雪混じりの雨の夜、突然目の前に三日月が落ちてきた。

■ 独占

「社長･･･」 「ん？」 「スーツ･･･似合いすぎです。 隣に並びたくないです」 ちょっぴり悔しくてそう言うと、ははは、と軽く笑い飛ばされてしまった。 こうして似たような格好をすると、同じ男とは思えないほどの視覚的差が生じてしまう。 「じゃ、さっそくカメラワークの確認と簡単なリハーサルだけしてしまおう」 そこからニ十分ほど本当に簡単なリハーサルとカメラの位置を確…

2020/06/27 00:00

■ 今、必死に書いてる！w

顔を上げると、玲良と似たような背格好の男と、もう一人、かなり長身の男が立っていた。 どちらも、作り物かと思うほどの整った綺麗な顔立ちをしている。 そして、長身の男のほうはおそらく、人ではない。 なぜならその切れ長の瞳の色が、青や青紫に微妙に変化しているからだ。 「･･･どちらさまですか」 抑揚のない口調で玲良が問うと、黒い髪をした人間の男が一瞬むっとした顔をした…

2020/06/25 00:00

■ 次作取り掛かりました

「この香りは？」 シャツのカフスを留めながら、瑞貴は近すぎる背後から聞こえた声に少し振り返った。 情事の翌日はその余韻を微塵も残さない。 これはアバンチュールを楽しむ大人の基本であり、鉄則だ。 「･･･��甘い三日月�＝B フレグランスは大人の男の身だしなみだよ。 ていうか、なんでまた僕の腰に手まわしてんの･･･」 「おまえの抱き心地が気に入った。 悪い香りではな…

2020/06/15 00:00

■ 隠し事はいけません

トン、と男の目の前にコーヒーを出すと、男の視線が手元のカップのほうに落ちる。 何でもいいから早くそれを飲んでとっとと帰って欲しい。 昔からこの男が来ると、とにかく疲れるのだ。 「テストカラーのブルールスカか」 「･･･」 「ふふ、こういうところが巽とは決定的に違う。 ちなみになぜ今日は私に こちらのカラーをチョイスした？ 通常カラーも揃えているだろう？」 「そ…

2020/06/13 00:00

■ ライチプレイならぬ･･･

御影はわざと能面を作って近衛に向き直る。 「当時から三回以上変わってます。 ついでに二回エラーになると通報されます」 この男がなんでも器用にこなすことは知っているが、さすがに不思議だった。 最新のコードは一史にしか教えていないはずだ。 スーパーコンピュータ並みの頭脳にさらにエスパー機能まで追加搭載されたというのか。 「きみとの付き合いは短くない。 人間は大抵の…

2020/06/07 00:00