個ぐらい平積みしてあって、すでにいくつか売れているようだった。 本というのは個人の趣味嗜好が強く出るものなので、こういう福袋的な売り方には向かない商品だ。 それに、こう言っては悪いけれど、どうせたいした本は入っていないだろうと思った。 たぶん少し前に話題になったようなエンタメ系の本で、店の在庫がダブついているのでなんとか売ってしまおうという店側の苦肉の策ではないのか。 間違っても硬派な本、例えば岩波文庫…

  • 蓄財について

    本多静六『私の財産告白』(実業之日本社文庫、2013 / 実業之日本社、1950)という本を読んでいる。 著書は林学(森林や林業に関する学問)の学者なのだが、その本業以上に投資家として、また蓄財術に関する本の著者として知られた人だ。 この本も、著者の実際の経験に基いて、いかに財産を築くか(築いたか)を語ったものである。 こういうのはともすれば「成功者」のただの自慢話と思われやすい。とくに日本人は正面からお金の話をするのを嫌う傾向がある。 しかも学者が蓄財の話をするというのは、一般的なイメージに合わないかもしれない。学者はお金などに頓着せず、ひたすら学問に没頭するもので、むしろ「清貧」の方が似つ…

  • 味噌、白秋、台湾藻

    スーパーで買い物をしているとき味噌が切れていたのを思い出して、いつも買っている味噌を手に取ったのだが、ふと思いなおしてそれを棚に戻した。 今日は普段買わない味噌を買ってみようと思ったのだ。 いままで使っていた味噌は大手メーカーのだし入り味噌で、ずっとそればかり買っていた。簡単に使えて過不足なくおいしいので定番にしていたのだが、最近なんだか生活に倦怠感があるのでちょっと気分を変えたくなったのである。 あらためて棚を見てみると、けっこういろいろな味噌が並んでいる。 しかし私は(たびたび書いているように)「貧乏舌」なので、あまり微妙な味の違いなどわからない。味噌の違いなんて、そんなにはっきりわかるも…

  • 絵葉書を読む(その8) もんぺ

    『絵葉書を読む』第8回。今回の絵葉書はこちら。 『モンペ』(中原淳一) 「もんぺ」は、主に農山村の女性の仕事着として古くからあった袴状の着物である。(名称や細部の仕様は地域によって異なる) この「もんぺ」が広く全国的に知られるようになったのは戦時中のこと。 いわゆる戦時体制になると、女性の和装が非活動的であるとしてその改革が議論されるようになった。その改革案の一つとして「もんぺ」が奨励されたのである。 もっとも昭和10年代の前半においては、奨励されただけで義務化されたわけではない。都市部の女性からの評判も悪く、実際にはあまり着用されなかったようだ。 しかし太平洋戦争が始まり、生活が次第に困窮し…

  • お金の話

    私の両親は、子どもの前でお金の話をしなかった。 いや、姉に対してはどうだか知らないが、少なくとも私の前ではしなかったし、するべきではないと思っていたようだ。 私は「末っ子の長男」として激甘に育てられたので、なにか欲しい物があると(高価な物でなければ)割と簡単に買ってもらえた。 家が裕福だったわけではない。むしろ家計はけっこう苦しかったはずだ。 それなのに、あるいは、それだからこそ両親は、私にお金のことで「弱み」を見せたくなかったのかもしれない。子どもにお金の不自由を感じさせないということが、親としての矜持だったのかもしれない。 しかしその結果、私はお金についてあまりよく考えることなく大人になっ…

  • 《日本の文学》第1巻『坪内逍遥・二葉亭四迷・幸田露伴』(その1)

    以前予告していたように、中央公論社が昭和39年から45年にかけて刊行した日本文学全集《日本の文学》を読み始めた。 paperwalker.hatenablog.com 第1巻(第71回配本、昭和45年)には、坪内逍遥、二葉亭四迷、幸田露伴の3人の作品が収録されている。(ちなみに「解説」は伊藤整) 最初の坪内逍遥は『一読三嘆 当世書生気質』(1885-6・明治18-9年)が収録されている。 さっそく読み始めた……のは、実は5月の初め頃。読み終わるのに2ヶ月近くもかかってしまった。 『書生気質(かたぎ)』は二段組で170頁ほど、岩波文庫版なら(注釈や解説を含めて)320頁ほどの小説で、それほど長い…

  • セルフ・レジ

    とあるスーパーでレジに並んだところ、そこのレジがセミ・セルフ式(商品をレジに通すのは店員で、支払は客が機械で行うタイプ)に変わっているのに気づいた。 そのスーパーは毎日行くところではなく、10日か2週間に一度ぐらいの頻度で行っているのだが、前回来たときにはまだ普通のレジだったので、「ああ、ここもついに……」と思った。 私の前に並んでいたお婆さんはレジが変わったことに気づいていなくて、店員が「2番(の機械)でお会計をお願いします」と言ったのに、いままでと同じようにレジのトレイにお金を載せたので、説明係として近くに控えていた別の店員がやってきて使い方を説明していた。 お婆さんはおどおどしたような、…

  • 捕まりそうになったり、捕まったり

    こんな夢を見た。 どこかの大きなお屋敷の一室に、お馴染みの「ルパン三世」一味が集まっている。どうやらこの屋敷にある「お宝」を狙っているようだ。 しかし私は彼らの仲間ではない。 私は、彼らと同じ「お宝」を狙う別の怪盗の仲間である。 白髪をきっちり撫でつけ、執事の服を着ている70歳ぐらいのロマンス・グレー(死語?)、それが私だ。 漫画やアニメでよくある、若き主人を補佐する「お目付役の爺や」的存在である。その若き主人が怪盗で、私は表の生活でも、裏の仕事でも彼をサポートしている。 今日、彼は客としてこの屋敷のパーティーに来ており、隙を見てどこかに隠されている「お宝」を盗むつもりなのだ。私もお供の執事と…

  • 「いざ」というとき

    昨年の春頃、ひょんなことから3万円分の「Amazonギフト券」というのをもらった。 まったくの「棚からぼた餅」で、降って湧いた「あぶく銭」というやつだ。 せっかくなので、普段はしないような使い方をして景気良くパーっと散財しようと思ったのだが、悲しいかな、根っからの貧乏性なのでできなかった……という記事を書いた。 paperwalker.hatenablog.com で、その3万円分のギフト券なのだが、実は1年以上経ったいまでも「手付かず」の状態で残っている。 欲しいもの(私の場合はたいてい本だが)がないわけではない。というか、山ほどある。 何度も使おうと思ったのだが、そのたびに「いや、いまここ…

  • コショなひと

    先日、購読している「日本の古本屋」のメールマガジン(無料)が配信されてきたので読んでいたら、こんな文章が目に入った。 「コショなひと」始めました なんだか冷やし中華みたいだが、それはともかく、「コショなひと」って何? 実は「コショなひと」というのは、古本屋の店主のことらしい。 東京古書組合の広報部がいろいろな古本屋の店主を取材して動画を作り、それをYouTubeにあげているというのだ。 古書はもちろん面白いものがいっぱいですが、それを探し出して売っている古書店主の面々も面白い!こんなご時世だからお店で直接話が出来ない。だから動画で古書店主たちの声を届けられればとの思いで始めました。 (「日本の…

  • 姫女苑(ひめじょおん)

    季節を代表する花というものがある。春なら桜、夏なら向日葵(ひまわり)みたいな。 いまの時期なら、多くの人が思いうかべるのは紫陽花(あじさい)だろうか。 私の場合、この時期の花といえば、なんといっても姫女苑(ひめじょおん)である……といっても、たいていの人はピンとこないかもしれない。 こういう花だ。 なんだ、その辺に生えてる雑草じゃないか、と思うかもしれない。 その通り。この時期よく見かける代表的な「雑草」だ。うちの荒れ放題の庭にもたくさん咲いている。しかも去年に比べて今年はまた一段と多い。 この白い小さな花が咲きはじめると、今年も夏が来るなあという気がするのだ。 このどこにでもある花の名前を知…

  • 親になる人、ならぬ人

    前回、雨隠ギド『甘々と稲妻』という漫画の話をした。 料理を通して父と娘の成長を描いた漫画で、あたたかい気持ちになれるいい漫画だと思う。 しかし、読んでいて少しだけ気持ちがざわざわした。 たとえばこんな場面。 「父親にしてくれてありがとう」 こういう言葉に気持ちが少しざわつく。 それは私が親になったことがないからだ。 「人間は、自分が親になって、子どもを育てて一人前」みたいなことを言う人がいる。私も昔、親戚に言われたことがある。 当たり前のことだが、一口に「親になっていない」といっても事情は人さまざまだ。 選択的に親にならなかった人もいれば、いろいろな理由で親になるのが難しい状況の人もいる。それ…

  • おいしい顔のためならば

    アニメきっかけで読んだ漫画に雨隠ギド『甘々と稲妻』(講談社、全12巻、2013-19)という作品がある。 この前の休日に読み返したのだが、やっぱりいい漫画だった。 高校で数学を教えている犬塚公平は半年前に妻を亡くし、いまは5歳になる娘のつむぎと二人で暮らしている。 ある日二人は、公園で泣きながらお弁当を食べていた飯田小鳥という女子高生に出会い、彼女の母親がやっている料理屋の名刺をもらう。 それからしばらくして、娘に雑な食事をさせていることに気づいた犬塚は、つむぎにおいしいものを食べさせようと先の名刺を頼りに料理屋に行くが、あいにく小鳥の母は不在だった。小鳥は引き返そうとする犬塚をとどめ、自分が…

  • ときには迷子のように

    梅雨の中休みのような天気のいい休日、いつものようにブックオフに行った。 今回行った店舗は家から(バイクで)1時間半ぐらいのところなのだが、この日はちょっと都合があって、家を朝の7時に出なければならず、普通に行っても開店の10時よりぜんぜん早い時間に着いてしまう。なので、途中で適当に時間を潰さなければならない。 しかしこんな時刻に時間を潰せる場所はコンビニぐらいしかなく、無駄に2、3軒立ち寄ってコーヒーを飲んだり立ち読みしたりしたのだが、それでも9時ごろには目的のブックオフの近くまで来てしまった。 さて困った。あと1時間潰さなければならない。もういいかげんコンビニにも飽きたし。 そこでふと、ブッ…

  • 絵葉書を読む(その7) 関東大水害

    『絵葉書を読む』第7回。今回の絵葉書はこちら。 『(明治四十三年八月東京大出水之実況)本所割下水附近』 明治43年8月中旬。 梅雨前線と2つの台風の影響により、関東地方は集中豪雨にみまわれた。 この豪雨によって、関東地方全体で死者769人、行方不明者78人、家屋の全壊または流出は5000戸以上という甚大な被害が出た。東京府だけでも約150万人が被災したという。(Wikipedia参照) 上の絵葉書は、豪雨後の東京府本所の様子を伝えている。 「割下水(わりげすい)」というのは道路の中央に造られた掘割のことで、江戸時代の初期に造られた。下水といっても生活排水を流すためのものではなく、雨水を効率よく…

  • 本と善意

    ヘレーン・ハンフ編著『チャリング・クロス街84番地 増補版』(江藤淳訳、中公文庫、2021)が出たので読んだ。 たしか四半世紀ぐらい前に旧版を読んでいるはずだが、細かいところは忘れていたので、新鮮な気持ちで読むことができた。 著者のヘレーン・ハンフはニューヨーク在住の作家。といっても当時はまだ有名な作家ではなく、テレビのシナリオや子ども向けの本を書いて糊口をしのいでいた。 そんな彼女の楽しみは読書なのだが、いつも読むのは英文学やギリシア・ローマの「古典」で、それも小説や物語よりもエッセイや日記を好む。古書が好きで、新刊本には見向きもしない。 しかし彼女の趣味を満たしてくれるような古書店が近くに…

  • 一人称

    ブログを始めた時からずっと「私」という一人称を使っている。 とくに理由があったわけではなく、自然とそうなったのだが、ほかの人の文章を読んでいると、別の一人称の方がよかったのかなと思うことがある。 たとえば男性なら「僕」や「俺」というのがある。 「僕」は「私」に比べるとソフトな印象がある。なんとなく丁寧で人当たりがいいというか。しかしちょっと幼い感じがしなくもない。 それに対して「俺」はハードな感じだ。ブログで使っている人は少ないかもしれない。ちょっと乱暴な感じもするが、よそよそしくない、ざっくばらんな感じで語りたい時には合っているような気がする。 また〈ぼく〉にしても、漢字で「僕」と書くのと、…

  • 退屈な「便利」、楽しい「不便」

    以前から気になっていた稲垣えみ子『寂しい生活』(東洋経済新報社、2017)という本を読んだ。 タイトルからしてなにか他人事ではないような気がしていたのだが、しかし、予想していた内容とはだいぶ違っていた。 この本は、現代人にとって「豊かさ」とは何かという考察なのである。 著者の稲垣さんは、福島の原発事故をきっかけに積極的に節電に取り組むようになる。 家電のコンセントをこまめに抜くところから始まり、やがて掃除機を捨て、電子レンジを使わなくなり、順調に電力消費を減らしてきた。 ところが、東京に転勤になった時、うっかり「オール電化」のマンションに引っ越してしまう。(うっかりしすぎだろう) 「オール電化…

  • タケノコホリデー

    家の敷地の中に小さな竹藪があって、春になるとタケノコが出てくる。 なので先月(4月)の中旬にタケノコ掘りをした。 こう書くとなんだか田舎暮らしを楽しんでいるように見えるかもしれないが、そうではない。これは人間と竹の生存領域を賭けた戦いなのであるーーと、これは2年前にも書いていた。 paperwalker.hatenablog.com とにかく放っておくとどんどん竹になってしまうので、できるだけ間引いておかなければならないのだ。 しかしこの時はまだ少し時期が早かったのか、掘れそうなものは3、4本しかなかった。よく見ると、地面にちょっとだけ頭を出したぐらいのがいくつかあったが、あんまり小さいとかえ…

  • 私に気づいて(草の名前・その5)

    毎年書いているような気もするが、庭の雑草がえらいことになっている。 そろそろなんとかしなければならないのだが、これっぽっちもやる気が出ない。 それにしてもまあ、毎年毎年よく生えてくるものだ。こうして好き放題に伸びる雑草を見ると、地球上で一番強い生物は結局植物なんじゃないかと思えてくる。 そんな一面の緑の中に、少しだけ赤っぽい色を見つける。 近くで見ると、葉っぱの一部が「紅葉」している雑草がある。 ネットで調べてみると、この植物はアメリカフウロというらしい。 名前の通り北アメリカが原産地で、日本に入ってきて定着した「帰化植物」である。雑草にはよくあるパターンだ。 アメリカ産でフウロソウ科フウロソ…

  • 君はどこにでも行ける

    いま、毎週楽しみにしているアニメがある。 『スーパーカブ』 この春に始まった作品なのだが、このアニメ、はっきり言ってとても地味なのだ。 物語の舞台は山梨県北杜市。父親はすでに亡く、母親に失踪された小熊(こぐま)は、アパートで一人暮らしをしながら奨学金で高校に通っている。 両親はいない、お金もない、友だちもいない、趣味もないーーそんな何もない日常を淡々と生きていた。 ある時、小熊は一台の中古のスーパーカブを格安で買う。ただ通学を楽にしたいという理由だけで買ったのだが、そのカブが彼女の日常を少しずつ変えていく。 一人の女の子の変わっていく日常を、広がっていく世界を、丁寧に描いたアニメだ。 そういう…

  • 門前の小僧

    「門前の小僧習わぬ経を読む」という言葉がある。 お寺の近くに住んでいる子どもは、(いつもお経が聞こえてくるので)習ってもいないのにお経を暗誦できるようになるということから、環境が人に与える影響の大きさを語った言葉だ。 別に悪い意味で使われる言葉ではない。 しかし、ふと思ったのだが、その小僧が口にしたお経は、本当に「お経」と言えるのだろうか? 小僧が口にしたものは、耳から入ってきた〈音〉をそのままトレースしただけのもので、当然その意味内容を知っているわけではないだろう。 そうであれば、それは本物の「お経」とは言えず、「お経のようなもの」としか言えないのではないか? なぜ唐突にこんなことを言うかと…

  • 路地裏の古本屋のように、それから

    「はてなブログ」の管理画面に「こよみモード」というのがあって、その月のカレンダーに投稿した日が表示されるのだが、そのカレンダーの下(もしくは右側)に「✖️月のあゆみ」と題して、過去のその月に投稿した記事の冒頭部分が表示されるようになっている。 私はいま3年目に入ったところなので、今年の4月のカレンダーの下に、去年と一昨年の4月に投稿した記事が一つずつ表示されるわけだ。 その一つを読み返してみた。 paperwalker.hatenablog.com 一昨年の4月16日、ブログを始めてほぼ1ヶ月後、ちょうど10件目の記事だ。 記事の最初の方では、いわゆる「運営報告」のマネゴトのようなことをしてい…

  • 立って半畳寝て一畳

    学生の頃は6畳+4畳半(台所)のアパートに暮らしていた。 しかし整理整頓能力が皆無の私はその二間をきっちり管理できず、6畳の方は布団を敷くスペースを除いては本と物で溢れ(その布団も最終的には「万年床」になったのだが)、4畳半の台所は不要になったゴミ置き場と化していた。 そんなアパートに、学校を卒業してからも20年近く住んでいた。 その後いろいろあって田舎の実家(一戸建)に戻り、さらになんやかんやあって今ではそこで独りで暮らしている。 実家には大小合わせて8部屋ぐらいある。私が子どもの頃には、ここで最大7人が生活していた。それがいまや私1人だ。当然その広さを持て余すことになる。 主に生活に使って…

  • 積んで花実が咲くものか

    少し前にこんなことを書いた。 paperwalker.hatenablog.com これはどういうことかというと、 まず昭和に刊行された「日本文学全集」を一組買って、第1巻から順に読んでいき全巻読破しようという壮大な計画である。 しかしその前提である中古の「日本文学全集」を買うところで長年つまずいている。 種類にもよるが、この手の文学全集は少ないもので40巻ぐらい、多いものになると100巻を超えるものもある。 そんな大量の本を一気に買うのは、いかに古本好きでもちょっとなあ……ということを書いている。 そもそも私は優柔不断かつ臆病な性格で、石橋を渡る前に叩きに叩き、充分に強度を確かめたうえで、で…

  • 文章の墓場

    「はてな」の今週のお題が「下書き供養」というもので、これはつまり、いままで「下書き」として放置していた文章を公開してみようという企画だ。 そこで私も、どのくらい下書きの文章が溜まっているのかと管理画面で調べたところ、20個ぐらいの記事が書きかけのまま放置されていた。 書き始めたもののうまく話が進まなかったり、途中で別のアイデアが浮かんだり、飽きてしまったりと、記事を途中で止める理由はいろいろあるけれど、かといって捨ててしまうのはもったいないような気がして、また今度続きを書こうとそのまま放置してしまう。 しかしその記事が後日完成されることはまずない。 なるほど、確かに記事になり損なった文章の墓場…

  • 少し活動的な休日の短歌

    最近、少し活動的になっている、ような気がする。 単純に暖かくなってきたからというのもあるが、ひょっとしたら薬で血圧が下がってきている(それでも基準よりは高い)ことと関係があるのかもしれない。 もっとも、活動的になったといっても、遠くの本屋に行くぐらいのことだけど。 というわけで、最近移転リニューアルしたブックオフに行ってきた。 ここは年に数回ぐらい行くところなのだが、3月に行った時には移転を知らず、空っぽになった旧店舗の前で愕然としたのだった。バイクで片道1時間15分ほどかけて行ったのに。 スマホを持っていればその場で移転先を調べられたのだが、あいにくガラケーユーザーなので肩を落として家に帰り…

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